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第092話 ロイドステア国 王太子妃 レイナルクリア・カレンステア視点

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

私は数か月前まで、サウスエッド国第2王女として生きていました。物心ついた時には、優しい家族と、何でも世話をしてくれる侍女達に囲まれ、何の不自由もなく暮らしていたのです。家庭教師は厳格でしたが、教養や礼儀作法など、頑張って覚えると、両親が褒めてくれるのがとても嬉しかったのです。


ただ、なかなか外に出して貰えなかったのが不満ではありました。このため、たまに父や母が視察に行く時に連れて行って貰うのが、何よりの楽しみでした。その際、父が一度、王都の外れにある丘に行き、王都を見下ろしながら


「我々はこの国に住む全ての民を守らねばならんのだ」


と言った時には、王族とはこういうものなのだと、初めて理解することができたのを、今でも覚えています。




時が経ち、今では兄は王太子として父の政務を補佐し、姉は国内の有力な貴族に嫁いでいます。私も当然、どこかに嫁ぐと思っていましたが、どうも父が私の嫁ぎ先を決めたくないと言っている間に、私に年齢の近い国内の主要な貴族は皆縁談が決まってしまい、国外の相手になりそうだ、という話です。


多くの方が縁談を持ってくるものの、国外だと会うのもままならないため、父は踏ん切りがつかない様です。母が「あの家に早めに決めておけば良かったのに」と言っていたそうですが、後の祭りです。


そんな中、在ロイドステア国大使から入った報告で、父や兄、宰相達が、緊急会議を行いました。後で聞いた話では、ロイドステアに新たに精霊導師が誕生したため、国としての対応を決めていたそうです。


精霊導師一人の力で、国力が大きく変化するという話で、現にロイドステアに攻め込んだノスフェトゥスが、精霊導師の力で撃退され、敗戦したということですから、我が国がロイドステアと戦争を行うことはない筈ですが、対応を考えざるを得ません。


今後はロイドステアとの関係強化を図るべきだ、という方向で話が進みましたが、そこから、何故か私の婚姻相手が決まってしまいました。どうやらロイドステアが、王太子と私との婚姻を申し出ていて、それを進めるべきだ、との声が上がったようなのです。ここでも父が渋っていましたが、宮廷魔導師長が、いっそ同盟を結んでしまえば、転移門の設置も可能だと話したところ、父も漸く折れたそうです。流石に父の愛が重いのですが……。




他国の王太子ということで、私も不安がないわけではありませんでしたが、王家の一員として、国家の利益のために嫁ぐのですから、問題ある筈がございません。幸か不幸か、幼い頃より年の近い異性は遠ざけられておりましたので、お慕いする方もおりません。


こういうものだと割り切って、ロイドステアの王太子殿下と接することになりましたが、ウィルディナルド様は見目麗しく、また、私への気配りを忘れず接して下さいます。これならお互い尊敬しあえる関係になれると思い、一安心したものです。また、ロイドステア国王陛下や王妃殿下から、娘が欲しかった、と言われて嬉しくなりました。こちらでも上手くやっていけそうな気がしました。




いよいよ婚姻式の日となり、ロイドステア国の大聖堂で婚姻式を行いました。私は泣いてしまいそうになったのですが、先に父が大泣きしていたのを見て、逆に笑ってしまいました。緊張の解けた私は、婚姻式や祝賀御列をこなすことが出来ました。ロイドステアの国民も私を歓迎してくれているようでした。


ただ、祝宴は凄く緊張していました。王女とはいえ、他国の者が、次期王妃となるのですから、少しでも隙を見せたら反発されると言うのは、いくら世間知らずの私でも判ります。婚姻式を終え、夫となったウィルも、私を気遣って緊張をほぐそうとしてくれましたが、やはり緊張で震えます。


無性に心配になって、祝宴会場に集まっている貴族達を一度見てみたくなったので、入場前にこっそり会場を見ていると、一人だけ、この会場に不釣り合いな格好をしている少女がいました。私より少し年下に見えるその少女は、遠目から見ても美しく、私は、あれが精霊導師の少女か、と合点がいきました。


色々と恐ろしい噂は聞きますが、興味深さが先に立ち、会ってみたいと思ってしまいました。気が付くと、緊張は解けており、丁度侍女が呼びに来たので、そのまま入場口へ向かいました。


王家に次ぐ地位の三公達は、やはり一癖も二癖もありそうで、慎重に挨拶しました。その次に、あの精霊導師が挨拶に来ました。近くで見ると、本当に美しい少女でした。私もそれなりに褒められる容姿ではありますが、恐らくこの少女にはかなわないでしょう。今日着飾られていたら、私の立場が無かった所です。


でも、私はこの少女が王家に尽くしてくれると言ってくれて、誇らしく、また嬉しく思ったのでした。




婚姻後暫くは、主にロイドステア国内の勉強を行いました。また、礼儀作法は、国が違えば異なるものですので、異なる点を主体として、教えて頂きました。こちらについては、お義母様や、セントラカレン公爵夫人のレクナルディア様にもご指導頂きました。


