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第067話 レイテアが騎士学校の教官になった

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

私の10才の誕生日であり、洗礼の日である4月1日までは、王都での生活に慣れつつ、アルカドール領に帰ってプロジェクトの進行を確認したりするので、王都が3分の2、アルカドール領が3分の1くらいの割合で生活することになる。とりあえず、マーク叔父様に、検討した内容を手紙に書いて出しておこう。


そのようなことをやっていると、クラリアが、面会希望の話を持って来た。どうやら、騎士学校の校長が、私とレイテアに面会したいそうだ。レイテアにも了解を取って、明日会うという回答を出した。




次の日、騎士学校の校長と主任教官が、私達を訪ねて来た。


「導師様、お忙しいところ、お時間を頂き、誠に有難うございます」


「校長殿、本日はどのようなご用向きでこちらに?」


「実は、メリークス殿に、我が校の臨時教官をお頼みしたいのです」


どうやら、最近はレイテアの活躍もあって、女性騎士を目指す者が増加し、また、王太子妃をはじめ、王族の女性が今後増えていくことが予想されることから、女性騎士の需要自体も高まっているそうだ。しかしながら、騎士学校には男性教官しかおらず、女性に合った戦い方を教えられる者がいない。このため、レイテア自身に教官を頼んではどうか、という話になったそうだ。


「勿論、メリークス殿は、現在導師様の護衛ですから、その任務が何にも勝るということは分かっております。しかしながら、後進の育成にもご助力を頂きたいのです」


時間はやりくりすれば何とかなる。これは、良い機会だ。レイテアの成長にもつながると思う。


「レイテアが希望するのであれば、私は構いませんわ。頼もしい女性騎士が増えることは、この国の為にも良い事です。レイテア、どう思いますか?」


「お嬢様、私は是非、この話を受けたいです」


「では、そのように致しましょう。どの程度の時間配当があるのでしょうか?」


話し合いの結果、当座は週2回、半日基準で女子学生に対し、戦い方のコツなどを教えることになった。


その他、騎士学校の現状も聞いた。女性が入学しても、途中で体を壊したりして辞める者が多く、卒業できたとしても、騎士団などに採用される者が少ない状況であり、そんな中、卒業生であるレイテアの活躍を見て、自分達の教育法に疑問を感じていたそうだ。そのような疑問に、レイテアは答えた。


「私が護衛としてやって来られたのは、偏にお嬢様と出会い、女性としての戦い方を教わったからです。実技面は私が教えることになりますが、当初はお嬢様も、講義などに参加して頂けないでしょうか」


あら、私も参加しろと。……魔法省に勤務するまでは何とかなるかな?


「私は構いませんが……校長殿、宜しいでしょうか?」


「は?導師様は、剣術も嗜まれておるのでしょうか?」


「いえ、見様見真似の手慰みですわ。ただ、魔力循環などを利用した体の作り方などは、私が講義した方が宜しいかもしれませんわね」


「はい、お嬢様に教えて頂ければ、学生達の健康状態が良好になり、途中退学者も減ると思います。実際に教えを受けた私が言うのですから、間違いございません」


「そ、そうですか……では、お時間がございましたら、宜しくお願いします」


あと、主任教官が、とある噂について、ちらりと話していた。どうやら、レイテアは私を通じて精霊から剣術を教わったのでは?という噂があるらしい。無名の、しかも女性が、これまでの剣術と異なる考え方で、いきなり実力を格段に上げたかららしい。まあ、私が助言を行ったのは事実だが、基本的にはレイテアの才能と努力の賜だ、と、とりあえず答えておいた。


