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第042話 ロイドステア国 某伯爵令嬢視点

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

私はロイドステア国という、それなりに発展した平和な国の領主の娘として生まれました。うちの領地は特に経営は問題ありませんが、これと言った特産品もなく、こういっては何ですが平々凡々です。しかし、両親や兄弟も健康で仲も良好ですし、私としては今の所不満はありません。


4才頃になると、貴族令嬢としての各種教育が開始され、忙しくなりました。当初は文句ばかり言っていましたが、成長するにつれて、それは私の立場では当たり前の事であり、両親からの愛情でもあるのだと理解しました。


私は基本的に見目の良い貴族の中では平凡な容姿ですが、きちんとした教養や礼儀作法を身に付ければ、相応の方に嫁ぐことができるのです。このため、私なりに頑張って教育を受け、それなりに身に付けることができたと思います。


また、貴族として生きるためには、弱味を見せてはならず、そのため感情を表に出さないように心がけ、様々な情報を入手して利用しなければなりません。令嬢の場合、特に茶会や夜会などの場がその主体となります。私は、母をはじめとした領地の貴族女性から、そういった社交術をはじめ、多くの事を学んでいるところです。




そのような中、第3王子のオスクダリウス殿下が、国内の主要貴族、つまり各領主の子女達を集めて交流会を開く、という話を、領主である父から伺いました。何でも、我が国では恒例行事で、殿下の側近や婚約者を選考するために開くものだそうです。


私が殿下に見初められる可能性は殆どないと思っておりますが、この場には同年代の貴族令息も集まるわけですから、利用しない手はありません。素敵な殿方と出会う為に頑張らねば!


こうして両親のご指導の元、交流会準備が始まりました。当日の気候に合わせた衣装の準備、余裕のある移動計画等々。中でも重要なのは、各参加者の情報を覚え込むことです。殿下をはじめとして、参加される方々の名前、年齢、家族構成、領地の状況や各領主家との関係など、事前に入手できる情報は可能な限り把握いたしました。派閥についても把握はいたしましたが、うちは容認派なので、そこまで他領と対立していないそうで、今回はあまり気にしなくて良い、と父からは言われました。


ただ、情報は覚えるだけではなく、分析しないと意味を成しません。今回の私の目的は、旦那様探しなので、目ぼしい方を把握するとともに、競争相手となる令嬢を知っておくことが重要でしょう。


まず、オスクダリウス殿下ですが、私と同い年の9才で、私も婚約者候補と言えばそうなるのでしょうが、噂では、セントラカレン公爵令嬢と仲が良いそうです。これが本当なら、やはり殿下に見初められるのは諦めた方がいいでしょう。公爵令嬢とでは家格が違い過ぎて、対抗できそうにありませんから。


そういう意味では、イストルカレン公爵令息も参加されるようですが、家格が釣り合いませんから、望み薄です。私の場合、侯爵・伯爵令息が家格的に問題無さそうですので、その方向で検討しましょう。


侯爵令息の中では、一番条件が良さそうなのは、アルカドール侯爵令息でしょうか。年は10才、噂では真面目な人柄で、剣術にも魔法にも優れ、更に遠視の恩寵も賜ったそうで、将来性は抜群です。多くの令嬢方も、彼を狙うのではないでしょうか。


その他ですとカウンタール侯爵令息。年は10才。噂では頭が良く、魔法に非常に長けているということですが、それを鼻に掛けているといいます。私とは合わなさそうな気がしますね。


あとはイクスルード侯爵令息ですが、彼は私より年下ですので、よほど相性が合わない限り、難しいでしょう。その他、伯爵令息のうち何人かにも、目星を付けました。




競争相手である令嬢ですが……まず、セントラカレン公爵令嬢は、噂が本当なら、殿下のお相手になりますので、除外しても良いでしょう。


ウェルスカレン公爵令嬢姉妹は、第2王子殿下が臣籍降下される線が濃厚ですので、殿下でなく他の貴族令息達を狙っている可能性が高く、危険な存在と言えます。ただ、姉君の方は11才ですし、交流会の参加者ではお相手を探すのは難しいでしょうから、探すとすれば妹君の方なのでしょうが、まだまだお子様のようですので、そこまで危険ではないかもしれません。


今回一番危険なのが、色々と噂になっている、アルカドール侯爵令嬢でしょう。何と言っても陛下に「アルフラミスの蕾」と褒められた方ですから。本来アルフラミスの花は、美しく高貴な存在、つまり美しい王妃や王女を讃える時に使われていたのですが、とある事情で「王すら手にすることのない至上の美」を意味するようにもなったのです。


その謁見の場にたまたまいた父は、令嬢の美しさに見惚れていた時に、陛下のその言葉を聞いて、気が動転してしまったそうです。また、アルカドール侯爵が娘を王家に嫁がせるために謁見させた、という噂もあります。もし彼女が殿下に見初められた場合、色々な前提が覆される可能性があります。


