表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/55

郷里4

 それなのにリゼッタはまるで私がその事実を知っているかのよう言う。

 彼女自身が聖女ではないと知っていて王宮にいたと言わんばかりの言い方が気になる。

「では、預言は」


 リゼッタの隣にいた神官が「預言はありました。聖女となるべき少女が生まれた事。その少女が地の国に赴く事」と淡々と言う。

 私は息を飲んだ。


 それはまるで私の事を言っている様ではないか。


「聖女の条件は『精霊と契約を結べない事』でした」

「な、なぜ、今まで教えてくれなかったのですか!?」


 私は思わず悲鳴を上げる様に言ってしまう。


「そうすると、未来が変わってしまいますから」


 神官は穏やかに言った。


「それって、自分たちの幸福のために彼女を振り回していることになりませんか?」


 私の代わりに言い返してくれたのはマクスウェルだった。

 私の国では預言に従うのは当たり前で、それによって不利益が出ることは仕方がないことだった。


 だって、預言を守っていれば国としては確実に豊かで安定するようになる筈だから。

 だから、それは当たり前だった。


 けれど、一言彼が言い返してくれたおかげで救われた気がした。

 私はこの人に二度救われたのだ。


「それは貴国とて同じでしょう」


 神官は動じた様子もなくマクスウェルに言う。


「そちらの国は王を立てなければ他の国と碌に国交も結べない。

そういう因果を受けている。

彼女が王を選べなければ困るのは貴国であろう」


 彼女を実際に振り回さねばならぬのは竜の国だ。そうはっきりと神官は言った。


「預言では私が王を選ぶと、そう伝えられているのですね」


 私は神官に訊ねた。

 神官は黙ってしまう。


「第一王子からのご伝言です。あなたがあなたの目で、エムリスの良き友となる王をお選びください」


 リゼッタがよく通る声でそう言った。


「貴様!!」


 神官がリゼッタを怒鳴る。

 そしてリゼッタにつかみかかろうとしている。

 それを私の父が止めようとしているのが目に写る。


 そうだ。私の父は正義感が強い。

 私と同い年の令嬢につかみかかろうとしているのだ。止めて当然だ。


 映し出されていたものが、揺らぐ。

 王の条件を聞けてはいない。


 預言に何かあったのかもしれないけれどこの魔法は恐らく時間切れなのだろう。


 それに神託。神様からのメッセージがあった様には思えない。


 何も映らなくなって、静まり返っている部屋で私はマクスウェルに聞いた。


「儀式を私は失敗させてしまったということでしょうか」


 神様は現れなかった。

 私に何の神託も無かったのだ。


 魔法を失敗してしまった所為か両親の顔を一目見ることはできたけれど、それ以外の収穫は何も無かったように思える。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