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第057話 水龍にも招待された

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

概ね発勁(仮)の発動に慣れたと感じていた夜、窓の所に猫に似た生き物がいた。訝しがっていると


『愛し子よ、我は水龍様の配下の者。宜しいか』


と、念話で話し掛けて来た。水龍?あの四龍のうちの一体?


「神獣様、何用でございましょうか」


『実は、主が貴女に会いたいと仰っているのだ』


え?また私、どこかに連れていかれるの?……とりあえず様子を見るか。


「申し訳ございませんが、今からと仰るのは……母に相談致しますので、日を改めて頂きたいのですが」


『承知した。明日の今頃、回答を頂きたい』


おお、こちらは話が通じる。良かったよ。


その後、猫神獣はどこかへ消えた。




次の日、叔父様とお母様にこの件を相談すると


「ああっ、フィリスにまた良からぬことが?」


と、お母様に非常に心配されたのだが


「いえ、義姉上殿、龍は魔物暴走の兆候を知らせて下さる存在。決して悪い事にはなりませぬ」


と、叔父様が言ったため、お母様は落ち着いた。


「叔父様、龍とはどのような存在なのでしょう。私は文献でしか存じませんので、教えて頂きたいのです」


「龍は、魔物が跋扈し、苦しむ人々を見かねた神が遣わされた使者。常に魔物を監視し、魔物暴走の兆候が見られたならば人に警告し、また、人だけでは対処が困難であった時は助力して下さると言われています。水龍様の姿を見たことはありませんが、配下の神獣様は、私も見たことがあります」


つまり魔物が増えて困る前に警告を出してくれる存在か。魔物暴走多発地帯が領内にあるビースレクナだと、本当に有難い存在なのだろう。


「水龍様は、アブドームとの境界にある山に棲んでいるとされていて、水龍様に許可を頂いた者しか立ち入ることができないようなのです。ただ、麓の村では、水龍様を信仰しているそうです」


なるほど。ウォールレフテで精霊女王様が信仰されている様なものか。龍も神が生んだ者だし、異端にはならないから安心だね……。


「では、せっかくのお誘いですし、伺わせて頂きますわ」


「それでしたら、帰られた時に、様子を確認させて頂きたい」


「叔父様、承知致しましたわ」


ということで、夜を待った。




昨夜と同じ頃に、猫神獣がやって来た。


『愛し子よ、回答を頂きたい』


「謹んで、伺わせて頂きます」


『では明朝、この街の入口で』


叔父様とお母様にこの件を話し、街入口までの馬車の手配をして貰った。服装は導師服が無難だね。


翌日早朝、馬車に乗って入口に着くと、どこからともなく猫神獣と、大きな鳥のような神獣が現れた。


『愛し子よ、この者の背にお乗り下され』


「神獣様、私はいつ頃戻って来られるのでしょうか?」


『本日夕刻、ここにお連れする』


「承知致しました。皆様、私は本日夕刻、この場所に戻って参りますので、また出迎えをお願いします」


護衛達にそう言った後、鳥神獣に乗って、私は水龍様の元へ移動した。




暫く飛んでいると、確かに叔父様の仰っていた山の方に向かっていることが解った。あの山について猫神獣に聞いてみると


『あれはダリブノウ山。ファンデスラの森を東に見下ろす、主が居られる場所』


火山のような形なので、恐らくカルデラ湖にでもなっているのだろう。あ、何か集落のようなものが見える。あれが水龍様を信仰する村なのだろうか?危険な所の筈なのに、何故村があるのかと考えていたら


『魔物は主を恐れ、山には近づかぬ様子』


なるほど。それは確かに信仰するわ。そのような事を考えていると、山頂付近の湖に着いた。水精霊が沢山いる。ここは、水の属性に富んだ場所なのだろう。


『主、愛し子をお連れしました』


暫くすると、静寂だった湖面が俄かに騒めいたと思った途端、巨大なものが湖から出た、いや、顔を出したと言うべきか。恐らく長いであろう胴体は、その全てを湖から出してはいない。本で見たことはあったが、やはり、地球の中国や日本などでの想像上の存在の龍だ。全身青いけど。いや、たてがみと腹は白い。


そういえば、この導師服、あのたてがみから作ったと聞いてるけど……と、下の方を見ると、確かに妙に短いたてがみが。あれを今私は着ているのか。何か微妙に悪い気がして来た……。おっと、人間の作法が通じるかは知らないが、とりあえず礼をしよう。


