第085話 サウスエッド国に行きました 2
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サウスエッド2日目、午前中は城の近くにある丘に行き、王都を眺めつつ過ごした。ここは王太子妃殿下が好きな場所で、よく来ていたらしい。
サウスエッドは南国で、基本的に暑いのだが、ここは風が結構吹くので木陰に入れば涼しい。2人は、あそこに見える建物は……等と仲良く話していた。とりあえずこの時には、特に異状は無かった。ところが、城に戻り、入り口を通った時に、王太子妃殿下が
「じい、この辺りで、何か変なにおいがするのだけれど、何かあるの?」
と、同行していた侍従の人に尋ねていた。恐らく親しい方なのだろう。
「それは……堀の清掃をまだ行っていないためではないかと思われます」
「あら?堀の清掃は確か、これまでは3月くらいまでには行っていた筈よね、」
「はあ……今年は諸事情により認可が遅れまして、確か来週業者に発注すると伺っております」
「……もしかすると、お父様のせい?」
侍従の方は目を逸らしていた。既に業務に支障出てるよ!
「ウィル、ご免なさい。みっともない所を見せてしまったわ」
しょげる王太子妃殿下。王太子殿下が慰めるも効果がない。……時間は少しあるので、一肌脱ごうかな。
「王太子殿下、妃殿下。宜しければ、私が堀の清掃を行いましょうか?」
「フィリストリア?いいのよそんな。悪いのはお父様なのだし」
「折角ご実家に帰られましたのに、悲しい顔をされては私どもも困ります。この大きさの堀であれば、給水口と排水口の操作さえやって頂ければ、2~30分程度で終了いたしますわ」
私が具体的な時間見積を言ったので、殿下達も信用してくれたようで、少し考えた後
「……帰りの魔力量に問題ないのであれば、頼めるか」
「帰りの転移門程度でしたら、全く問題ございません」
「じい、今から堀の清掃を行っても、大丈夫?」
「……5分程、お待ち下さい」
侍従の方は馬車を降り、近くにある内線のような魔道具で何かを話していた。暫くすると帰って来た。
「陛下に許可を頂きました。今から給排水口を操作する場所へ向かいましょう」
そのまま馬車で給排水口を操作する場所へ移動した。同行していた護衛達の馬車は、行先を変更したので状況を確認に来たが、侍従の方が説明していた。暫く待っていると、給排水口の鍵を持った人がやって来た。……どこから聞き付けたのか、宮廷魔導師長達も見学に来た。まあいいや。
「導師様、給排水口の操作の準備は整いましてございます」
「ではまず、排水口を開いて下さいな」
排水口が開く。とは言っても、そのままではなかなか排水しない。私は水精霊と和合を始めた。
【我が魂の同胞たる水精霊よ。我と共に在れ】
和合を完了し、排水口にどんどん汚水を送る。数分で堀は水が無くなった。次は清掃だ。
「では、給水口を開いて下さいな」
給水口を開けて貰い、10クール程度の厚さで堀の底から満水の水位まで水を溜め、一旦給水口からの水を止める。溜めた水を細かく振動させると、あっと言う間に苔や泥が取れた。このまま1周しよう。
「今から1周回って参りますわ」
そのまま飛んで、水を振動させながら移動させ、10分程で元の位置に帰って来た。この汚水は排水口に捨てる。さて排水口を閉じて貰おう。
「排水口を閉めた後、給水口を開けて下さいな」
排水口が閉じたのを確認し、給水口を開けて貰うとともに水を引っ張り出し、数分で堀を満水にした。計25分程で終了かな。和合を解いてから、体の浄化を行っておく。やっぱり便利だわ導師服。
「王太子妃殿下、堀の清掃は完了いたしましたわ」
微笑みながら王太子妃殿下に報告をすると、抱き付かれた。
「凄いわ、フィリストリア!」
流石に居心地が悪いので離れようとするが、暫く放してくれなかった。王太子殿下は「まあ好きにさせてやってくれ」という目で私を見ていた。漸く満足してくれたのか、王太子妃殿下は私を解放した。
宮廷魔導師長も、呼んでもいないのにやって来て
「いやあ、素晴らしいものを見せて頂きました。今の作業を魔法で行った場合、何十人、何百人いようと、貴女のように短時間で効果的には行えないでしょう。それに、あの姿の貴女も美しい」
と言っていた。
王太子殿下・妃殿下は、昼食を王家の方々と取られた。私は護衛なので同席しようとしたが、別室に食事が用意してあったので、精霊に警戒して貰いながら別室で食事を取った。王太子妃殿下が、私の事を褒めるとともに、国王に怒っていた、と、王太子殿下が昼食後に言っていた。
昼食が終了し、ロイドステアに帰国する時間となった。転移門の所へ行く。サウスエッド国王達が見送りをしてくれた。その際、国王が
「堀の件、感謝する」
と言っていたので、まあ問題ないだろう。殿下達が挨拶をして、王都に転移した。
その後は王太子殿下とともに陛下に状況を報告し、魔法省へ帰ることが出来た。まだ大臣はいたので大臣にも簡単に報告し、帰宅した。
今回、私が1日に何回も転移門を使用しても大丈夫だと言うことがサウスエッド側にもばれてしまい、3か月に1回くらい、王太子妃殿下(と私)を茶会に誘いたい、という申し出が王家になされたらしい。まあ、私の業務の都合も考えてくれるらしいので、その程度であれば関係強化のためには仕方がない。そもそも私には実質拒否権が無い。宮仕えの悲しい所だ。
また、サウスエッド側で、私の能力が問題になったらしい。遠視の様に遠方を確認出来たり、毒が入っているかを確認出来たり、天気予報が出来たり、大量の水を自在に操れるという話が伝わり、ぶっちゃけ人外扱いされているようだ。
そのような者を国内に入れて、もし攻撃されたらどうするのか、という話が上がったそうだが、そうであるならもうされている、同盟国として頼もしい限りではないか、と国王が言ったおかげで、一応収束した、と後日こっそりと王太子殿下が教えてくれた。
正直、力を持っているというだけで敵視するのは、合理的ではないと思う。暗殺とかならまだ判るけど、面と向かって敵対したら、その強力な者を明確に敵に回すわけで、どう考えても賢いやり方ではない。
現在、ロイドステア国内は、私を明確に敵視している存在はいないと思う。そこは恐らく王家の方針であり、精霊導師という存在になじみがある国だから、そうなのだろうと考えている。陰で疎ましく思っている者はいるだろうが。しかしながら、他国は必ずしもそうではない。
例えばノスフェトゥスなどは、私を恨んでいてもおかしくない筈だし、今後も私の活動により、大きな不利益を被る国が、私を敵視する可能性はあるだろう。今は沈黙していても、いつか結託して、私を排除する可能性が、無いわけではない。
ただ、それに怯えるあまり、力を行使しないというのは違うと思う。既に私が精霊導師であることは各国に連絡されているため、もう意味がないからだ。今回の様に、適度に平和的な内容で力を行使していくと、案外周りも慣れてくれるのではないかと考えている。
まあ、便利屋になる程に使われるのは望ましくないのだが、力を持つ者が平和的に生きるには、ある程度必要なことだ、と思うことにしよう。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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