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第052話 変わりつつある立場

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

1週間後、お父様が帰って来た。現場での直接指示が必要な作業は終わったので、国境警備隊長達に指揮を任せて、陛下とほぼ直通で話ができ、転移門もある侯爵邸に帰って来たのだ。その日は、改めて無事に帰還したお祝いを開いてもらった。


次の日、お父様はマルダライク司令官達を連行して王都に行くことになった。ついでにお兄様も、入学のために移動することになった。私は、転移門の魔力要員として一緒に行った……つもりだったのだが、向こうに着くと、陛下への謁見が準備されていた。




今回の功労者としてお父様と一緒に来い、ということだそうだ。今からドレスを準備するのは面倒なので、一応準備していた導師服を着て、お父様とともに王城に向かった。謁見の間に入場し、陛下に挨拶をした。


「アルカドール侯爵、此度の戦、見事であった」


「お褒めの言葉を賜り、恐悦至極に存じます」


「フィリストリア嬢、そなたの働きも見事であったと聞く。敵司令官を捕縛したそうだな」


「私の如き若輩者にもお褒めの言葉を賜り、恐悦至極に存じます」


「本当ならば、そなたが精霊導師であることを公表するのは、洗礼の時だったのだがな。まあ、戦を長引かせぬためだ、仕方あるまい」


「陛下のご厚情、誠に有難き幸せに存じます」


「後日、戦勝祝いに併せ、そなたの精霊導師としての披露会を王城で開く。準備せよ」


「っ……拝命致しました」


早速面倒くさいことになってきたよ……。結局披露会とやらは1か月後になった。しかし、何で精霊導師であることを披露するのにも関わらず、ドレスを準備せねばならんのか。納得できん。しかも、外国の大使が参加するそうだ。更に面倒にしてどうするのか。放っておいて欲しい。


……と、愚痴を言っても始まらないので、準備はする。とりあえず、うちの家族は全員参加になる。お兄様は入学準備で王都に残ったが、お父様と私は領に帰った。そしてお母様とお祖父様にはお父様から説明があった……が、何故か二人とも快く了承した、というかお母様の場合


「フィリスの為に最高の盛装を作らないといけないわ!」


と言って、その為だけに私はお母様と一旦王都に転移して、ドレスを注文することになった。




勉強や鍛錬の合間に、披露会の参加者や大使について、陛下からのご厚情により情報を賜ったので、勉強させて頂いておりますよ。


今回の参加国は9か国。サウスエッド国、ヘイドバーク国、ネクディクト国、セントチェスト国、ウェルスーラ国、アブドーム国の6か国は、同じユートリア大陸の国だ。要は、ユートリア大陸にあるノスフェトゥス国以外の国が参加する。後はイオンステ大陸にあり、妖精族の国であるウォールレフテ国、メリゴート大陸にあるサザーメリド国、それと、ヴァルザー大陸を統一した、グラスリンド帝国。


サウスエッド国は、大陸南端に位置し、カラートアミ教本部があるクェイトアミ山と隣接している。産業は農業、商業が主体だが、地人族と呼ばれる種族の集落があり、工芸品も有名だ。


ヘイドバーク国は、大陸南部に位置し、クェイトアミ山と隣接している。農業主体の国だ。


ネクディクト国は、大陸中南部に位置し、大陸の流通路を抑えていることや、大陸の東西両側の海に面しているため、商業国家として栄えていて、イクスルード領が接している。


セントチェスト国は、大陸中部に位置し、地下資源が豊富な国で、ディクセント領が接している。


ウェルスーラ国は、大陸西部に位置し、多くの国と交易する海洋国家として有名だ。


アブドーム国は、大陸北西部に位置し、主に森林資源を活用して国家運営を行っていて、カウンタール領が接している。あと、ビースレクナ領なども接しているけど、境界付近には、魔物暴走多発地帯であるファンデスラの森が広がっているので、交流は殆ど無い。


サザーメリド国は、主に東公領の港と交易を行っている国だ。


グラスリンド帝国は、60年ほど前にヴァルザー大陸の4つの国が統合し、初代皇帝が即位したらしい。10年ほど前に即位した現皇帝は4代目だ。ただ、今でも旧国家の派閥は残っていて、権力争いが激しいそうだ。帝国との交易は、主に西公領の港で行われている関係上、西公との関係が深いそうだが、個人的には、あまり関わりたくない。権力争いに巻き込まれたくないし。


それらの国の現状や、参加される大使の情報について把握した。そういえば、パットテルルロースさんに会うのも久しぶりだ。ウォールレフテ国の現況も、また聞けるかもしれないな。


