第049話 ノスフェトゥス軍との戦い 2
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お父様は家族全員を執務室に呼んだ。暫くして、お母様とお祖父様、お兄様が執務室に入って来る。
「クリス、話は聞いているわ。砦に行くのね」
「ああ、明日ここを発つ。そして、この戦いに、フィリスも参加させる」
皆驚いた表情でお父様と私を見た。私は言った。
「私が自分の意志で決めたことです。アルカドール家の者として、精霊導師として。通常であればともかく、今は疫病が収まっておりません。私が参戦する以外に、領民を守る方策はございません」
「フィリスが参加するなら私も参加します!」
「カイ、お前はならん。お前は、もしもの時の為、こちらに残れ」
「……はい」
お兄様はお父様の身に何かあった場合、アルカドール家を継ぐ。私とでは立場が違う。お兄様は、その事を十分に理解している。
「お兄様、お父様や私を見守っていて下さい。それだけで励まされますわ」
お兄様は泣きそうな顔で頷いてくれた。
「フィリス、必ず帰って来るんじゃぞ」
「フィリス、私は貴女を戦場に送るために育てたのではありません。幸せになって貰うために育てたのよ。だから、必ず、帰って来てね」
「……分かりました」
お父様は、家の者全員に直ちに集合するよう、家令のハルワナードに命じた。暫くすると、1階のホールに全員が集まった。お父様は階段の踊り場から皆に告げた。
「皆、聞け。先程、我が領にノスフェトゥスが攻め込んで来るという情報が入った。私は明日トロス砦へ発ち、領軍の指揮を執る。私が不在の間、父上とエヴァにこちらを任せる。父上、宜しいか」
「当主殿、承った」
「また、此度の戦いにはフィリストリアを同行させる。皆には黙っていたが、フィリストリアは……精霊女王の加護を得た、精霊導師だ。戦いを必ず勝利に導いてくれるだろう」
殆どの人達は事情を知らなかったため、驚いていた様だが、言葉の意味を悟ったのか、静まり返った。
「必ず、勝利してみせますので、皆、安心して頂戴」
私が自信に満ちた顔で言うと、皆少しは安心したようだ。
その後、明日出発する準備をした。お父様と私だけではなく、護衛も当然行く。とは言っても移動手段は早馬だから必要最小限、オクター・ファンケル、リカルド・エイシブ、そしてレイテア・メリークスの3名だ。私は馬に乗れないので身体強化で走ることになった。
翌日早朝から北東街道沿いに移動し、途中の町にある領兵駐屯所で仮眠をとるとともに馬を交換し、1日と数時間でトロス砦に到着することができた。私達より前に出発していた騎兵隊は、少し前に到着したらしい。歩兵隊は、途中で追い抜いた。
お父様と私は、現在状況確認中の国境警備隊長と領軍部隊長の所へ赴いた。
「今到着した。2人とも御苦労」
「領主様、現在異状ありません、……が、お嬢様が何故ここに?」
「詳細は後から説明するが、我が娘も戦いに参加させる。状況を報告せよ」
2人とも私がいることにとまどっていた様だが、お父様に状況を報告し始めた。
現在、砦の勢力は、国境警備隊984名と、領軍増援部隊508名。警備隊は歩兵中心で、増援部隊は騎兵だ。これに私達を加えると総勢1498名になる。兵糧や水は、後方が遮断されていないので、問題ないようだ。
敵については斥候の報告によると、先遣部隊約3000が明日には砦近くに到着し、本隊約17000が明日の夜以降到着するようだ。隊長達は、明後日攻撃するだろうと言っていた。現在は武器の手入れや確認、篭城の準備を整えているところだという。
騎兵が乗って来た馬の多くは、砦を守るのには不要なので、現在後方の町に下げている。また、明日の夜は先遣部隊などによる小規模の夜戦を想定しているそうだ。私達が追い抜いた歩兵隊約5000名は、通常だと到着は3日後のところ、急がせているため2日半後には到着するそうだ。