こうして、レイテアは、騎士学校の臨時教官になった。当面は私も助手として参加する。一応、お父様に承諾は貰った。事後だけど。




4日後、最初の授業の日だ。私とレイテアは、馬車で騎士学校に行き、敷地内で馬車を降りた。


「レイテア、やはり懐かしいですか?」


「ええ、5年間ここで学び鍛えましたからね」


レイテアの案内で、教官室に顔を出し、主任教官の案内で、教場に向かう。


教場では、学校の全女子学生40名が席に座っていた。騒いでいた様だが、私達が入ると静かになる。


「本日より、臨時教官として君達に教えて貰う方々を紹介する」


「臨時教官のレイテア・メリークスです。ここの卒業生でもありますので、先輩として親身に教えていきますので、宜しくお願いします」


流石にレイテアの事は皆知っているのだろう。静まり返っていた教室が五月蠅くなったが、主任教官が咳ばらいをすると、再び静まり返った。では、挨拶をしよう。


「3月頃まで助手を務めます、フィリストリア・アルカドールです。宜しくお願いします」


学生は私に対し、どう反応してよいか判らなかったようだ。とりあえず授業が始まり、後ろの席に座る。まず、レイテアは、自身が考えていることについて語った。


「私は、この学校で多くを学ばせて貰った。それは今でも血肉となっている。しかしながら、私達は女性だ。男性とは根本的に違う所がある。私も在校中は多くの悩みを抱えていたが、克服することが出来た。そういった経験を君達に教えて行こうと思う。色々思う所はあるだろうけれど、私達を信じてついて来て貰えないだろうか」


なかなかイメージがつかめないのか、反応は微妙だ。学生の一人が挙手した。


「仰ることは分かりますが、何故導師様がこちらにいらっしゃるのでしょうか?私達には精霊術は使えませんが」


うん、やっぱり私ってこういうイメージなのね。では私からも説明させて頂こう。


「私が担当するのは、主に女性としての戦い方に必要となる、しなやかな体の作り方、また、その際に必要となる、魔力循環を維持する方法などですわ。教官、実際に今から試してみては?」


レイテアは頷き、学生達と私を連れて、屋内訓練場へやって来た。当然、私を含め運動できる服装なので、そのままやることを説明する。


「では私が当初、魔力循環を整えます。教官は、整った学生の柔軟体操をお願いします」


と簡単に言っても、40名を行うのは大変だ。手際よく進めよう。


「まず、各自魔力の循環を確認する要領を教えます。へその下に意識を集中し、深呼吸を続け、血の巡りを感じるようにします。これで体が心地よくなると思いますので、それを維持します。今回は人数が多いので、実施しながら順番に並んで、では、一人ずつこちらの毛布に仰向けに寝て下さい」


やはりみんな、体がかなり傷んでいる。両手を使って、魔力が滞留している部分を治癒していく。トロス砦でもやっていたから、もう手慣れたものだ。治癒が終了した者は、レイテアの所で柔軟体操を行うが、かなり悲鳴が出たのは仕方がない。その後はもう一度私が見て終わりだ。終わった者は軽く体力錬成をやって貰おう。




なんとか一時間半程で終了させ、学生に体の様子を聞いてみた。


「体が軽くなったようです。いつもより良く動けそうです」


まあ、途中苦しいところはあったが、基本的に納得して頂けたようだ。次は体操を教えた。


「今貴女達の魔力循環は非常に整っています。この状態ですと、体の動きは良くなり、体調を崩すことが減り、怪我をしても治りが早いです。この状態を維持するために、毎日鍛錬の後にこの体操を行って下さい。ただ、暫くの間は、これまでの負担が大きかったため、魔力循環がすぐに乱れます。乱れている者を見つけたら、その都度今と同じことを繰り返します。これが、女性としての戦い方を習得する第一歩です」


どうやらみんな、私達が何をやりたいか、少しずつイメージが掴めて来たようだ。健康第一。


その後は教場に戻り、特に今後教えて行く剣術のコツなどについて、レイテアが実体験を元に話していった。特に、これまでは男性に混ざって、男性に力で対抗していたので、体は痛め、力で押し負け、良い所がなかったが、女性の持つ柔軟性を生かし、剣をいなすことを中心に戦うことで、男性以上の強さを発揮することが可能だ、とレイテアは言った。多くの学生が感動していたようであった。実際に武術大会で成果を出しているレイテアだからこそ、女子学生の心を打ったのだろう。


何とか第1回目の授業は終了した。次に来る時には、出来るだけ魔力循環が整っているといいなあ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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