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大切なもの2

「サラ、俺の名前は知っていますか?」


 小さな声で返される。

 それが肩肘ばっていない言葉なのがなぜかうれしい。


「マクスウェル」


 静かに名前を返すと、大人になったばかりの竜は嬉しそうに笑った。


「さて、恭順の意を示す気になったか?」


 私たちを現実に引き戻す様に国主が言う。


 マクスウェルは剣を再びとる。


「乙女。あなただけでもお逃げください!!」


 マクスウェルがそう言う。

 ああ、やっぱりこの人はそういう人なのだと思う。

 自分の命よりも他のものを優先してしまう人なのだと。


「逃がして、他の王を選ばせるわけがないだろう!!」


 国主が怒鳴った。

 その瞬間取り巻き達が散らばって私を捕まえようとしている。


「王は、もう選びました」


 私は震える声で言った。

 何か儀式があったのかもしれない。格式があったのかもしれない。


 国民の悲願だと言っていた。


 こんな形で誰かを選ぶべきでは無かったのかもしれない。


「王は、選ばれて今まさに剣を握られております」


 剣に魔法はきちんと与えられた。

 それが最初から私の体の一部だったみたいに魔法は上手く出来上がったと思う。


 彼を王様にしてください。彼をお守りください。彼が王として幸せに生きられるように。



 私の魔法は最初からこの瞬間のためにあった気がした。

 震える手で彼の腰に手をまわして剣に触れて魔法を紡いだ瞬間にそう思った。


 ここに剣があってよかった。


「王が反逆者を処罰するのは当たり前のことでしょう」


 それに、私がもし死ぬことがあってもマクスェルに私を殺す理由がなくなる。

 それこそ絶対に王になりたくないというのでも無ければ自分を王にした人間を殺したいなんて世迷言誰も信じない。


 ボロボロの髪の聖女に任された王様なんて笑っちゃうけれど、今の私が彼にできる事はこれ位しかない。

 命を私に預けてくれた彼よりも渡せるものがあまりにも軽い気さえしてしまう。


 その上王になるという重圧から一生逃げられない。


「ごめんなさい。でも私は貴方がいいと思ったの」


 驚愕に目を見開くマクスェルに言う。


「あなたも一生、聖女であるという重圧からは逃れられないのですから、それはおなじでしょう」


 何故謝るのですか。とマクスウェルに逆に聞かれてしまう。

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