『愛し子よ、よくぞ参った。我は水龍、神より魔物の監視を命じられし者』


「水龍様、お初にお目にかかります。私はフィリストリア・アルカドール。精霊女王様の加護を賜りし者です。此の度は、御目通りできましたこと、誠に有難く存じます」


『我も嬉しく思うぞ。ところでどうだ、我等のたてがみの着心地は』


……もしかして心証悪い?まあ、ここは素直に言っておこう。


「はい、非常に心地よく、また、素晴らしい守りの力が備わっておりますので、助けられております」


『そういって貰えると、供した甲斐があったというものよ』


良かった……特に悪くは思われていない様だ。


「有難き幸せに存じます。ところで水龍様、此度、何故私をお召しに?」


『お主とは今後幾度も会うだろう。ならば、顔合わせしておこうと思ってな。そこに座ってくれ』


ああ、つまり、魔物暴走絡みでそのうち私と会うことになるなら、今のうちに挨拶しておこうか、ということね。理解しました!その程度ならいつでもOK!身構えて損したよ。とりあえず、神獣が用意してくれた椅子に座りつつ、話を続ける。


「そうですわね。いつ魔物暴走が起こっても良いように備えませんと」


『その通りだ。お主とは、連絡を取れるようにしておきたい』


ということで、私側から感覚共有した水精霊をよこすか、水龍様側から神獣をよこせば、話し合いはできるようだ。水龍様は、配下の神獣と感覚共有が出来るらしい。ちなみに水龍様や神獣は、普通に精霊が見えるようで、精霊とは、共存関係……というより同盟を結んでいるような感じか。


「確認させて頂きたいのですが、何故水龍様や神獣様達は、私を「愛し子」とお呼びになるのでしょうか」


『精霊女王も、我等四龍も、神より生まれし者。神を親とするなら、人が言うところの「姉弟」に当たる。ならば、姉の愛し子を敬うのは、道理であろう?』


「確かにその通りでございますね」


共に神が生んだ存在なのだから、その通りなのだが、微妙に力関係が見える発言だった気がするなぁ。




折角珍しい龍に会えたことだし、仕事の話だけでなく、世間話でもしてみようか。


「こちらには、人は立ち入る事は出来ないのでしょうか?」


『我の気が向いた時のみ許しておる。そういえば、お主の前の愛し子の時もそうであった』


「それは、エスメターナ様のことでございましょうか」


『その通り。あれは、魔物暴走の起こった少し後の事であった……』


それから暫く、水龍様がその頃のことを話してくれたのだが、エスメターナ様は、この地方の領主の娘であったのだが、ある時、大規模な魔物暴走が起こり、鎮圧したのはいいが、両親が戦死してしまい、当時13才のお兄さん(初代国王陛下のことだ)が新たな領主となり、自分もその力になりたいと思ったそうだ。


で、当時精霊を見ることは出来ていたが、魔力が低いことから戦闘で役に立てないのが嫌で、精霊に相談したところ、水龍様に聞いてみたら?という話になり、危険を覚悟の上でここまでやって来たそうだ。


「それでは、エスメターナ様は、どのようにして強い魔力を持たれたのでしょうか?」


『それは、水の属性の力が蓄積した場所で修行したからだ』


どうもその際、水龍様が修行場所を教えたそうだ。この山の麓の村の近くにある洞窟の奥に泉があって、そこには数千年の間、水属性のエネルギーが蓄積されていたらしい。そこで修行をしたエスメターナ様は、大きな魔力を持つに至り、結果、精霊女王の加護を得た、ということだ。


現在そこは、知る人ぞ知る聖地となっていて、エスメターナ様を祀る祠が出来ているが、今そこで修行しても同等の効果は得られないらしい。別の蓄積場所で行うなら、可能ではあるそうだが。


「別の場所……ですか。その場所を教えて頂くわけには参りませんか?」


『それは出来ん。我も、あの時はまさかあそこまで力を持つことになるとは思わなかったのだ』


どうやら、エスメターナ様の時は、魔物暴走の被害で領内の戦力が減少したため、少しでも戦力を増強しようと思って教えたらしいが、それどころか国を統一してしまうほど強力になるとは思ってもみなかったそうだ。なので、よほどのことが無い限り、教えることは無い、と言われた。まあ、仕方がない。




単なる世間話のつもりだったのだが、思わぬ耳寄り情報を入手できた。さて、そろそろ時間かな。


「ご教授頂きたいことは限りなくございますが、残念なことに、そろそろお暇せねばなりません」


『そうであったな。久々に人と話したせいか、つい時を忘れてしまった』


「それでは、これにて御前失礼致します」


『うむ、壮健でな』


こうして、行きと同じく、猫神獣の案内で、鳥神獣に乗って、ドルネク市の入り口まで帰って来た。護衛達は、既に待機しており、私は猫神獣達にお礼を言って、屋敷に帰って来た。


なお、その後、お母様とビースレクナ侯爵一家に、水龍様との話を説明することになったが、まあ、今後魔物暴走関連で協力することになるので、一度会ってみたかったそうだ、と簡単に説明した。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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