表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/414

第056話 ビースレクナ領への招待 3

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

歓迎会も終わり、暫くして夕食となったのだが、その際、叔母様から


「フィリス、歓迎会も終わって領民も貴女の顔を覚えたし、明日辺りから暫くドルネク市を見て貰えないかしら。一日中見て回れとは言いませんから」


と言われた。確かにそのような話があってもおかしくない。ということで午前中に森に、午後にドルネク市を見て回ることになった。まあ、数日かければある程度は見られるだろう。


今日から暫くは森は午前中だけだから、集中しないとね。ということで、いよいよ魔物に試してみよう。


「今日からは、魔物が出やすい所へ行ってもらえませんか?」


「……ええ、可能ですよ。では、向かいます」


デリアスさんに案内され、魔物が出やすい場所にやって来た。また、今回は、魔物が出たら、出来る限り私の方に誘導してくれるように頼んだ。皆にいい顔はされなかったが、了承された。あと、念のため、風精霊にも、周囲を見張らせた。暫くすると、魔犬が現れた。


「お嬢様、そちらに誘導します!」


「有難う、レイテア。さあ、貴方が第1号ね………はっ!」


魔犬ならば、見慣れている。私に飛びかかってきたが、態勢を整え、魔犬の額に手を当てた瞬間


「ギャイン!」


と悲鳴を上げ、魔犬が吹き飛んだ。どうやら即死の様だ。


「ひえぇ……頭蓋が砕けていますね……流石お嬢様……と言って良いんですかね……」


護衛のリカルドが、魔犬を確認した。ちなみに魔犬は、特に役に立つ部位はないので、埋める。


その後も何体か魔犬が襲って来たので、土に還って貰った。




そんなことをやっていると、風精霊が警告した。


『愛し子よ、魔熊がやって来たぞ』


風精霊に礼を言って、皆に魔熊が近くにいることを告げた。


「皆は、魔熊を立ち上がらせて牽制して頂戴!私は背後に回り、背骨を砕きます」


暫くすると魔熊が襲って来た。私は一旦下がり、護衛達に牽制して貰う。槍を持った者達が魔熊に槍先を突き出すと、魔熊は立ち上がり、前足で攻撃し始めた。よし、身体強化して、高速で回り込んで……


「恨みはありませんが………はあっ!!」


骨が砕ける音と、断末魔が響き、魔熊は倒れた。


魔熊は、使える部位が多いので、業者に引き取ってもらうことになり、皆で馬車に乗せた。


「しかしお嬢様、こんなに外側が綺麗な死体など、めったにありませんよ。大抵は後ろ足を斧で攻撃したあと、槍で何度も刺しますからね。これは高値で売れますよ!」


デリアスさんから賞賛されながら、午前中の鍛錬を終了し、屋敷に戻った。




午後は、街の視察?だ。とりあえず午前中に倒した魔熊を業者に引き取って貰うことにした。


「これは……いったいどのように倒したのでしょうか?魔法でもなさそうですし」


あまりに綺麗な状態の死体を見て、業者も驚いている。ちなみに、交渉はデリアスさんに任せている。


「まあ、そこは導師様がちょっと、な。で、どうだ?買い取って貰えるか?」


「ええ、ええ、こんなに素晴らしい状態で引き取らせて頂けるなら、このくらいで如何でしょうか?」


「ふーむ、もう少し出せないか?恐らく暫くは、いい状態で卸せると思うからさ」


「そうですか!では……」


かなりの高値で引き取って貰えた。とりあえず、このお金をどうするかは叔父様に相談させて貰おう。その後は、とりあえず聖堂に行ってみたのだが、本堂に入ったら、そこにいた司教様に拝まれてしまった。いや、私神様じゃありませんから!


聖堂の近くには孤児院がある。修道者達が面倒を見ているのだ。ビースレクナでは、魔物の被害により、孤児となる子が多い。10才まではこちらで育てて貰い、それ以降は農場の小作人や店の丁稚、冒険者などになることが多いらしい。うちの領も、多くの戦災孤児が発生する所だったし、他人事ではない。


気になって子供達を見に行くと、流石に私の顔は知られていなかったのか、単なる貴族令嬢としか思われなかったようだが、修道女さんの「もしや、精霊導師様では!」という言葉で、ばれてしまった途端、皆平伏してしまった。いや、そこまで反応してくれなくてもいいですから!


ということで孤児達と少し話をした。親が死んでしまったのは寂しいが、同じ境遇の子が沢山いるので大丈夫だ、と言っていた。何だかんだと言って笑っていたのは、孤児院だけでなく、街全体で見守り育てているからなのかもしれない。




で、先程から、私より少し年下に見える子が、私の背後を眺めていた。これはアレか。この子は……火属性か。では、火精霊を手の平に乗せて、少女の目の前に出す。


「ねえ、貴女、これが見えるのかしら?」


「……っはいっ!導師様、貴女様の手の中に、精霊が見えます!」


「あら、それは良い事ですわね。貴女、精霊術士になってみては如何?」


「でも……精霊が見えるという証拠がないと無理だって」


「では、司教様に鑑定して頂いては?宜しければ、今から私が頼んでみましょうか?」


「是非お願いします!」


で、この子を連れて聖堂に行き、司教様に事情を話したところ、快く鑑定を行ってくれて、精霊が見えることが確定した。今8才らしいので、私の1年後くらいには、精霊課に入ることになるだろう。


その後は市場に行った。ビースレクナは、ファンデスラの森から色々変わった食材が手に入るので、他の領と違っていて、なかなか楽しい。しかしながら……私が見ていると「これを導師様に是非!」と色々下さるので、あまり良く見ることができなかった。善意なのだろうけど……もっと静かに見させて欲しいものだ。そのような感じで、慌ただしくドルネク市を見て回り、屋敷に戻った。


屋敷で叔父様やお母様と、魔物を倒した後、死体を引き取って貰った時のお金の使い道について、相談したが、お母様の


「貴族令嬢が魔物退治で儲けている、と言われるのは宜しくありませんので、寄付した方がいいでしょう」


という一言で、叔父様経由で孤児院に寄付することにした。




その後も2週間ほど、森で魔物と戦ったり、ドルネク市内を回ったりして過ごした。魔物はあれから何体も討伐した。魔熊は3体、魔猪は7体、魔狼は16体、魔犬は埋めたので数えていない。


魔猪は、木や岩により、一度足を止めた時に身体強化を使い高速で近寄り、脇腹に発勁(仮)を叩き込むと、恐らく内臓が破裂したのか、血を吐いて死んだ。魔狼は頭を狙ったり、何度か飛びかかって来るのを躱し、脇腹に発勁(仮)を叩き込んだりした。一番高かったのは魔熊だが、魔猪や魔狼も、それなりの値段で引き取って貰えた。魔猪は、案外美味しいらしく、魔狼は、毛皮が人気だそうだ。


街の方も、あれから職人街や、商工組合、冒険者組合などにも顔を出した。職人街ではお父様達にお土産を買ったり、森で取れる珍しい素材をどう使うのかなどを見た。商工組合や冒険者組合は、歓迎会にも来て貰ったので、顔を出してみようと思っただけなのだが、施設内を色々案内して貰い、勉強になった。


ただ、孤児院にお金を寄付した件だが……「匿名で」とお願いしたのだが、どこからか私が寄付したことが漏れて、魔物を退治し、得たお金を孤児院に寄付する心優しい方だ、という噂が立ってしまった。そういうつもりではなかったのだが……まあ悪い噂が流れるよりいいか。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