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第053話 戦勝祝い及び披露会

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

戦勝祝い及び披露会当日となった。会場である王城へは、お兄様が学校を早退し、準備が完了してから移動した。私とお父様は、全員入場後に入場し、陛下以下、王家の方々がいる壇上へ上がり、紹介を受ける流れになっている。その際、私も一言言わなければならない。一応お父様と考えた内容を話すつもりだ。


私が一人で待機部屋にいると、オスクダリウス殿下がやって来た。礼をすると、殿下が話しかけて来た。


「何故精霊導師であることを黙っていた」


「陛下から、洗礼までは秘匿せよ、と命じられておりましたので。そのことはご存知では?」


「それでもだ!俺は王子だぞ?何故そんな重要なことを言わなかった」


意味が解らない。いくら殿下でも、陛下の命令には逆らえないのではないの?


「……それは……私より、陛下に直接お伺いした方が宜しいのでは?私には回答できかねます」


「お前もか……お前も俺を馬鹿にするのか?」


「そのような考えはございませんわ。……やはり、私ではなく、陛下とお話しされた方が宜しいのでは?」


駄々をこねているようにしか見えない殿下にどう対処して良いか判らなかった所に、ノックがあった。


「私はウィルディナルド・カレンステアだ。アルカドール嬢、誰かと言い争っているのか?」


「兄上?」


「王太子殿下、どうぞお入りください」


数か月前に立太子された、王太子殿下が入ってきた。とりあえず礼をする。


「オスカー、一体どうしたのだ?」


「兄上、俺は彼女を問いただしていたんだ」


「先ほどから、私が精霊導師であったことを秘匿していた件を、陛下の命によるものだと説明しても納得して頂けなくて、どう説明すればいいのか困っていたのです」


「オスカー、その件で彼女を責めるのは筋違いだ。お前が問うべきは陛下にだろう。立場が下の者には問いやすいからと言って甘えてはいけない。来なさい。アルカドール嬢、弟が失礼をした。では後程」


そう言って二人は出て行った。頼むから親子内での話を持ってくるのはやめてくれ。




意味不明のトラブルはあったが、暫く待っていると、侍女から呼ばれ、そのまま誘導され、お父様と合流して一緒に会場に入る。とは言っても、名目はエスコートではない。お父様は戦勝祝いの主役、私は披露会の主役だ。壇上で陛下に礼をする。


「皆の者、本日は良く集まってくれた。只今から、トロスの役に勝利した祝いと、約300年ぶりに誕生した精霊導師を披露する会を執り行う」


陛下が宣言すると、大きな拍手が起こった。その後は功績の紹介と、私の精霊導師としての立場などの説明があり、お父様や私の一言も終わり、祝宴が始まった。とはいえ、私は主役なので、当座は挨拶ばかりになるわけだ。


ということで、国内の主要な貴族と、参加している大使の方々とやっと挨拶を終えた。少々面倒だったのは、私が公爵相当の立場になったことだ。侯爵令嬢気分で、相手との関係を間違えないよう、かなり注意していた。それもようやく終わりだ。あっ、パットテルルロースさん発見。


「パットテルルロース様、お祝い有難うございました。今宜しいでしょうか」


「これは導師様、勿論宜しいですよ」


「はい、実はウォールレフテの皆様が、お元気にされていらっしゃるか、お伺いしたいと思いまして」


「なるほど、ええ、皆元気にしておりますよ」


「それは宜しゅうございました。あと、陛下には宜しくお伝え下さい。陛下に精霊のことを色々教わることが出来たからこそ、私は領民の命を救う事が出来たのです」


「兄も、貴女のお役に立てたことを喜ぶでしょう」


その後、向こうの状況を色々教えてもらって、パットテルルロースさんと別れた。




誰かが近づいて来た。立場が上の大司教台下だったので、一旦礼をする。


「導師殿、宜しいかな」


「これは大司教台下、此の度はお祝い頂き誠に有難く存じます」


「いえいえ、救国の英雄たる貴女に会えるならば、何を置いても伺いましょうぞ」


「英雄などと。私は単なる小娘でございますよ」


「貴女がただの小娘であるはずがございませぬ。貴女が精霊導師となられたのは、神の御意志でしょう。貴女がおられなければ、今頃は彼の国と本格的に争っていた所です。「無闇に争ってはならない」という神の教えを、貴女は立派に守られたのですよ」


「それは私を教え導く方々がいらっしゃったからですわ」


「それは素晴らしいことです。そして、貴女も今後は皆を導く立場となられるのです。もし、不安などを感じることがございましたら、いつでもお話し下され」


「ご厚情、誠に有難く存じます」


とりあえず話は終わったが、要はこれからも平和に生きろということだろうか?それには同意したい。




さて、挨拶は終わったし、話したい人達とも話せたので、家族の所に行こうか……としたところ


「おお、フィリストリア嬢、此の度は素晴らしいご活躍であったようだ」


と、クリフノルド・イストルカレン様が話しかけて来た。しかし、残念ながら今の私は公爵と同等の立場なので、たとえ公爵令息とはいえ、私から話しかけない限り、会話はできない筈。私は話したくないので、会釈して去ろうとしたのだが、何故か私の行く手をふさぎつつ


「おや、つれないですね。婚約者候補である私が話しかけているのに」


と、あくまで私に絡もうとする。だからあんたのやっていることは無作法な行為なんだが……。


「先ほどの、陛下のお言葉、良くご確認された方が宜しゅうございますよ。では」


私は去ろうとするが、イストルカレン様はなおも私を通してくれない。それどころか


「貴女こそ、少し皆が褒めるからといい気になって。立場をわきまえねばならないのでは?」


あかん、もうこいつにははっきり言ってやろう。


「先ほど陛下は、私を「公爵と同等」と仰ったのですよ?貴方はまだ爵位を継がれておりませんから、私の方が立場が上なのです。貴方の様な無作法者とは、話す口を持ちませんの。では」


と言って立ち去ろうとした所、イストルカレン様は逆上して


「この女!下手に出ればつけあがりやがって!」


襲い掛かってきた、のだが……


「クリフノルド殿、導師様の仰ることが正しい。貴方がわきまえるべきだ」


ヴェルドレイク様が横から入って止めてくれた。いや~ここで私が手を出したらまずそうだから、止めてくれて助かりました。有難うございます。




その後、騒ぎを起こしたイストルカレン様は、退場することとなり、何となく会場に帰り辛くなった私とヴェルドレイク様は、バルコニーの方で話していた。


「ヴェルドレイク様、先程は有難うございました。あの場ではなかなか手を出せませんので」


「いや、貴女の助けになることが出来て、こちらの方こそ光栄です」


「ヴェルドレイク様は、以前よりも頼もしい殿方になられたようですね」


「貴女の方こそ、以前にもましてお美しくなられた。今話しているだけで、息が止まりそうです」


口説き文句の様な気がするが、以前と違い、心地よいのは何故だろうか。




その後、雰囲気が落ち着いた頃に会場に戻り、ダンスを踊ったりした。結婚関連の問題が五月蠅くなるから、身内のお父様やお兄様と踊ったのだが……娘や妹と踊ってそんなに喜ばないで欲しいのですが。


こうして、多少の問題はあったが、戦勝祝いと披露会は終了した。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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