第095話 工事の件で、会議が開かれた
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大臣に謝罪して、状況を聞くと、今回の件は結構大事になったらしい。
建設省は、私の能力を知らなかったので、工事を終了させてしまうとは全く思っていなかったらしい。また、公共事業の土木工事は土木技術の維持向上をはじめ、現地の業者にお金を落としたり、雇用先を増やす意味もあるので、私の力で工事を行うと、後々宜しくないそうだ。この辺りの今後の話をするので、明日建設省と魔法省、その他宰相補佐官や財務省からも人が来て、会議をするそうだ。
大臣から色々話を聞いた後、執務室に戻って暫くすると、精霊課長が入って来て
「この度は申し訳ありませんでした」
と謝って来た。大臣に報告していなかった話のようだ。
「いえ、あれは私が至らなかったのです。それより、4人は帰って来れそうでしょうか」
「はい、5日後には王都に帰って来るそうです。また、先日の洗礼の際に確認された2名が、昨日精霊課に配置されました」
「それは良かったですわ。では、彼女達も、当初は魔力操作を学んで貰った方が良さそうですね」
「はい、その様に致します。あと、今後の工事現場における精霊術士の活動要領をご相談したいのですが……現地は如何でしたか?」
「現状では、あまり効果的に活動出来ていないように思えましたわ」
「やはりそうですか。実は私に考えがございまして、明日の会議で提案したいと考えております」
「どのような内容でしょうか」
「監視や点検だけでなく、魔法の補助を行うのはどうでしょうか。実は、先日大使様から頂いた本に書いてあったのですが、精霊術士は、精霊に働き掛けて、他者が使用する魔法の効果や効率を上げることが可能らしいのです。今回の件は、その切っ掛けとして利用したいのです」
「あら、それは素晴らしいですわね。土木工事ですと、地魔法や水魔法は頻繁に使用しますものね」
「各種工事現場だけではなく、魔法を使う重要な場面での活躍が期待できるでしょう」
「例えば、戦争などもでしょうか?」
「はい、その通りです」
「……精霊は基本的に争いを好みません。侵略戦争に加担するのは、問題があると思いますわ」
「やはりそうなのですか。その辺りは注意が必要ですね」
そのようなことを精霊課長と話し、明日の会議に備えた。
次の日、宰相府の会議場で、魔法省と建設省、その他関係諸省が集まった会議が開始された。とりあえず現状が報告され、あと1~2年程かかる予定であった工事を、私が完了させてしまったことが話された。
「導師殿、今回は終わった話ですから仕方ありませんが、今後このような事は無い様にお願いします」
「申し訳ございませんでした」
建設大臣からもお小言を言われ、私は謝罪して、基本的には実害も無かったので、一応この件は終了した。
「今後、導師様には緊急時、災害が発生した際などは積極的にお力添えを頂きたい。しかし、平時は民生への影響を踏まえ、政府が実施する公共工事等への支援は、確実に許可を取ってからお願いします」
宰相補佐官からそのように言われた。災害対処は、むしろ私がやった方がいいね、確かに。
「承知致しました。出過ぎた真似をしないよう、気を付けますわ」
「発言の許可を頂きたい」
「精霊課長殿、どうぞ」
「精霊術士の工事現場での業務内容ですが、これまでは監視や点検のみでしたが、今後は魔法の補助を行うという仕事を付加したいのですが、如何でしょうか」
そこで、精霊課長は昨日話した内容と、現在行っている精霊術士の能力向上の施策が成功すれば、今後大いに活躍できることを、皆の前で説明した。
「なるほど。それならば常識の範囲内で、工期の短縮が出来るわけですか」
建設大臣が言った。精霊課長の提案は、今後魔法省と建設省の担当者間で話し合うことになり、この会議は終了した。その場を借りて、魔法省の者だけが残った。先ほどの件だ。
「精霊課長。先ほどの話が本当ならば、魔法課や魔法兵課関連の業務支援も可能なのか」
「大臣、その通りでございます」
「そうであるならば、今後は魔法兵団の訓練に参加して頂くこともあるのでしょうか」
「魔法兵課長殿、むしろその比重がかなり大きくなるのではないでしょうか」
精霊課長は、大臣や他の課長の質問に答えていく。ついでに私も口を出しておこう。
「ただし、戦争に精霊術士を使用する場合、侵略戦争に加担させることのないようにお願いします。精霊は平和を好みますわ。防衛戦争であれば問題ないのですが、侵略戦争に加担すると、精霊に嫌われてしまい、最悪、精霊視が失われる可能性があります。かくいう私も、精霊女王の加護を失う事になるでしょう」
「なるほど、我が国は建国以来、一貫して侵略戦争を否定しておりますし、その心配は基本的にないでしょうが、同盟国の戦争に巻き込まれた場合なども、注意しましょう」
大臣がそのように言って、省内の話し合いは終わった。
ということで、精霊術士の勤務環境を着々と変え、業務支援だけではなく、精霊術の練習を主体にした勤務にシフトできそうな感じだ。その試金石が、今度の合宿になるだろう。
合宿で能力を向上させて、精霊から情報を聞いたりするだけではなく、魔法を支援できるようになれば、より見える活躍ができるわけだし、これまでのように、いれば何とかなるような働き方ではなく、能力を生かせるような仕事内容になるだろう。私も合宿で何か伸ばせるものがないか、考えてみよう。
その後暫くは、通常の勤務が続いた。新規に精霊課に配置された2名や、工事現場から帰った4名にも、魔力操作の講義を行い、練習をさせた。当初から練習をしていた4名のうち、ロナリアとラズリィは、概ねアンダラット法を身に付けることが出来たようだ。しっかり活性化して精霊と話すと、拒否されることは無くなったようだ。コルテアは、まだ習得していないが、以前より拒否される回数は減っていると言っているので、効果は出ているのだろう。それを知った他の者も、魔力操作の練習に積極的になり、良い環境が出来始めているようだ。
そんな中、魔法研究所から来て欲しいと言う話があったので、行ってみた。雷魔法が習得出来たのかな。
馬車を降りると、アネグザミア所長とアンダラット先生が待っていて、屋外実験場に案内された。
屋外実験場には、あの研究員と、ティーナがいた。研究員が雷魔法を使うのかと思って見ていたら、何とティーナが雷魔法を使った。研究員は、それを見て自分も使える様に努力している様だ。ティーナは魔法の才能があると思っていたけれど、これは将来が楽しみだ。
「ティーナ様、素晴らしいわ。もう雷魔法を使えるようになるなんて」
「フィリス様、有難うございます~。これもフィリス様が教えて下さったからですよ」
「では、今後はこういったことも試してみて下さいな」
と言って、軌道を蛇行させたり、複数の的に同時に当てたりなど、展示してみた。
「凄いですわ~。このようなことが出来るなんて。私も色々出来るよう、頑張りますわ」
「あと、雷魔法は、水や金属が多い所などでは、周囲に雷が伝えられてしまうことがあり、危険ですので、使用には十分に気をつけて下さいね」
と、注意をしておいた。
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