第007話 魔法の授業が始まった 2
お読み頂き有難うございます。
宜しくお願いします。
さて、水のエネルギーを集めるイメージを……よし、こんな感じでいいだろう。ではやってみよう。
「先生、では始めます。活性化して……えいっ」
「はい、素晴らしい!流石にフィリストリア様は魔力量が多いので、集まる力も多いですね」
「先生有難うございます」
「フィリス、次は風属性でもやってみなさい。集める要領は、基本的にどの属性も同じだ」
そう言って、風属性のエネルギーを集めて見せてくれた。
「はい父様、やってみます。活性化して……えいっ」
「うむ。風属性でも同様にできるようだな。どうだフィリス、火や地も同様にできそうか」
「はい父様、一度火や地の属性の力が集まっている所を見せて頂ければ、同じ様にできそうです」
「そうか。今度父上やエヴァにも来てもらうので、その際に展示してもらうといい」
なるほど、お爺様は火属性、母様は地属性だからね。
「父様有難うございます」
「ではフィリストリア様、今度は違う魔法……そうですね、そこに水たまりを作ってみましょう」
「水たまりですか?この場合、どのようなことを思い浮かべれば良いのでしょうか」
「そうですね。土の中にある水を集める感じでしょうか。このようにやります」
暫くすると先生の魔法が発動し、少し離れた所に水たまりができた。なるほど。
「ではやってみて下さい。ただし、フィリストリア様は今日初めて魔法を使っているのです。上手くいかなくて当然ですので、気楽にやってみましょう。あと、これは注意点ですが、活性化した状態を維持した場合、意図しない魔法が発動する可能性があります。従って、魔法が発動したら、活性化を解いて下さい。また、活性化した状態を維持した場合は、魔力を大きく消耗します。魔力が尽きてしまうと、意識を保っていられません。生命の危機にもつながります。自身を守るために、活性化を解く癖をつけて下さい」
なるほど、そのような注意点もあるのか。まあ、活性化を解くのも普通にやれている。水たまりを作るイメージか。土中の水分を集める……ねぇ……地下水が湧く感じかな?
「ではやってみます。活性化……えいっ」
暫くすると大量の水が湧き始めた。では活性化を解こう。
「……フィリストリア様?初めてで魔法を成功させたのは大変素晴らしいのですが……水が多すぎです!」
確かに、水たまりを通り越して池のようになっている。くぼんでいる所に湧かせたのは、ある意味良かった。
その後、先生が水を近くの排水溝に流して片づけたのだが、次々に湧いて来る水を運ぶのは結構魔力の消費が激しかったようで、疲労の色が見える。先生申し訳ありません。
「はぁはぁ……フィリストリア様、今回はどのようなことを思い浮かべたのでしょうか?」
「先生、お手を煩わせて申し訳ありません。今回私が思い浮かべましたのは、地下水が湧くことですね」
そう言って、地下水や地層の話をした所、先生も父様も怪訝な顔をしていた。
「……もしかしてフィリス、そういった知識は……うちの図書室にあった本を読んで知ったのか?」
そんな本あったかしら……と思ったが、これはもしかすると、精霊知識と言わないための方便か!
