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竜の国の悲願2

「「あなたが“約束の乙女”だからですわ」」


 二人の声がそろう。

 約束の乙女は今日何度も聞いた言葉だった。


「約束の乙女というのは何ですか?」


 私が聞くとメアリが答えてくれた。


「王を選ぶために神より遣わされた使者と言われております」


 私の国の預言を伝える神官の様な者なのだろうか。


「それは神殿の神官の仕事なのでは?」


 私がそう言うとメアリとシェアリは曖昧な笑みを浮かべた後「この国に神殿はありません」と答えた。

 

「だから約束の乙女が必要だったのです」


 今日この国の長年の悲願がかないました。

 本当にうれしそうに言われて困ってしまう。


「でも、私そんな特別な力はないわ」


 そう言うと、メアリは首を左右に振った。


「稀有なる魔法を使ったとお聞きしております。

それこそが約束の乙女である証」


 国と言っておりますが、王のいない国は本当の国にはなりません。

 そう言った後強い視線でこちらを見られる


「乙女がこの国を訪れる事はこの国の悲願でした」


 ですからあなたに命を預けられるのです。


 そう言われて自分を顧みる。


「私はただ預言で『地の国に向かう』ことを定められただけの人間です」

「預言というのは神の啓示。まさにこの異界に神が遣わした乙女という事ですわ!」


 感激した様子でシェアリが言った。

 そんなのはまるで聖女様ではないか。


 そこで違和感があることに気が付く。

 けれど、それは上手く言葉にできない。


 そもそも私は本当に願っただけで魔法が使えるのだろうか。


 私は目の前のテーブルに残っていたエッグスタンドの上の手つかずの卵を見る。

 中身は多分半熟のゆで卵だ。


 申し訳ないと思いつつもそれを手に取ると、心でこの卵が壊れませんようにと祈る。

 祈りというものはこんなものでいいのだろうか。


 それすらわからない。

 くらりとした眩暈が一瞬した気がした。


 そのまま手を放して床に卵を落とす。

 殻のついたままの卵はぐしゃりと音を立てて割れるはずが床についた瞬間ぽんと跳ねる。


 卵は床に落としても跳ねない。

 それは貴族の令嬢である私にもわかる道理だ。


 私にも魔法が使える。

 私がハズレの令嬢だったからこの国に来た訳じゃないかもしれない。

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