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ハズレ少女と竜の国  作者: 渡辺 佐倉


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竜の国1

 連れられていった場所は城のほぼ中心の場所だった。

 そこには陛下もいた。


 もう一度丁寧にあいさつをする。

 陛下は何も答えなかった。


 父が私の横に来る。


「地の国は城の地下にある」


 これから皆そこに向かう。

 そう父は言った。


「お城の地下にそんなものがあったなんて知りませんでした。」


 連れていかれたのは古い部屋だった。

 何にも使われていない、何も置いてない部屋の奥には、古い扉が一枚。


 開けられたそこには地下へと続く階段があった。


 それは恐らくらせん状に下へ下へと伸びている様だった。

 その、石造りの階段を縦に並んで降りていく。


 その先は空洞の様に広くなっていてただ、ひたすら階段が地下に向かって伸びている。 しばらく下ったところで「これが国境の門だ」という声が聞こえた。


 これは門というより蓋だ。


 王宮の地下にこんな場所があったなんて知らなかった。


「元々地の国への入口がここにあって、その上に城を建てたんだよ」


 父が教えてくれる。

 父は出入口とは言わなかった。これは帰って来れる道行きなんだろうか。この先に本当に地の国はあるのだろうか。


 陛下が割符のようなものを門にかざす。

 淡い光を放って門は消えた。

 その下も延々と階段が続いているようだ。


「ここを下ればそこは地の国だ」


 使命を全うするよう言われたが、使命とは何か。


「私が地の国にたどり着く以外、なにか必要なことは?」

「行けばわかるとされている」


 なにか指定はないらしい。

 生きてその国に辿りつけるのか。辿り着いたとしてどう暮らして行けるのか。何もわからない。


 けれど私は一歩足を踏み出して長く長く続いている階段を降り始めた。


 最後に父に手を握りしめてもらえた。それでもう充分な気がした。

 きちんとした家族との別れはできなかったけれど、父がぎゅっと握りしめてくれたてのぬくもりで充分だった。



 まるで奈落の底に向かう様な階段を一人で一歩一歩進んでいく。

 このまま果てなんて無いのではないか。あったとしてもそこには何も無いのではないかとさえ思う。そんな薄暗い階段を下っていく。


 上を見上げるといつの間にか扉が閉まっている。


 もう戻ることもできないのかと気が付く。

 ここが薄暗いことの理由もよく分からない。


 私は何かを光らせる様な魔法も使えなければ、そんな道具ももっていない。

 けれど、蓋というべき扉が閉まってしまったのに、階段はまだ見えている。


 ここ自体がなにか大きな魔法で出来ている場所なのかもしれない。

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