第084話 サウスエッド国に行きました 1
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今日はサウスエッドに行く日だ。護衛も兼ねているため、導師服で王太子殿下達の所へ向かう。レイテアもいるので、護衛に護衛が付くのは微妙な感じがするが、まあ仕方ないだろう。
「今回は急に仕事を頼んでしまったね」
「いえ、これも臣下の務めでございますゆえ」
「フィリストリア、今日は宜しくね!」
「殿下達のお供をできますこと、誠に光栄でございます」
王太子殿下、妃殿下達と挨拶をした後、新しく設置された転移門によって、サウスエッドへ移動した。サウスエッドとの時差は3~4時間くらいらしく、昼前に出たのだが、太陽を見る限り朝に到着した感じだ。これなら、こちらを昼過ぎに出れば夕方くらいに着くという感じだろうか。
サウスエッド側の転移門で待機していた侍従に案内され、謁見の間に移動した。念のため、寄って来た精霊達にも警戒をお願いしておこう。謁見の間に、王太子殿下、妃殿下と私が入る。
「よくぞ参った。やはり転移門を設置して正解であった」
「国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅうございます」
「そなた達もな。ここではろくに話もできん。別室で話そう」
謁見をいきなり終了して、茶会に案内された。私も付いて行っていいのか?これ……。まあ、一応私も案内されているので、行くしかないのだが。
「久しぶりだな、レイナ!会いたかったぞ。婿殿もサウスエッドへよくぞ来てくれた」
もの凄く喜んでいるように見えるサウスエッド国王と王妃がそこにいた。本当に妃殿下は愛されてるな。
「もう、お父様ったら、あちらのお義父様達に笑われてしまったわよ」
「レイナが嫁いでからというもの、この人が落ち込んで、政務に支障が出る所だったもの」
そこまでか!これは継続的に来ないとまずいレベルかもしれないな……。うちの両親も、私に見せてないだけでこんな感じだったりしたら、申し訳ない気もするが、仕方ないのも事実なのよね。
「それは言うなとあれほど!見ろ、婿殿も導師殿も呆れておるではないか」
「いえ、このようにご両親に愛された方が、私の伴侶となって頂けたことに感謝しますとともに、大切にせねばならないという気持ちを新たにしました」
「私も両親と離れて暮らしております故、知らずに両親を悲しませているのでは、と我が身を顧みておりました」
「婿殿、そう思って頂けると有難い。導師殿、両親を大切にされよ」
このような形で和やかに茶会は進んだ。主に王太子妃殿下の昔話(と、どれだけ可愛かったか)が話題の中心であったが、たまに王太子殿下や私にも話が振られた。
「婿殿、我が国との人材交流の件だが、ロイドステア側の進捗は問題ないだろうか」
「我が国にはサウスエッドの素晴らしい技術力を学びたいという者が多いため、選定が大変です」
「それは光栄だ。こちらはロイドステアの魔道具技術や精霊に関する知識を学びたいと考えておる。導師殿にも世話になるが、その際は頼むぞ」
「ロイドステア国王陛下の命が大前提でごさいますが、両国の為、微力を尽くしましょう」
「そういえば、我が国もお主との縁談を望んでおる。次期公爵で将来有望だが、どうだ?」
「その件は、王家や両親とも話し合わねばなりませんので、私の口からは何とも」
「そうであったな。しかし、考慮して貰えると有難い」
私の結婚の話は私に聞かれても困るのよね……別の話をして欲しい。
茶会終了後、妃殿下が王太子殿下に城内を案内することになったのだが、当然サウスエッド側の者が案内する必要があるわけだ。で、やって来たのがあの宮廷魔導師長。あの人苦手なんだよな。
「王太子殿下、こちらが宝物殿でございます」
王太子殿下の方に言っているように見えて、意識は私の方を向いている。かなり器用なことだ。殿下と妃殿下が宝物について話し合っていると、宮廷魔導師長がこちらに近づいて来た。
「精霊導師殿、お楽しみでしょうか」
「私は現在王太子殿下、妃殿下の護衛でございます。楽しむなどとんでもない」
「そう仰らずに。貴女も客人として丁重に扱うよう、陛下からの命でございますゆえ」
そう言いながらにじり寄るのは、既に違うだろう。釘を刺しておくか。
「申し訳ございませんが、気遣いは全く不要ですわ。あと、それ以上お近づきになるのであれば、その前にご自身の噂を消して頂きたいのです。私とて、あらぬ噂を立てられるのは避けたいのですよ」
「おお、それは失礼しました。精霊導師殿の不興を買いたくありませんからね」
と言って、少し離れた。流石に私も同性愛者の噂を流されるのは勘弁願いたいのよ。
その後は、意識がこちらを向いているのは変わらないが、自身が近づいて来ることは無かった。
夜には、歓迎の宴が開かれた。私は護衛なので、風精霊と感覚共有して警戒しつつ、会場の置物と化している。今の所異状はない。念のため飲み物への毒などもチェックしているが、問題ない。そういえば、サウスエッドには精霊術士は現在いないらしい。もしかして毒見役がいるのだろうか、大変だなあ……。そんなことを考えていると、一人の少年が近寄って来た。
「君が精霊導師殿か。初めまして。俺はカルスロイド・ラプスダール。ラプスダール家の者だよ」
国王が言っていた公爵家の嫡男だな。現状、警備上問題はないし、少し話してみるか。
「お初にお目にかかります。フィリストリア・アルカドールと申します」
「しかし、盛装でないのは残念だよ。君が着飾った姿は、凄く綺麗だと思うんだけどな」
「今回私は、王太子殿下達の護衛の一人として参加しております故」
「ふーん、護衛か。今は、護衛としては何をやっているの?」
「精霊を使役して、不審者の監視、それと飲食物に毒物が混入されていないか確認をしておりますわ。ただ、サウスエッドの警備態勢は厳重ですから、今の所異状は見られませんが」
「それはご苦労様。ちなみに、王城正門の衛兵は、現在何名いるのかな」
ん?もしかしてこれは、仕事ぶりを試そうとしているのか?少し見てみるか。
「そうですわね……今は6名配置されておりますわね」
「へえ……では、裏門には?」
「……裏門には4名配置されておりますわね、それが如何されましたか?」
「いや、ここに居ながらにして警備を把握できるとは、便利だね」
「お褒め頂き有難く存じますわ。そうそう、明日は夕方に雷を伴った激しい雨が降りますので、外出の際はご注意下さいませ」
「君は天気予報まで出来るのか。……では、仕事を邪魔するのも悪いから、今日は失礼するよ」
そう言ってラプスダール公爵令息は去って行った。その後は特に何もなく、宴は終了した。
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