少なくともそれまではこの砦を守り、敵を通過させないように行動しなければならないことになるが、10倍以上の兵力差では、難しい筈だ。防衛するには戦力が不足しているので、直ちに援軍を要請するべきだ、とも言われた。
アルカドール領に一番近い国軍の駐屯地は隣領のトリセントにあり、既に援軍を要請しているが、基本的に歩兵なので、現状では当座の戦力加入は、やはり困難らしい。お父様は、それらの報告を聞いた後、私がここにいる理由を説明した。
「何と……お嬢様が、精霊導師……?」
「……確かに、そうであるならば、この兵力差でも十分に勝ち目がありますが……」
二人はあまり納得していない様子だったが、今後の戦い方について、会議を始めた。
当座の戦い方についての構想、部隊の細部行動を詰めた後、夜になったので、食事をとった後休むことになった。私はお父様の隣の部屋だ。レイテアも同部屋で待機している。休んでいると、隣でお父様と誰かが言い争う声が聞こえた。
暗殺者か何かかもしれないので、私は念のため、精霊と感覚共有し、隣を確認した。敵ではなく、お父様と領軍増援部隊長が話をしていたようなので戻ろうとしたのだが、つい話が聞こえてしまった。
「何故お嬢様を戦場に連れて来たのです!いくら精霊導師だと言ってもあんまりではありませんか!」
「私とて反対した。しかし娘は、アルカドール家の者として、領民を守りたいと言っていた。年齢や性別など関係ない。私は、領主として、その思いに応えたのだ」
「それでも、私はあのような少女を戦わせるのは……領主様も、お嬢様を目に入れても痛くないほど可愛がっていたではありませんか」
「そういえばお前にも同じくらいの年頃の娘がいたな。娘を心配してくれて有難う。だが、貴族として生まれたからには、持てる力を領民の命を守るために使わねばならん。娘は、それを解っておるのだ。……もし、娘に何かあったなら、その場で神の御許に行き、裁きを受けよう」
「領主様…………分かりました」
話は終わり、部隊長は部屋を出た。
お父様、そのように考えていたのか……だけど、私は、お父様を死なせたりはしない。
次の日、お父様の訓示と、私の紹介があった。皆半信半疑だったようだが、同化して上空に竜巻を作ると、信じてくれたようで、士気が上がったようだ。
その後、私は夜戦に参加するため、打ち合わせをした後仮眠をとった。念のため、レイテアとリカルドが交互に護衛をしてくれていたので、安心して眠れた。
夜になり、レイテアが私を起こしに来たので、砦の上に移動した。風精霊と感覚共有し、辺りを探ってみると、5個の小規模部隊が森を移動していた。私は感覚共有を終了し、地精霊と和合した。
【我が魂の同胞たる地精霊よ。我と共に在れ】
地精霊と和合した時は、半径2キート程度であれば、地面の状態が解る。範囲内に踏み込まれることはもとより、揺れなどで音も拾えるから、直接見なくても位置は把握できるのだ。そして彼らの足元に、5クール程の深さの穴を作った。
「うわっ、何だぁーーっ」
「突然地面に穴が!おい、大丈夫か?……くそ、駄目だ」
「敵魔法士が近くにいるぞ!探せ!」
残った敵兵達の足元にも、次々と穴を作る。
「ぎゃあっ、馬鹿なぁーーっ」
「退却、退却だー!」
殆どの敵兵が穴に落ちて戦闘不能になり、僅かに残った者は退却したようだ。
退却を確認した後、私は穴の位置を教え、穴を底上げして元の状態に戻し、和合を解いた。領兵が、穴を作った位置に向かった。生存者を捕虜にして、情報を聞き出すためだ。
夜戦は終了し、私は少し仮眠を取り、明朝の戦闘に備えた。
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(石は移動しました)