また、そのような令嬢を、参加される令息達が放っておく筈がないと思われます。特に、公爵家や侯爵家の方は、婚約の打診をしているようですから。ただ、人気が高いであろう、アルカドール侯爵令息がその対象外なのが不幸中の幸い、といった所です。


その他、ビースレクナ侯爵令嬢や、私を含む参加する伯爵令嬢は、私と同じ目的であるならば、アルカドール侯爵令嬢の一挙手一投足に振り回される筈で、そういう意味では有象無象でしかありません。今回の交流会は殿下のためのものですが、ある意味今回の主役は、アルカドール侯爵令嬢と言えるでしょう。




交流会当日となり、まず伯爵家子女が入場しました。流石に皆様、気合が入っているようです。何人かが早速会話を始めておりましたが、私は様子を窺っていました。暫くすると、侯爵家子女が入場してきました。


まず私は、アルカドール侯爵令息を探し、発見しました。整った容姿、白金色の艶のある髪、澄んだ水色の瞳。同年代の男子よりも体格も良く、やはり狙うならこの方だわ、と思いました……隣の方を見るまでは。


当然、隣にいたのは、妹君であるアルカドール侯爵令嬢なのですが、噂以上に美しく、また、所作も私より年下とは思えない優雅さで、暫く見惚れてしまいました。気が付くと、私の周囲の方も同様の反応だったようです。


私は、アルカドール侯爵令息に話しかけるのはやめました。何故なら、近くにいる妹君と比較されるからです。勝ち目のない戦いに臨むのは、愚かであると言わざるを得ません。


そう考えているうちに、公爵家子女が入場し、その後殿下が入場して開始の挨拶をされた後、殿下への挨拶が始まりました。当然公爵家、侯爵家、伯爵家の順です。同格であれば、概ね年齢順だそうです。私は伯爵組の中程に並びました。


並ぶ前に様子を見ておりますと、セントラカレン公爵令嬢と話される時は、殿下は微笑んでいらっしゃいました。やはり彼女をお気に召しているようです。ただ、アルカドール侯爵令息達が挨拶された時に、一瞬見惚れていたようでしたので、やはり彼女は危険だと感じました。


伯爵組が漸く挨拶が終了した頃、公爵・侯爵家の方々は、互いに挨拶を終えたようでした。伯爵家子女は、付き合いのある家に挨拶するだけで良いので、私も早く所要の挨拶を済ませ、目を付けていた伯爵令息に話しかけてみよう……としていた所、アルカドール侯爵令嬢周辺で何かがあったようです。


どうやら、彼女の婚約者候補達が、魔法で優劣を競い合うそうです。こういうことも想定して、魔法練習用の施設を会場の隣に設置したのでしょう。的が5つ、等間隔で並んでいます。私の他の方々も、この騒ぎに気付いたようです。会話も止まり、彼らに注目しています。


3つの的に、それぞれ魔法が放たれました。見た限り、カウンタール侯爵令息らしき方の魔法が一番素晴らしいと思いました……が、続いて、アルカドール侯爵令嬢が魔法を使ったのですが、驚く事に、魔法で槍状の氷を5つ作り、的に放ったのです。目にも止まらぬ速度で飛んだ氷槍は、轟音とともに、全ての的を破壊してしまいました。余りの出来事に、私は非常に混乱していました。



あれ?彼女って水属性だっけ?違う、全属性だからどの属性でも使えるのよ、でも氷魔法は違うでしょ!水を氷にするのはとても難しいって聞いてるんだけど!何であの子そんなことが出来るの?しかも何あれ?的全てを平然と壊してるんだけど!あの的って、魔法兵団の人達が寄ってたかって攻撃でもしない限り壊れないんじゃなかったっけ?なんなのあの子一体!



……考えがまとまらず、動きが停止していた私達が再び動いたのは、殿下の「歓談を続けてくれ」という言葉が聞こえたからでした。流石に皆様貴族の一員、平静を取り戻したようです。しかし、内心、恐怖に震えていたのは、私だけではないでしょう。何故なら、その件以降、アルカドール侯爵令嬢の周りには殆ど人が近寄らず、また、微笑みかけられると、硬直した挙句に立ち去ってしまうのですから。


その後暫くして、殿下と希望者が剣で対戦を始めました。これはなかなか見応えがあり、先程の雰囲気も消えてしまいました。特に良かったのは、最後の殿下とアルカドール侯爵令息の対戦です。最後は年長者故か、アルカドール侯爵令息が勝利しましたが、いいものを見させて頂きました。




このような感じで、交流会は終了しました。私自身は大して令息達と仲良くなれませんでしたので、あまり成果は無かったのですが、生の情報を入手できたのは、今後の為にも良かったのではないかと思います。


特に、フィリストリア・アルカドール侯爵令嬢については、今後も注目せざるを得ないと理解しました。あの方は私達にとり、大きな影響を及ぼす存在なのでしょうから。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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