第041話 第3王子の交流会 2
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現在、殿下への挨拶をしているのは伯爵家の方々だが、そろそろ終わりそうだ……と考えていると、またイストルカレン様が私の所へやって来た。面倒な。
「フィリストリア嬢、俺達も婚約者として、互いの事をもっと深く知ろうではないか」
「先ほど申し上げましたが、決定していない事項を決定したかのようにお話しするのはお止め下さい」
こいつはあかん奴だ。早い所何とかせねば……と思いながら聞いていたら
「それは聞き捨てなりませんな。フィリストリア嬢は当家が貰い受ける」
「俺の家も申し出ているんでな。参戦させてもらうぜ」
と、何故か2名増えた。訝しがっていると
「お初にお目にかかります。私はライスベルト・カウンタール。貴女の婚約者候補ですよ」
「俺はダリムハイト・イクスルード。親が決めた婚約者が、こんな可愛い娘なら大歓迎だぜ」
と、一応自己紹介をして頂いた。こいつらどうしようかと様子を窺っていたが
「それでは、誰が一番フィリストリア嬢に相応しいか決めようではないか。そうだな、魔法はどうだ」
と、何故か設置されていた魔法投射用の的を見ながらイストルカレン様が言った。すると
「望むところです。私が一番優れているところをフィリストリア嬢にご覧に入れましょう」
「ちっ、魔法は苦手なんだよな。後から剣でも勝負しようぜ」
という反応が2人からあり、とりあえず隣接した魔法練習場?へ移動した。皆の視線が痛い……。
「俺から行くぞ!…………………………はぁっ!」
拳程の火属性の力の塊が的に向かい、当たった……が、アンダラット法を習得してない様で、発動が遅い。
「次は俺だ!……どりゃあ!」
地面から土の塊が浮かび、的に向かい飛んだが、外れた。だが、アンダラット法は習得している様だ。
「では私も……はぁっ!」
人の頭くらいの大きさの水球が高速で的の中央に当たった。アンダラット法も習得済みの様だ。
「ふっ、私の勝ちの様ですね」
お兄様が対抗しようと出ていくのを止め、私が前に出た。鬱陶しいから、力を見せてお引き取り願おう。ある程度は実力を見せて良いと、お父様からも許可は出ている。あれでもやってみようか。
「皆様、素晴らしいお手前でしたわ。ですが……」
右手を上げ、的の数、5つ分の水の塊を瞬時に頭上に作り、更に固体の分子構造をイメージして氷の投槍に成型して、砲弾の様に放つ。皆中し、激しい音がして的は全て破壊された。
「この程度は見せて頂きませんと、父に紹介できませんわ」
と3人の方を見て言ったのだが……よほど驚いたのか、3人とも放心していた。……会場も静まり返ってしまった。流石にこの雰囲気はまずいので、事態を回収すべく、私は殿下の所へ歩いて行き、深く礼をして謝罪した。
「殿下、御歓談中の所お騒がせして申し訳ございません。御歓談を続けて頂きたく、お願い申し上げます」
殿下も、私の意図を察したのか、歓談を続けてくれ、と仰ったので、会場は元に戻った。3人のうち、イストルカレン様とイクスルード様は我に返り、すごすごと会場に戻ったが、カウンタール様は、何故かその場で魔法の練習をし始めた。悔しかったのかな。
その後、周囲の人の多くは、私を遠巻きに見ていたが、微笑みかけると驚いて去っていった。まあ、静かになって良かったと、お兄様と一緒に軽食をつまんでいると、従姉殿がやって来た。
「フィリス、貴女外見だけでなく、魔法も凄いのね、驚いたわ。しかも氷魔法を使うなんて。水属性の魔導師でも、使える方は殆どいないのに」
この世界の常識では、私がやったような水の分子構造のイメージができないらしく、氷魔法を使える人は、殆どいないそうだ。それを知っていて、敢えて氷の槍を放ったのだ。こちらにも牙があることを認識させなければ、いつまでも変な輩に集られてしまう。少々やり過ぎたかもしれないが。
「そもそもあの的は魔法銀製で、魔法での破壊は困難な代物よ。あの威力なら、魔熊でも余裕だわ」