「……はい父様、図書室の本を読んで先ほどの知識を知り、試しにやってみたのです」
「そうでしたか……領主様、フィリストリア様は成長すれば素晴らしい魔導師になれるでしょう。ただ、やり過ぎてはいけない、ということも学ぶ必要があると思われます」
「アンダラット男爵の言う通り。フィリス、どの程度が適切なのかを、見極めることは非常に大切なことだ」
「はい、父様、先生、申し訳ありません。引き続きご指導をお願いします」
気を取り直し、次は風の魔法を試すことになった。最初に父様が見本を見せてくれるようだ。
「ではフィリス、今回はつむじ風を起こす魔法を見せよう。………………このような感じだ」
「つむじ風です!父様、今どのようなことを思い浮かべたのでしょうか?」
「今回は単に空気がうねる様を思い浮かべただけだ。フィリス、少しでいいからな、やってみなさい」
父様はそう言うが、個人的には空気がうねると言われてもピンと来ない。とりあえず、上下に気圧差を作ってみよう。
「ではやってみます。活性化……えいっ、出来ました!」
「……フィリス、程度を考えなさい!今のは最早竜巻ではないか!」
そう、少し気圧の差を作り過ぎたようで、一瞬竜巻の様な強風が発生してしまったのだ。念のため遠くでやって良かった。父様が頭を抱え、先生は唖然としている。
……私は、細かい魔法には向かないのかもしれない。
「父様申し訳ありません……私には、魔法は向かないのでしょうか……」
「いや、初めてであのような魔法ができるのは凄いことなのだぞ?ただ、程度を考えることが必要なのだ。例えば、敵と味方がいるところに先ほどの竜巻を起こしたら、双方吹き飛んでしまうだろう?」
「はい、そうですね……適切な威力を出せるよう、色々試してみます。父様有難うございます」
その後は、属性のエネルギーを集める魔法を繰り返し行った。
次の魔法の授業の時は、先生の他、お祖父様と母様もやって来た。今回の実技は火魔法となるため、念のため、近くにある領兵訓練場内の広場になった。類焼するものはない。近くに池もある。
「では、今回はグラスザルト様とエヴァンジェラ様の助力を頂き、実技をいたしましょう」
そうして、まずは火と地の属性のエネルギーを掌に集める魔法を二人に見せて貰った後、やってみた。これは問題なかった。
次に、簡単な地と火の魔法をやってみることになった。
「ではまず地属性を。エヴァンジェラ様、お願いします」
「承知しました。フィリス、地面に穴を作るわ。よく見ておいてね」
母様がそう言って暫くすると、突然地面に人が入れる位の穴が出来た。何だあれは?土は何処へ行った?
「このような感じだけれど……どう、出来そうかしら?」
土が消えるのはおかしいので、液状化現象による陥没か?危なくないよう範囲を指定してやってみるか。
「はい母様、やってみます。活性化……えいっ!」
暫くすると地面が沈み始め、直径5mくらいの穴ができた。まあ、多少大きくて深いが、こんなものだろう……あれ?母様たちは顔が青ざめている……これもやり過ぎなのか?加減が難しいよ……。
「……フィリス、今の魔法ではどのような事を思い浮かべたの?」
そこで液状化現象による陥没の話をした。今回も図書室知識ということになった。なお、この穴を復旧するのに、近くから土を魔法で移動させて埋めたのだが、練習ということで自分でやらせてもらった。
「……まだフィリストリア様の魔力は十分の様ですので、今度はグラスザルト様、お願いします」
「フィリス、今度は気楽にな。では、あの薪に火をつけるぞ」
積み上げられた薪に火が付いたが、すぐに火は消えた。どうやら、魔法で消したようだ。
この世界の火魔法は、地球の空想小説や漫画などで見られたような、何もない所に炎が出るものではない。燃えるものに火種となる火属性のエネルギーを与えることで、炎が出るのだ。その他、攻撃をする際には、直接火属性のエネルギーをぶつけるそうだ。
今回は特に迷うことは無い。燃えるものがあり、火属性のエネルギーは周囲にある。あとは酸素を集めればいいのかな。酸素は火精霊曰く、火属性も含むそうだから、火属性のエネルギーと一緒に集めればいいか。
「お祖父様、お手本有難うございます。ではやってみます。活性化……えいっ!」
すると薪は非常に激しく燃え盛りつつ爆発四散し、すぐに燃え尽きた。……またやり過ぎたらしい。火属性のエネルギーと一緒に酸素も集めて加えただけなのに!火属性のエネルギーって強すぎでしょ!類焼の起こらない場所で本当に良かったよ……。
「……フィリスや。あれは少々強すぎたようじゃな。まあ火が消えて良かったが」
すみません!薪全てを灰にしてしまって、申し訳ありません!
こうして私は当分の間、魔法は講義と魔力操作・活性化の実技(自習)のみになった。とほほ。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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(石は移動しました)