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第089話 雷魔法を開発してしまった

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は庁舎区域には行かず、魔法研究所へ視察に行く日だ。


魔法研究所は、魔法省隷下の組織で、魔法に関する研究を行っている。危険な研究も行うためか、王都の外れにある。所長は課長と同じくらいなので子爵級だ。ただし、所員には子爵の人も何人かいる。アンダラット先生もその一人だ。


王都でも重要な施設の一つなので、警備もそれなりに厳重だが、事前調整のためか、すんなり敷地内に入ることが出来た。


入口の前には、誰かが待っていた。礼をしたので、こちらも答礼して


「精霊導師のフィリストリア・アルカドールです。本日は視察という名目ですが、見聞を広めさせて頂きます。宜しくお願い致しますわ」


「魔法研究所長のイネスティグ・アネグザミアです。本日はようこそお越し下さいました。いやあ、懐かしいです」


懐かしい?はて、私はこの方と面識があったっけ?


「ああ、これは失礼いたしました。実は私は、導師様がお生まれになった時、アルカドール侯爵に招聘されて、導師様の状態を確認させて頂いたのですよ」


……ああ、そうか、聞いたことがある!あの時の人か……当時の記憶はないけど。


「そうでしたの。その節はお世話になりました」


「いやいや、何せ全属性の方はこれまで全てお亡くなりになられているということで、一応専門の私が呼ばれたのですが、結局貴女がご自身で解決されたようなものでしたからな」


その後、全属性の子が産まれた際の処置法などを論文で出されたりしたそうだが、それが使われる日は今後来るのだろうか……私が生きている間なら、手助けが出来そうな気もするけどね。


所長から、所内についての説明を受けながら歩いた。魔法研究所は、共通と、火、風、水、地の各属性の研究室に分かれているそうだ。後は実験場などの設備があるようだ。アンダラット先生は共通研究室長らしいので、後で会いに行こう。


そして、手ぐすねを引いて待っていたらしい氷魔法の研究者に捕まって、論文の内容を確認させられたり、氷魔法の実演をしているうちに昼になり、所内で昼食を頂いた。




午後からは好きな所に行けるようなので、共通研究室に入ったところ


「あら、ティーナ様ではありませんか、お久しぶりですわ」


どうやらアンダラット先生の所に来ていたらしいティーナと出会った。久しぶりだなあ……。


「フィリス様……お久しぶりです~。その制服は……そういえば、魔法省に勤められているのですね」


「その通りですわ。今日はこちらに視察という名目で見学に来ているのです」


「私は~来年魔法学校に入学致しますので、父の手伝いを兼ねて、こちらで勉強させて頂いております」


最初のところで語尾を伸ばす癖、懐かしいな……。2年前だけど、もう何年も会ってない気がするよ。


「そういえば先生はどちらに?一度ご挨拶をさせて頂こうと思っていたのですが」


「え~と、少し席を外しているだけですわ。じきに……あら、お父様、フィリス様が来られましたよ」


「まあ、アンダラット先生、お久しぶりです」


「おお、フィリストリア様……失礼、今は導師様とお呼びしなければなりませんな。お久しぶりです。ますますお美しくなられましたな」


「私にとっては今でも先生ですよ。お元気そうで何よりですわ」


「懐かしいですな。領主様達は、お変わりありませんか?」


「うちの家族は息災ですわ。あと、兄が現在魔法学校で学んでおります」


「そうでしたな。そういえば、カイダリード様は昨年度学年首席だったとか。素晴らしい事です」


「先生に教えて頂いたからですわ。兄も常々先生には感謝しておりましたもの」


「そう言って頂けると光栄です。そういえば、私の後任のマクタライドは頑張っていますか?」


「ええ。今は領内の産業振興を担当しておりますし、氷魔法の普及責任者でもありますのよ」


「そうですか。彼を後任に推薦して良かったです」


「フィリス様~、パティ達は元気でしょうか?」


「皆元気にしておりますよ、そうですね……ルカ様は来年魔法学校に入学されますよ。あと、パティ様も秋にはこちらに来られると思いますよ」


「……もしかして~、パティも精霊が見えるのでしょうか?」


「あら、ご存知でしたの?」


「いえ~初めて伺いましたが、あの子、たまに何もない所を見ていましたので」


「ふふ、そうですか。私も、それで気付いたのですが」


「懐かしいですなあ。ほんの数年前なのに、もう何十年も離れている気がします」


「お仕事などが落ち着きましたら、一度アルカドール領に来られては?今は産業振興のおかげで、セイクル市をはじめ、色々変化しておりますのよ」


「産業振興とは、どのような事を行っているのでしょうか」


「主には砂糖や新しい酒の製造ですわ。また、新しい料理の開発なども。ドミナスの方では、新しい水晶の加工法、プトラムでは、新しい魚料理などによる観光での振興を計画しておりますの」


