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第091話 王太子妃殿下の茶会 2

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

その後も、王太子妃殿下が、私達に色々質問をした。主に文化面で、サウスエッドではこのような感じだったが、ロイドステアではどのような感じなのか、ということを聞かれていた。


例えば音楽については、サウスエッドでは琴やウクレレのような指で弾くタイプの弦楽器が主流だそうだ。ロイドステアはどちらかと言うと、笛やラッパが主流だ。太鼓のような打楽器はどちらも軍隊などで良く使われているらしい。パイプオルガンのようなものもあるが、カラートアミ教で聖歌隊の伴奏に使われている。


絵画については、どちらも違いは無さそうだ。ダンスは、サウスエッドとロイドステアでは踊り方が結構違うらしく、殿下は今レクナルディア様達に習っているらしい。


そういった中で、話題がお菓子の話になった。


「今回は文化交流の一環と言うことで、サウスエッドの甘味を準備させて頂きましたが、ロイドステアでは、どのような甘味がございますの?」


そういえば先日サウスエッドで茶会に参加した時に見たお菓子だが……ロイドステアは今の所砂糖を輸入に頼ってるから、殆どお菓子は発展してないのよ。砂糖の輸入元はサウスエッドとヘイドバークが多いらしい。両国はサトウキビを生産しているそうだ。砂糖の輸入を増やしたいのかな?


「焼き菓子が主体ですが……砂糖は輸入に頼っておりますから、高価なものですし、あまり種類はございませんわ。蜂蜜を使用したものもございますが、そちらも極少数ですわ」


同じ様なことを考えていたのか、セントラカレン公爵夫人がそう言った。そうだな、少しセールスしておこうかな。お父様からも、適度に広報しておくよう言われていたし。


「砂糖でしたら、今後はロイドステアでも安く入手できるようになるかもしれませんわ」


「あら、フィリストリア、それはどういうことかしら」


「王太子妃殿下、実はアルカドール領で砂糖を生産する試みが進行しているのですわ。甜菜という植物から砂糖が取れることが判りまして、生産工場を建設するとともに、農地を整備しているのですわ」


「まあ、それは素晴らしいわ。目途が立つのは何時頃なの?」


「生産が軌道に乗れば、来年か再来年には国内でも流通可能となりますわ。そうすれば、甘味を作ることも容易になりますし、サウスエッドの甘味をこちらで作ることも出来ますわ。確か、サウスエッドには、甘味専門の販売店があると伺いましたわ。そういった店も、王都などで開けるようになりますわね」


「では、その際は、王太子妃殿下にも、色々と甘味を紹介して頂かなくてはなりませんね」


「そうですわね。砂糖があってもその使い方を知らなければなりませんものね。このような甘味が気軽に食せるようになるのは、楽しみですわ」


公爵夫人達も乗り気のようだ。やはり女性はスイーツ好きだな。ついでに王太子妃殿下もスイーツ大使に任命されそうな勢いだ。そうなれば、貴族女性達の間で良い関係を築けるだろう。




そんな感じで話をしていたが、王妃殿下が


「今から自由に歓談しましょう」


と言って席を立ち、それを合図に王太子妃殿下も別の組の所に行った。さて、私は中央の所の軽食でもつまむか。そう思って席を立とうとすると、セントラカレン公爵夫人が声を掛けて来た。


「フィリストリア様、もう少し、お話しませんこと?」


「あら、レクナルディア様、宜しいですよ」


何か話したいことがあるのだろうか。


「貴女とは、一度お話をしてみたかったの。ヴェルドレイクがお世話になっていますし」


「ヴェルドレイク様は、今は同じ魔法省で勤務しておりますから。やはり見知った方がいらっしゃると言うのは良いものですわ」


「あの子は真面目で努力家なのだけれど、魔力が少し低かったことで、あまり高い評価を得られていなかったわ。けれど、魔技士としての才能はあるようですよ?」


「伺っておりますわ。ヴェルドレイク様は、精密に魔力操作を行う才能があるそうです。まさに魔技士は天職ではないでしょうか。今後どれほどこの国の発展に貢献されるか、楽しみですわ」


「そう言って頂けると親として嬉しいわね……貴女のお相手が決まるのは暫く先のようですから、その前にあの子が候補になれるような地位を得て欲しいものだけれど……」


はい?この流れだと……ヴェルドレイク様との結婚の話?正直、何とも言えません……。


「そうですわね……、現在の私の立場は微妙ですので、自身で判断できないのです。申し訳ございません」


「そうよね。変なことを聞いてしまったわ。では、オスクダリウス殿下とも……判らないわけね」


「はい、その通りですわ。様々な憶測が流れているのは承知しておりますが」


「うちの娘が殿下を慕っていますし、そちらは控えて頂きたいのですけれどね」


うん、知ってる。できればライスエミナ様とは仲良くしたいのよね……面白そうだし。


そのような事を話し、レクナルディア様は席を離れた。私の状況を確認したかったのだろうな。




そういえば、公表前に私に結婚の申し出をしていたのは、国内ではイストルカレン家、カウンタール家とイクスルード家だが、イストルカレン家は外されたので、侯爵家2つの筈だ。どちらも今回の茶会には参加していないので、催促されることはないと思うが……。


確かカウンタール家のライスベルト様は、お兄様と同級生の筈だが、話を聞かない所をみると、仲は良くなさそうだ。イクスルード家のダリムハイト様は、来年学校に入学する筈。通例で行くと魔法学校の筈だが……そうなるとミリナやルカ、ティーナ達と同級生になるのかな?やはり、魔法省勤めだと、そういう時の流れに置いて行かれる感が強いな……。


と、軽食をつまみながら考えていたが、折角なのでどこかの話の輪に入ってみよう。御婦人方ではなく、令嬢がいそうなところは……あそこか。近寄ってみると


「あら、王太子妃殿下ともあろう方が、その程度の事もご存じありませんの?」


という声が聞こえた。王太子妃殿下と誰か……確か、イストルカレン家の長女だっけ、が話している。


「そうですね。そういうことも、今後学んでいかねばなりませんね」


「そうでなければ王太子妃殿下として務まりませんわ……あら、導師様、お聞きになって下さいな」


「イストルカレン様、どうなさったのかしら」


「王太子妃殿下ですが、エスメターナ様のことをご存じなかったのよ」


「あ、お名前は存じております」


「しかし、エスメターナ様がどちらのご出身で、何属性か、などご存じなかったではありませんか」


まあ、ロイドステアの貴族なら常識だが、来て数か月の他国出身の人にそこまで求めるのはねえ……。


「そう仰らずに。確かに我が国の伝説の英雄を良く知る事は大切ですが、それはおいおい学んでも宜しいではございませんか。それに、立場によって得られる情報は変わりますわ。数か月前は他国の方だった王太子妃殿下に、そこまで求めるのは酷でございますわ」


「まあ!貴女も精霊導師でいらっしゃるのに、その仰りようはどうなの」


「立場が違えば得られる情報も変わる。これは貴女や私でも変わりません。例えば、私は直接精霊女王様や水龍様から、エスメターナ様のことを伺っておりますが、貴女はその内容をご存じありませんわよね」


「そ、それは確かにそうですが……」


「上に立つ方が、全てをお知りになる必要はございませんわ。仕える者が知っているなら教えて差し上げれば宜しいのです。勿論、その回数は少ないほど、仕える者としては有難いのですが」


そう言って、ツッコミ待ちの状態を作ると、周りの人が


「そうですわね、ほほほ」


と言い始めた。これで丸く収まるかな?




その後は特に問題となるところもなく、適当に会話をして、茶会は終了した。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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