あと、大使ではないが、カラートアミ教ロイドステア国支部長、つまり大司教台下も披露会に参加されるらしい。精霊や精霊女王は神が生み出した存在だと知られているから、私が異端扱いされることはないと思うけど、どうも前世の記憶が宗教に忌避感を与えるんだよね……。まあ、神が実在すると認識されている世界の宗教だから、あんまり狂信的な人はいない、と思いたい……。




そういった勉強をしている間に、今度は精霊導師の地位などについて、ロイドステア国行政府、通称ステア政府から連絡があった。これは披露会の時に、正式に陛下からお達しがあるらしい。お父様と一緒に内容を確認する……精霊導師は、公式の場では、公爵と同等の扱いを受けるそうだ。お父様より偉いの?


「フィリス、これはお前の力を貴族他家に利用されないため、王家に次ぐ立場にするということだ」


つまり、権力を使って私を言いなりにして、精霊導師としての力を使われることがないように、との考えらしい。位置付は、即位しない王家男子が法服公爵になるようなものだそうだ。今だと、陛下の弟君が、法服公爵だ。外務大臣で、よく外遊されているので国内にいないことが多いが、それはともかく。


「精霊導師は、給金も発生するのですね……」


毎月、法服公爵と同等の給金が、商工組合の口座に入金されるそうだ。この世界は、商工組合が銀行の業務を行っているようだ。そういえば、私個人の口座はあったっけ?


「フィリスの口座は、既に作ってあるので、そこに入金するよう調整しよう」


「いつの間に……お父様、有難うございます」


しかしこうなると、今後はドレス代などは、自分のお金から出さないとね……。


で、私の勤務場所だが、洗礼までは基本的にここ、アルカドール領。それ以降は魔法省で勤務し、通常の精霊術士と同様に25才まで勤務することになる。これはいいのだが、精霊術士は精霊課付なのに対し、私は魔法省付。大臣直属ですか。しかも、陛下への単独での謁見申請や、貴族議会への随時参加も可能だそうで……。


「この辺りは、地位に付随するものだ。仕方がない」


そういうものですか。


あと、私の結婚の話だ。前に陛下から話された通り、協定に基づいた上で、王家とアルカドール家の合意の下で、相手が選定されるそうだ。これは仕方がない……と思ったら、お父様の機嫌が悪い。


「お父様、私はまだ、お父様のフィリスですよ」


と、手を取って甘えておいた。甘えられるうちが華だ。


そういえば、先日の戦の褒美として、ノスフェトゥス国からの賠償金がアルカドール領に下賜されるらしい。お父様は、今回の戦費や砦の補修費用などに充てるほか、領兵に分け与えるとともに、戦傷者への見舞金や、遺族への弔慰金にするそうだ。常に領民の事を考えるお父様が、私は大好きだ。




祝勝会及び披露会の前日となった。私はお父様、お母様、お祖父様、使用人や護衛とともに転移門で王都に転移した。その日はドレスを受け取ったりした。また、お兄様は既に魔法学校に入学していて、夕方に侯爵邸に戻ってきた。


「お兄様、お帰りなさいませ」


「フィリス、ただいま!ああ、やはりフィリスがいると嬉しいね!」


それほど期間が空いたわけではないが、環境の変化が大きかったのか、お兄様は私と会っただけで非常に喜んでくれた。ちなみに今日は、遅くなったがお兄様の12才の誕生日パーティーだ。おめでとう!


家族水入らずのパーティーの中で、当然ながらお兄様の学校の様子が話題になった。


「私に会う人はみんな、フィリスのことを聞いて来るんですよ」


お兄様、そんなに誇らしげに言わないで!恥ずかしいから!


「みんな噂で色々知っている様なんだけど、実物はもっと凄いって言っておいたよ」


何が凄いんですか?!確かに精霊導師は凄いのかもしれないけど!


「フィリスが氷魔法を使うことを疑っていた者がいたから、少し凍らせて驚かせてみたよ」


それは傷害罪に該当しないのですか?あと、私の事になると、人に冷たく当たるのはやめて下さい。


「フィリスを絵に描きたい、と言っていた人が沢山いたけど、全て断っておいたよ」


それは気持ち悪いので断って頂けたのは有難いのですが、何でそんな人が沢山いるのでしょうか!


「だって、フィリスの美しさが、絵に表せるわけないからね」


お兄様、口説き文句の様な言葉を妹に言わないで下さい!


お兄様の誕生日パーティーなのに、何故私が羞恥プレイを受ける羽目になるのか。


……でも、やっぱり、家族で食べる食事は、美味しい。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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