「それは凄い。一度行かねばなりませんな」


「砂糖や酒の事業は、軌道に乗るのが数年後になりますので、その辺りで行かれると宜しいですよ」


「お父様~、家族で是非行きましょうね」


このような感じで、アルカドール領の事を楽しく話させて貰った。




さて、ここに来たもう一つの目的を果たすべく、先生に聞いてみた。


「先生、実は、こちらの施設をお借りして、魔法の試し撃ちをしたいのですが、宜しいでしょうか」


「それはもう……導師様であれば、こちらとしても良い資料となりますので願ったりですが……ちなみにどのような魔法を?」


「雷魔法ですわ。先日、雷魔法に関する論文を拝見しまして、複数属性かもしれない、ということで興味を持ちまして、精霊に確認致しましたところ、風属性単独だと言われ、併せて仕組みも教えて頂きましたので、それを試そうと思いまして」


「何と!雷魔法を……相変わらず、我々の想像を超えることをお考えですな」


「本当に可能かどうか試すだけですので、大事にはなさらないで下さいな」


「そうですな。氷魔法もそうですが、雷魔法も魔法界の常識を覆します。もし成功しても慎重に取り扱うべきでしょうな。ただ、雷魔法を研究している者にも、見せてやって頂けませんか」


「もし失敗しても、成功の糧として頂けるのであれば、幸いですわ」


「フィリス様~、私も風属性ですので、見学しても宜しいでしょうか?」


「勿論ですわ。成功するかは判りませんが」


そのような話となり、導師服に着替えて屋外実験場に移動し、先生とティーナ、雷魔法の研究員が立ち会う中、雷魔法の試し撃ちを開始した。




的は30クール離れている。恐らく感電はしないだろうが、先生達には後ろにある部屋に退避して貰っている。では、あの的を指定して、電子を地面に逃がす……逃がす……よし、このまま維持。次は、右手を上げて、掌の上に……周囲の電子を風属性のエネルギーの様に集めて…………、よし、集まっている。これを的に……えい!


瞬間、私の手から轟音とともに稲妻が発生したが……あまり的に当たっていない。これは失敗だ。ボツ。


ではもう一つの要領でやってみよう。今度は、周囲の電子を集めて…………、よし。次は、電子の通り道を的までの間に作る……よし。では、放つ!




瞬間、轟音とともに稲妻が発生し、今度は的に命中して、表面が焦げている。成功だ!


周囲に電気の影響が消えたことを確認し、私は後ろの先生達を見て、成功、と合図をした。


途端に先生達は私に駆け寄り


「素晴らしい!やはり導師様は魔法においても常識を覆された!」


「是非!是非に雷魔法の原理を伝授して下さい!」


「フィリス様!素晴らしいですわ~、私も雷魔法を使ってみたいです~」


と、賞賛の言葉を頂いた。




雷魔法の原理は、前世知識をそのまま教えるわけにはいかないので、お父様達の言いつけの通り、基本的に精霊から聞いたということにした。


まず、この世の全てのものには、ものすごく小さい風属性の粒が含まれていて、それが雷の素になっている、という話をした。それは、多く集まっている所から、少ない所に向かう性質があり、自分の側に粒を集めるようにイメージして、ある程度集まったら、空気中にも存在する雷の素を偏らせて、雷が通る道を的までの間に作り、一気に放つのが、私が使った雷魔法の原理だ、と説明した。


「なるほど……、そのようなことを想像するのですね。これは解らない筈だ」


「精霊から詳しい話を伺える導師様だからこそ、成し得たことでしょうな」


「そういえば~乾燥している時に衣服を擦れ合うと、何かが弾けますが、あれもそうでしょうか」


おっ、ティーナ、鋭い。電気の素は、至る所に沢山あるんだよ。




その後、研究員さんとティーナが雷魔法の練習をしたが、その日は出来なかった。しかし、二人とも継続して練習するようだ。特に、研究員さんは、自分が再現できれば、論文を書き進めることができるので、必死のようだ。頑張ってね。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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