第006話 魔法の授業が始まった 1
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私は4才になり、教育内容に魔法が増えた。家庭教師はアルカドール領の行政官の一人である、アンダラット男爵という方だ。とりあえずは講義を部屋で受けたのち、庭の方に出て、少しずつ実技を行っていくそうだ。講義内容はこんな感じだった。
魔法は、自分の意志を自然現象に反映させる方法で、自分の持つイメージを精霊に伝え、精霊が力を使ってそのイメージを現象に反映させるそうだ。この際注意するのは、
「イメージを伝えられるのは自分と同じ属性の精霊だけ」
「体の魔力を活性化させないと、イメージが精霊まで届かない」
「イメージは精霊が判り易いように具体的に」
の3点だった。
また、魔力の活性化というのは、体内の魔力に意志を乗せることらしい。こうすると、意志が魔素に伝わり、精霊まで届くそうだ。魔力が大きい人間の意志については、精霊はより忠実にかなえようとするため、魔力が大きい人間ほど、大きな魔法が使えるそうだ。
平民の成人で平均500くらい、貴族の成人だと平均5000くらいの魔力量だそうで、魔法を生活だけでなく戦闘に使用するには、2000くらいないと難しいそうだ。
平民の成人で2000を超える魔力量を持つのは3%くらいだそうで、大抵は魔法士と呼ばれる、魔法を使う職業に就くらしい。成人貴族で2000を切る人は10%に満たないらしいけれど。
この世界の国家が基本的に君主制なのは、文化面だけでなく、魔力量の差が戦闘力、ひいては身分差につながってしまうというのが大きいのだろうな……。
講義は終了し、実技に入ることになった。当初は現在の魔力量の測定、次に魔力の活性化だ。ちなみに魔導師と呼ばれる、魔法士の上級者の条件の1つが、魔力量10000以上らしい。
「フィリストリア様、こちらの測定器に手を当てて、魔力を込めて下さい」
「分かりました。……えいっ」
「はい、宜しいですよ。数値は……15100?!」
やらかしてしまったらしい。
魔力量を測定する魔道具、通称測定器の故障と思った先生と私は、何度も再測定したが、結果は変わらず。前に測ったのは3才の時だけど、倍くらいになったなあ……。ちなみに、この測定器は、上3けたを目盛りで表示し、倍率を示す所が1つ点灯すると10倍、2つ点灯すると100倍を意味するようだ。
気を取り直し、魔力の活性化について実際にやってみることになった。
「魔力が血に乗って全身を巡っていることを意識して感じて下さい。そうすると全身が熱くなってきます。これが活性化です。全身が十分熱くなったと思ったら、強く想像すれば、魔法が使えます。まず私がやってみましょう。………………、はい、このような感じになります。では、フィリストリア様、やってみて下さい。最初はなかなかできない方も多いので、まずは気楽に」
見た感じ、臍下丹田に意識を強く集中するだけでも活性化になりそうだったので、そちらでやってみよう。
「分かりました。先生。……、このような感じで宜しいでしょうか」
「フィリストリア様、今何を?全身の魔力が活性化するまでの時間が非常に短かったのですが?!」
「人体の重心となるへその下付近に強く意識を集中すると、どうやら全身の魔力が活性化するようです」
「何と!そのような方法があるとは!フィリストリア様、その方法をどこでお知りになられたのですか?」
「いえ、何となく思いついたのでやってみました」
「何ということだ……フィリストリア様、本日の講義は都合により、自習といたします……」
「分かりました先生、有難うございました……先生、大丈夫ですか?」
「すみません。あまりに衝撃的でしたので……これにて失礼します」
先生はふらつきながら屋敷の入口に向かっていった。父様に報告するのか……大丈夫だろうか。
次の魔法の授業は、父様も同席して行われた。父様は魔導師でもあり、魔法については国でも指折りの実力者と言われているそうだ。実は父様凄い人だったったのか……。
「では、前回の要領で、魔力の活性化を行って下さい」
「はい先生。……、活性化しました」
「なるほど、確かにアンダラット男爵の報告の通りだ。元々娘は魔力操作に天性の才能があると思っていたが、これほどとは……」
「しかし領主様、私もフィリストリア様の仰る方法で活性化を行いましたが、上手くいかなかったのです。フィリストリア様、前回教えて頂いた要領以外にも、何か要点のようなものはございますか」
「先生、私は丹田に強く意識を集中するだけで活性化ができるのですが……、あっ、もしかすると、活性化の際の思考も成功の条件なのかもしれません。私は、人の体はへそから生えているように考えながら意識を集中しているのです」
前世の記憶を元にして作った私のイメージのせいで、意識を伝達する何らかのパスが、丹田を中心として放射状に出来た可能性がある。
「……それは非常に独特な考えですが……そのような要領で意識を集中しているのですね。それならば反復練習を行えば、フィリストリア様以外の者にもできるかもしれませんな。私も試させて頂きます」
「この活性化要領が確立されれば、世界の魔法の常識が変わるかもしれん」
なに?これってそんなに大きな話だったの?
「はい、領主様。魔法は強力ですが発動に時間を要し、隙が多く生まれるため、騎士などの護衛の下に戦闘を行う必要がありましたが、フィリストリア様並みの速度で活性化できるならば……、単独での魔法戦闘すら可能になるかもしれません」
「その通りだ。しかも、娘は魔力量がこの年にして既に通常の貴族の3倍。魔力の活性化の時間は魔力量の増加に伴い増加するが、娘程の魔力量があってもこの早さだ。恐らくはこれまでとは比較にならんほど早く活性化が可能となる」
既に私を置き去りにして話を進める父様と先生。それはいいが、本日の実技はどうなったのか。
「先生、本日の実技については、私は何をすれば宜しいのでしょうか」
「実は、当座の間は魔力の活性化を練習する予定だったのです。しかし、その必要はありませんので。領主様、フィリストリア様に魔法を試して頂いても宜しいでしょうか」
「そうだな。ここまで魔力操作に習熟しているのであれば、魔法を使ってもいいだろう。ただし、慣れないうちはアンダラット男爵や私の見ている所で使用すること。また、娘は全ての属性の魔法を使うことができる筈だが、監督者の属性の魔法を使用させる。今の場合だと、私の風かアンダラット男爵の水だな」
「承知しました。フィリストリア様、宜しいでしょうか」
「先生、承知しました。では、どのような魔法を使えば宜しいでしょうか」
「そうですね。まずは水の基本魔法。周囲にある水属性の力を掌に集めてみましょう。具体的にはこのようにします」
先生がそう言って手を出すと、手のひらの上に水属性のエネルギーが集まり始めた。おおっこれが魔法か。
「どうですか。水属性の力が私の掌の上に集まっているのが解りますか?」
「はい先生。ところで、この場合には、どのようなことを思い浮かべれば宜しいでしょうか」
「そうですね。属性の力は、その量の多少はありますが、基本的には全ての物質に含まれています。属性の力は、自分の属性であれば、一定以上集まれば存在を感じることができますので、魔力を活性化した上で感じ取った属性の力が掌に集まる様を思い浮かべれば、それが精霊に伝わり、属性の力を集めることができます」
「はい先生。その水属性の力と同じ力を集めるのですね。ではやってみます」
私は4種類ある属性のエネルギーのうち、先生が集めた水のエネルギーを選択して、集めることにした。
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(石は移動しました)