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不穏2

 私を縛る縄は私の魔法で容易にほどけた。

 私を守ったり、私を強くすることはできないけれど、対象物さえあれば魔法はかけられる。


 このまま私が押し込められた箱も魔法で壊してしまおうと思ったけれど、外の状況が分からない。

 誰かと戦うための訓練は受けたことが無い。


 護身術も知らない。

 こんなことになるならメアリに教わっておけばよかった。


 そんな風に思っていると箱の蓋が空いて、乱暴に外に出る様に促される。


 目の前にいたのは知っている人で、驚いてしまった。


 目の前にいた男、国主様は引きずり出された私をまるで物を見る様に冷たい目で見降ろしている。


 この目は知っている。とてもよく知っている。


 私が魔法を使えない人間だと知った時に向けられた蔑んだ目と一緒だ。

 私を見下して馬鹿にしている目。

 何も言われなくても分かる。


 この人は私をものすごく嫌悪しているのだ。


「信託は余を王にすると言っていたか?」


 事情の説明も何も無く、まず聞かれたのはそれだった。


 この人は自分が王になると疑っていない。それ以外の選択肢は許されないと思っている。

 神託のようなものはあった。けれど王が誰かは神様は決めていない。


 別にこの人が王だと言っても問題は無いのだ。

 けれど背中にジワリと広がる嫌悪感がそう口にするのを許してはくれない。


「違う。と言いましたら?」


 私に神の加護は無い。

 何度も練習している魔法は万能ではないから何度も試さねばならない。


 だから無力な人間なのはこの国に来る前と何も変わってはいないけれどそれでも分かる。

 この人を王様にしてしまうのはあまり良くない事なのではないかと。


「それであれば、あなたには死んでもらうしかない」


 きっぱりと言った。


「約束の乙女が死んだら、この国は大騒ぎでしょうね。

躍起になって犯人を捜すのではないですか?」


 伝承にもなっている約束の乙女は一種の宗教の様になっている。

 メアリに教わったこの国の風土でも何度も出てきた約束の乙女のモチーフ。


 本当に私が王を選べるのかは分からないけれど、もし死ねば黙っていない国民もいるだろう。


「大切なものがいつまで経っても作れない馬鹿な竜の子が乙女を殺した。

愚かなマクスウェルはそれを悔いて自害する」


 もう、あれは呼んでいる。

 じきにこの場所に来るだろう。


 そう言いながら国主はニヤリと下卑た笑みを浮かべた。

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