レクナルディア様は、お義父様の従兄妹に当たる方で、お義母様とも親しくされているそうで、ロイドステア内の地盤が無い私の後見役となって下さっています。外見は迫力のある美人ですが、話してみると面倒見の良い方だと思えました。主要な役職の方と顔つなぎをして下さったり、公爵邸に招待して下さったりもしました。庭の薔薇がとても美しかったです。お義母様やレクナルディア様には、本当に感謝しております。


私の婚姻後、サウスエッドとロイドステアとの同盟を締結するため、何度か使節が来て、サウスエッドの状況を教えてくれました。どうやら私が嫁いだため、父が気落ちしているそうです。早く同盟を締結して転移門を設置しなければ、国政に影響が出る、と言われた時には、流石に冗談だろうと思っていたのですが、いざ転移門が設置されて里帰りすると、本当に悪影響が出ていました。


多くの事業の認可が遅れ、このままでは危なかったと、何人かの方から告げられました。我が父ながら、呆れて物が言えませんでした。お気に入りの場所である丘にウィルを案内し、幾分気分が晴れたものの、帰って来た時に、城の堀の清掃が滞っていたことで、国政が滞っていた状況が判ってしまい、正直情けなくなったものですが、その時、フィリストリアが堀を清掃し、水を入れ替えてくれたのです。


彼女は、私が悲しんでいたのでやってくれたようでしたが、そのためだけに、業者が数週間かけて行う作業を、たったの30分程で終わらせてしまったのですから、悩んでいるのが馬鹿らしくなりました。まあ、昼食の際に、父を厳しく注意しましたけれど。




国内の勉強が一通り終わり、一度主要な婦人達との関係を深めようということで、お義母様が茶会を設けて下さいました。三公夫人達や、王都在住の領主夫人達、それにフィリストリアも参加するそうです。この時、私はあることを考えていました。


ロイドステアの生活は意外に快適で、正直サウスエッドより住みやすいかも、と思っているくらいですが、一つ不満な点がありました。それは、甘味が少ない、ということです。サウスエッドは砂糖を生産しており、甘味が豊富です。私も大好物なのですが、ロイドステアに来てからというもの、あまり甘味が出てきません。使節が土産に持って来た砂糖がどれほど有難かったことでしょう。この状況を打破しようと、もっと甘味や砂糖を輸入するよう主張するつもりでした。


使節が持って来た砂糖を使って、サウスエッドから付いて来た侍女達と一緒に作った甘味を茶会で準備して、話題にすれば少しは輸入が増えてくれるかも?と思ったのです。茶会が始まり、暫くは当たり障りのない話題で和ませ、いざ、甘味の話を切り出したところ、フィリストリアが凄い情報を持ち出しました。


何と、アルカドール領で砂糖の生産が始まったそうです。来年か再来年には、国内で流通すると言っていましたから、今年中には、まず王家に献上される筈です。そうなれば、甘味が作り放題です!私は、甘味作りが得意なので、腕を振るわせて頂きましょう。その際は、砂糖のお礼に、フィリストリアにも甘味をご馳走したいと思いました。




甘味の目途が立って、気分良く茶会の会話を楽しんでいた所、イストルカレン公爵令嬢が話し掛けてきました。最初は和やかに話をしていたのですが、エスメターナ様の話になった所で、彼女の出身などの話について振られたのですが、私は覚えていませんでした。


建国の英雄たるエスメターナ様については、色々知っているのがロイドステア貴族の常識らしく、私は勉強不足を責められました。まずい事になったと思っていると、丁度近くにいたフィリストリアが、私をかばってくれました。本当に有難う。


話が収まったところで、レクナルディア様に呼ばれて、謝罪されました。レクナルディア様は、ロイドステア内の貴族女性のまとめ役として、謝罪されたのです。私の勉強不足だったことが原因ですので、とんでもないと返したのですが、どうも、イストルカレン公爵令嬢は、ウィルの婚約者候補だったそうで、私に含むところがあるようなのです。私は、婚姻は家同士の話ですので、個人に恨みを向けるのは誤りなのですが、割り切れないものもありますわ、と返答して、その場を終えました。




茶会が終わった後は、もう一度ロイドステアの価値観を重視して勉強し直すとともに、アルカドール領の砂糖の生産について、確認して貰いました。驚く事に、現在アルカドール領は、フィリストリアの発想を元に幾つもの産業振興を行っており、砂糖の生産は、その目玉なのだそうです。


他にも新しい酒の製造や水晶の加工、新しい料理を幾つも考案し、アルカドール領は、活気に満ちているそうです。


外見は、見惚れるくらい美しいのに、強大な魔力を持ち、精霊を使役して、とても人には成し得ないことを平然と行ってしまう、それでいて奢らず、優しい少女。


当代の精霊導師も、エスメターナ様に勝るとも劣らない、素晴らしい存在であると確信しながら、私はロイドステアの未来に思いを馳せるのでした。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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