第096話 重力?魔法を開発してしまった
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勤務中、時間が空いて、何の気なしに精霊を見ていると、通常通り浮いていた。しかし、その日は「何故精霊は浮いているのか?」という疑問が湧いたので、とりあえず各精霊に聞いてみた所、火、風、水精霊は『知らない』と答えたが、地精霊はこう答えた。
『物が落ちるのは、地に属する力で下に引っ張られているからなんだよ。で、精霊はその影響を受けないから、何となく浮いたりできるんだ』
何と、万有引力は地属性系の力だったのか。で、エネルギー体?の精霊は無重力状態のようなもの、ということか?それとも、地属性の力だから精霊には影響を及ぼさず、無重力状態になるのかな。和合状態の時には何となく浮けるから、精霊には影響を及ぼさない可能性の方が高いかな……。それはそうと、重力が地属性だというなら、重力制御の魔法もやろうと思えばできるな。
「地属性のものをそのまま動かすのではなく、地に属する力で近づけたり離したりする魔法ってありますの?」
『ん?そうだね……土を石にしたり、石を砂にする場合は、一部が使われてるかな』
「ああ、あれのことですわね!有難うございます、参考になりましたわ」
石化や砂化は、基本的に2段階の魔法だ。土や砂を集めて組み合わせれば石化、石や岩をバラバラにして離せば砂化だ、土同士を引きつけ合うように、フィアースと自分を近づければ重力が増加、組成を崩した石を分かれさせるように、フィアースと自分を離せば軽減又は反重力、ということかな。試してみよう。
部屋でやるのも怖いので、屋上に来てみたが誰もいない。重力増加を試そうと、布を敷いて仰向けに寝ころんでみる。
この魔法は、自分とフィアースを感じて……この2つが引き合うことをイメージして、えいっ。
瞬間、何か重たいものに乗られたような息苦しさを感じた。こ、これはきつい……やめ。魔法としては成功だけど、自分以外のもので試すことにしよう。次はとりあえず重力軽減、又は反重力かな。おっ、あそこに石ころがある。あれで試してみよう。
まずは重力軽減から。石ころはフィアースにひもで引かれている……このひもを切るイメージで……えいっ。持ってみると、確かに軽くなった感じだ。
次は、石ころとフィアースの距離を離すイメージで……えいっ。……あっ、浮いた。更に……えいっ。更に上に上がった。何か、浮遊するような感じだな。座標を定義するような感じにも思えるな。
ここで、慣性を切ることが出来れば、ものすごいスピードで西に飛んで行くんだろうけど……慣性を突然消すというのは、イメージしても反応しないし、魔法の原理からは外れるのだろう。どの精霊も慣性は管轄していないだろうから。
空中を移動する場合、今の要領からすると、座標を移動するようにすればいいんだろうけど、自由自在に飛ぶというより、定点を移動する感じで直線的だ。精霊が飛ぶ時は、何か空気中を泳ぐような感じだったしな……。
魔力を噴射すると、いくら私でもすぐに尽きそうな感じだ。いっそ魔素が利用できればいいのだろうけどね。……そういえば魔素は、どの精霊も管轄してないな。その辺りが解決すれば、自在に空を飛ぶと言えるかもしれない。とりあえずこんな所か。
重力?魔法は、よく行われている地属性の物体を移動させる魔法とは、確かに違いはあったのだが、明確に使用を分ける程の差があるか判らないな。この辺りは、誰かに研究を任せた方が、いいのかもしれない。今度魔法研究所の地属性研究室に行って、話してみようかな。
ニストラム秘書官に話すと、明後日の午後なら対応可能ということで、調整がついた。
2日後、午後に魔法研究所に行くと、アネグザミア所長と、もう一人初めて会う人がいた。
「所長、本日もお忙しい中、対応感謝致しますわ。そちらの方は?」
「導師様、こちらは地属性研究室長です」
「導師様、お初にお目にかかります。私は地属性研究室長のロイスホルト・ビルゲルードと申します」
そのまま地属性研究室の方に向かった。他の方は私にびっくりしていたようだったが、特に気にせず案内を受け、研究室長室に入った。
「導師様、今回は新しい地属性の魔法についての話でしたな」
「ええ、切っ掛けは、精霊が浮いていることを疑問に感じて、それを精霊に尋ねたことなのですが」