何、あの的、そんなに高価なものだったの?!後から請求書来たらどうしよう……。
そんなことを考えながらミリナと話していると、殿下が何かを言い出した。どうやら、希望者を募って剣で対戦をするようだ。確か殿下は剣術が得意だそうだし、この交流会は側近を選ぶための物でもあるので、当初から行うつもりだったのかもしれない。
参加者は、殿下、イストルカレン様、イクスルード様、お兄様、伯爵家の方4名の計8名で、勝ち抜き戦を行うことになった。私は、ミリナやアレクと、観戦することにした。見た限りでは、お兄様が一番強そうだった。年長というのもあるが、体操などでしっかり体調管理した上で、鍛錬に励んだからだろう。
殿下は、危なげなく勝ち進んだ。イストルカレン様は、最初にあっさり某伯爵令息に負けた。イクスルード様は、最初にお兄様と当たって負けた。お兄様は、そのまま勝ち進み、決勝で殿下と対戦した。
殿下も結構強かったけれど、予想通りお兄様が勝った。殿下は
「お前が次期侯爵でなかったら絶対に側近にしていたのに」
と残念がっていた。
私の方は、そんなお兄様達を見ながら、世間話もしていたのだが、その際、去年レイテアが武術大会で活躍したことが話題に出た。女性が武術大会で活躍したことは、自身も剣術を学んでいるミリナには嬉しいことだったようで、レイテアが私の専属護衛であり、そこで待機していることを告げると
「フィリス、是非会わせて頂戴!できれば対戦させて!」
とのたまった。貴女、今ドレス着てるじゃない。
「帰りしなに場を設けますので。でも、対戦は日を改めて下さい」
と言った。ミリナは数日間王都にいるそうで、明日にでもうちに来るそうだ。まあそれならいいかな。
「ミリナ姉様、実はフィリス姉様は剣も凄いですよ。多分カイ兄様よりも強いです」
と、アレクがミリナに情報を漏洩していた。いや、武術の件は言おうとしていたので、別にいいけど。
「フィリス……貴女、ただでさえそんなに美しいのに、魔法も剣も凄いなんて、どれだけ才能を独り占めしているのよ」
と、文句を言われたが、正直返す言葉もないので、苦笑いしていた。
そういえば、この中には精霊が見える人がいるのか気になったので、各属性の精霊に会場内を回って貰った。そうすると、1人の令嬢が挙動不審になった。どこかの伯爵令嬢だと思うが、挨拶をしていないので分からない。風属性であることは分かったが。まあ、あまり関わると、こちらの事も把握される可能性があるので、近づかない様にしよう。
案外楽しかった交流会も、時間が来たのでお開きになった。約束通り、ミリナには帰りしなにレイテアと会ってもらった。ミリナは感激していたが、突然現れたファンに、レイテアは恐縮していた。
お父様は、陛下に謁見したり、知人に会うため、6日程こちらにいるので、私達もそれに合わせて王都に滞在した。ということで、交流会が終わると基本的に暇だったのだが、ミリナやアレクが遊びに来たり、その際にレイテアも呼んで、剣で対戦したりした。
アレクは剣術を漸く習い始めたところだそうで、軽く対戦してみたが、中々筋が良かった。私の教えたトレーニングなどでしっかり体を作っていたからかもしれない。褒めると、とても嬉しそうにしていた。
ミリナやアレクは、数日後に自領へ帰っていったが、ミリナが今度ビースレクナ領に遊びに来てね、と言っていたので、いつか機会を作って行きたいと思う。私の方は、それ以降も数日王都にいたので、お母様やお祖父様、パティ達にお土産を買ったり、護衛達と鍛錬をしたりして過ごした。
なお、私が交流会の際壊した魔法投射用の的は、魔法兵団の備品だったのだが、使用申請をしていたのは王家なので、お咎め自体は無く、普通に不用決定がなされ、更新されるようだ。ただ、誰が壊したのかは話題になったらしい。それが私だということが複数証言者から明らかになると、私を魔法兵団にスカウトしようという話が出たらしいが、お父様が即断ったそうだ。お父様有難う。
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(石は移動しました)