第046話 優れものの服を頂いた
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閉会式等が終了し、侯爵邸に戻ったその日は、家の皆がレイテアを讃えた後、疲労回復の為、休んでもらった。次の日、レイテアのお父さんやビースレクナ侯爵家の方々も参加し、ささやかながらお祝いの昼食会が催された。ミリナなどは、レイテアにサインをねだっていた。この世界にもそういう風習あるのね。
そして、収穫祭も終了した次の日、転移門で領地に帰った。お父様に優勝を報告したレイテアは、お褒めの言葉を頂いたようだ。あと、お父様からは、スカウトなどが来た場合は相談してくれと言われたようだが、レイテアは、うちを出るつもりは当分ないので護衛を続けさせて下さい、とお父様にお願いした様だ。
暫くの間、行く先々でレイテアの武術大会優勝の件について話題に上がり、その都度祝福の言葉やレイテアとの握手、時にはサインなどが求められたのは仕方のないことだろう。
通常の生活に戻ったある日、以前私を精霊女王の元へ連れて行った執事風精霊が私の所へ来た。
「あら、お久しゅうございます。何用でしょうか」
『フィリストリア様、実はフィリストリア様用の服が完成しまして、お呼びに参った次第です』
ああ、あれね。恐らく今後の活動に必要となる物なので、貰わないとな。……書置きしておくか。
書置きをした後、精霊界に転移し、女王様の謁見の間……ではなく居間の様な部屋に案内された。
『久しいの』
「お久しゅうございます。女王様におかれましては……」
『堅苦しいのは良い。先日言っておった服が出来たので、受け取れ』
「有難き幸せに存じます」
その後は執事風精霊に案内され、衣裳部屋のような所に来た。メイド水精霊が服を持ってやって来た。
『一度試着をお願いします。……手伝って差し上げなさい』
そう言って執事風精霊は一旦部屋を出た。精霊に性別は無いが、確かに気分が良いものではない。メイドは仕方ないか。では部屋着を脱いで、えーと、……面倒なので、導師服と呼ぼう……は、着てみると、ウォールレフテ国で妖精族が着ていた服とそっくりだ。ただ、何かしらの力は感じる。
ちなみに服だけではなく靴や下着もある。靴は編み上げ式のブーツだ。服と靴の色は白で統一されている。サイズもぴったりだ……なぜ知っているのかは聞かない方が幸せな気がするな、うん。サイズが合わなくなったらその辺りの精霊に言えば、直しに来るそうだ。私もまだまだ大きくなるし、何度もお世話になりそうだ。
その後、一度女王様に導師服を着た所を見せに行くと
『ほう、やはり何を着ても可愛らしいの』
「お褒めに与り、誠に有難く存じます」
実は女王様は、私を可愛いと認識していたのか。まあ、人間の私から見て、女王様は美人だし、美的感覚はさほど変わらないのかな。
『その服は、そ奴らが四龍のたてがみから作った。我の服も作らせておる故、腕は確かよ』
女王様が指し示す方には、四体の精霊がいた。こういう精霊達もいるのね。会釈して来たので、感謝の意を伝える。
『後は……任せた』
『承知しました。フィリストリア様、私がその服の詳細を説明致します』
後は執事風精霊が色々教えてくれるようだ。
『この服は、基本的に燃えません。また、水を吸収することもなく、汚れも付きにくくなっています』
「それは素晴らしいですわね。状態の変化が少ないのは有難いですわ」
『また、切れにくく、受けた衝撃を殆ど吸収します』
「それは……どのようにお作りになったのでしょうか?」
『最初に四龍様から取る所がまず大変で、たてがみに含まれる属性の力を吸収して貰いました。そうすることで、強度が下がるのです。その後素早く刈り取らせて貰いました。その後、服に加工し、我々が属性の力を含ませ、強度を元に戻したのです』
なるほど、属性のエネルギーが含まれた状態だと、非常に強靭になるのか。
『この服は強靭なだけではございません。着用者の生命維持を助ける力も備えております。酷暑地や寒冷地でも、体温を保てるようになっておりますし、生命活動を阻害する物質、所謂毒については、体内への流入を自動的に防ぎます。また、着用者が魔力を込めることで、着用者と服を浄化する機能もございます』
「それは……至れり尽くせりですわね。それらの機能一つとっても、人間には作り出せない品ですわ。特に毒を防ぐなど、国宝級と言えるでしょうに……。しかし何故、そこまでの力を服に持たせたのでしょうか?」
『以前女王様に加護を賜ったエスメターナ様は、それゆえ多くの人間に狙われておりました。それを知った女王様が、この服をお与えになったのです。フィリストリア様も、お気を付けなさいませ』
「……お心遣い、誠に感謝します」
その後、再び女王様の所へ戻り、再度お礼を言った後、転移で部屋に送って貰った。丁度部屋に入ってきた風精霊が突然平伏していた。フライング土下座?
お父様達にも、今回の件は話しておいた。でないと、仕事の時とか心配されそうだしね。
今回、導師服を貰ったことで、改めて精霊導師が危険な立場であることを認識した。危ない場所に行く時は、必ず導師服を着て行こう。女王様や作った精霊達にはお礼を伝えたが……。
龍……魔物を監視し、危機を人間に知らせる神獣の長。本を読んだ限りでは、地球において想像上の存在であった龍に似ていたので、私はこちらの存在も龍と呼んでいる。何かしら関係があるかもしれないが、その辺は判らない。実物には、これまで会ったことは無いが、いつか会うかもしれないので、その時はお礼を言おう。
後日、訓練場に行き、導師服の性能確認のため、火精霊との同化と和合を行うことにした。一応、レイテアには、替えの服を持って来て貰っている。まずは同化で様子を見た。念のため言葉を唱えておこう。
【我が魂の同胞たる火精霊よ。我の左手に宿れ】
左手に火精霊が宿り、熱を帯びるが、導師服は全く燃えない。よし、一旦解除して、次は和合だ。
【我が魂の同胞たる火精霊よ。我と共に在れ】
火精霊と和合し、髪の色が赤くなるが、やはり導師服は燃えない。凄い。ついでに、体を動かしたり、火の力を使ったりしてみよう。ただ、周りに気を付けないとな……。お、岩発見。うりゃーっ。
ふむ、岩が簡単に砕けた。身体強化もいい感じだな。次は……道路に大きい水たまり発見。うりゃーっ!
すぐに水たまりの水は蒸発した。とりあえずはこんな所かな。和合を解いた。
しかし……全種類の精霊と和合してみて思ったのは、和合の際は私の性格が少々変わるようだ。精霊に影響されているわけだ。具体的には、火だと攻撃的に、風だと活動的に、水だと冷静に、地だと大らかになる感じだ。まあ、気を付ければ外には出ないが、それに反する行動を続けるとストレスが溜まりそうだ。早目に知っておいて良かったよ。
あと、最近気付いたことがある。精霊導師としての力を使い始めてから、合気道の技について、型がこうだからこう動く、という感じではなく、流れに乗って動いている感じが強まっているのだ。世界に馴染んできた、と言うべきなのだろうか。
理屈は解らないが、精霊は世界の理に関わっているわけだから、そのような効果があっても不思議ではない。そういう意味では、この世界で合気道を極めるためには、精霊への理解を深めることも必要なのかもしれない。
魔力操作などもそうだが、直接的な鍛錬以外でもやり方次第で合気道の練度を向上させることが出来るわけだ。今後は鍛錬の時間があまり取れなくなるだろうから、様々なことを練度向上に繋げていこう。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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(石は移動しました)