それから、重力?魔法について、概念と要領などについて話した。ついでに、この場でも簡単な重力?魔法を展示してみたところ、興味深そうな目で所長と室長は見ていた。
「従来からの、地に属する物体を動かす地魔法とは、概念が異なるのですが、利用方法については色々検証してみないと判りませんの。それで、こちらの魔法を、研究して頂けないかと思いまして」
「なるほど……地魔法は現在、発展性があまり見えていない。先日、アルカドール領で新たな地魔法の利用方法が発見されましたが……こちらも研究の対象になりそうですな」
ビルゲルード室長が言った。ちなみに、アルカドール領での発見とは、水晶を成形する奴だろう。
「今の所、限定的な飛行、重量物の運搬や投擲、障害物の回避や人体の拘束などに使用できそうだとは思うのですが、門外漢の私より、専門家に研究して頂いた方が宜しいと思いますの」
「確かにその通りです。私自身が習得出来れば、研究が可能だと考えます。所長、如何でしょうか」
「……恐らくこれは、社会の常識を覆す魔法となるでしょう。生活の様々な場面で使用できることもさることながら、戦場で使われた場合、城や砦、地形障害などが意味を成さなくなる可能性があります」
……あ、そこまで考えてなかった。
「それだけに、研究は慎重に行うべきでしょうな。勿論、地属性の最重要研究課題にさせて頂きます」
「所長、一度私もこの魔法を試してみたいのですが……」
「そうだな。導師様、一度屋外実験場で、この魔法を試してみたいのですが」
「宜しいですわよ。では移動致しましょう」
屋外実験場に着き、私は重量物を浮かせたり、自分が宙を舞ったりしてみた。
「このような感じですが……」
「ここにビルゲルード教官がいると聞いて来たのだが……フィリストリア嬢ではないか」
何故かオスクダリウス殿下が実験場にやって来た。
「殿下、ご機嫌麗しゅう。ところで、どうしてこちらにおいでになられたのでしょうか?」
「ビルゲルード男爵が、俺の指導教官なのでな。課外でもたまに指導を受けに来ているのだ」
そういえば、殿下は今年から魔法学校に入学しているから、そのつながりと言うわけか。
「これは殿下、今日も魔法に関する質問でしょうか」
「ああ、そのつもりで来たのだが……それより、今フィリストリア嬢が使っていた魔法は何だ?」
「これは……今度研究しようと考えている、新種の地魔法でございます」
そう言って、ビルゲルード室長は、重力?魔法の概要を殿下に説明した。
「なるほど……それは興味深い。俺もその研究に参加させて貰えないだろうか」
「そんな、危険でございます」
「危険と思われるような事はやらないと誓う。俺はこれまで魔法をあまり学んで来なかったが、今学ぶことが出来て、非常に充実している。この研究にも、参加することで、自分が成長できる気がするのだ」
なるほど。殿下も色々考えているんだな。少し後押ししてみよう。
「良いではございませんか。殿下にも協力して頂くことで、この研究がますます重視されますわ。どちらにせよ、陛下までお耳に入れる必要のある研究ですもの。その際に殿下の参加を伺えば宜しいのでは」
「そうですな。陛下への報告の場で許可を頂けるなら、所長として、研究への参加を認めましょう」
その後、室長と殿下に、具体的な魔法の要領を教えた。その日は二人とも出来なかったが、そのうち出来るようになるだろう。殿下は今後の研究への参加の許可を陛下に頂く必要はあるが。
私は魔法省庁舎へ戻り、今日の話を大臣に報告した。大臣は少し困った顔をしながら言った。
「導師殿、魔法の発展に協力して頂けるのは非常に有難いのですが……先日も雷魔法を実用化されましたよね。我々は急激な変化についていけなくなりそうですよ」
雷魔法は、ティーナが使えるようになって、私以外でも使用できると証明されたため、大臣までは報告されたらしい。風属性の魔法課長など、雷魔法を覚えたくて、早速魔法研究所を訪れたそうだ。
「今回の魔法は、社会に変革を起こすかもしれないものだとするならば、研究しないという話はないでしょう。導師殿、貴女も可能な限り、研究を支援して下さい」
「承知致しましたわ」
ということで、重力?魔法の研究が開始された。殿下も、陛下の許可を得られたらしい。良かったね。
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