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第406話 魔王との戦い 決着

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

まずは、襲い掛かって来た魔王に対し、右肘を極めつつ投げることで関節破壊を行い、その修復のために魔王が一旦間合いをとった所を見計らい、周囲の水と水属性のエネルギーを大量に引き寄せ、辺り一帯を深い霧で包んだ。


こうすることで、周囲に漂う魔素は一旦水属性に感化されてしまうので、先程の魔力衝猫だましの様に、魔王にとっては周囲の状況が少しの間、判らなくなる筈だ。恐らく魔力衝猫だましの時よりも多少は持つのではないかと考えている。


そして、あらかじめ作っておいた土塊を異空間から取り出して……火属性のエネルギーを集めて一気に加熱すると、その勢いで一瞬霧が晴れ、私の場所を知った魔王が、再び襲い掛かって来たが……そこを狙って


「はっ!!」


目の前で赤熱していた土塊に魔力波を放つと、土塊が散弾の様に細かく分裂して魔王を襲った! さしもの魔王もその勢いに押され、動きを止めた。よし、続けて行くぞ!


私は土塊を異空間から取り出しては加熱し、魔力波を放つという行為を繰り返し、その都度土塊の欠片が散弾の様に魔王を襲った。やがて準備していた土塊が尽き、霧も晴れたことから、攻撃をやめて魔王の様子を確認した。すると……体中小さな穴だらけになっていた魔王の身体が、これまで同様、修復されていった。


『どうした。もうおわりか』


魔王はそう呟き、攻撃を再開した。


そして私は先程と同様、左肘を極めながら地面に叩き付けた。するとやはり、左肘から嫌な音がした。さて、ここからどうなるかだ。


『こんなもの……ん? なぜ、なおらない?』


やはりそうか! 身体にある魔素の流れを阻害すれば、さしもの魔王も、身体の修復は上手くいかないようだ。


先程使った土塊には、鉛を大量に含ませている。鉛は他の物質よりも魔素の含有率がとても少なく、魔力があまり浸透しない物質なのだそうだ。このため、魔力の流れを制御する目的で、魔力が流れ易い魔法銀などと同様、魔道具に大抵使用されている金属だと、以前ヴェルドレイク様に教わったのだ。


つまり、鉛は魔素が流れ辛い物質なのだが、魔王は先程の攻撃により、その身体に大量に鉛を取り込んでしまった。このため、身体内の魔素の流れに異常をきたし、その結果これまで行えていた高度な魔素操作が行えず、関節などの複雑な部分の修復が行えなくなったのだろう。


ヴェルドレイク様との会話を思い出して、鉛入りの土塊を作っておいて良かったよ。ただ、これまでの戦いで魔力がかなり無くなって来た。この機に乗じ、早期に決着をつけなければ!


『ぐう……ぐぬう……』


魔王は呻きながら、身体を修復しようとするが、やはり上手く行かない様だ。いくら魔素が本体とはいえ、操っている身体が動かないのでは、当然、隙が生じる。私は高速で接近し、その動きを察知して殴り掛かってきた魔王の右腕を取り、その力を利用しつつ腕を極め、地面に叩き付けた!


そこから更に魔王の頭を狙い


「はっ!!」


魔力波を叩き込んでみたが、魔王はその時、魔素を大量に吹き出し、障壁を作って魔力波の威力を分散させつつ、私の足元に飛び出すように突撃してきたので、一旦重力魔法で空に逃げて攻撃を躱した。


なるほど、主体に魔力波を使おうとすると、あのようにして防御するのか。やはり荒魂で一気に感化しないといけないようだ。


魔王は立ち上がっており、私が攻撃を仕掛けても、何らかの手段で躱されてしまいそうだ。そして良く見ると、鉛の粒らしきものを身体から少しずつ排出しているようだ。ということは、このままでは遠からず魔王は本調子に戻ってしまう……。


焦りからか、少々弱気になってしまったところ


『大丈夫です、愛し子よ。勝利は目の前です』


『そうだよ! 今の君なら、魔王を逃がさないことだって出来るよ!』


と、火・風の大精霊が声援をくれた。そうだ、やれることはまだあるはずだ!


『そうよ~、魔王ったら、足元がお留守だわ~』


『儂の力を使え! 今なら良い物が作れるぞぉ』


水・地の大精霊も助言をくれた。確かに、今なら両足を拘束すれば何とかなる! しかも周囲にはいい材料があるじゃないか!


魔王が立っている地面を瞬時に変形させ、両足を拘束する。その際、周囲にばら撒かれていた鉛も利用した。更に、その周りを、水属性のエネルギーを多量に含んだ水で覆い、瞬間的に超低温の氷を作って包み込んだ!


『な、なんだ、これは……』


今は両手が使い物にならない状態だから殴って砕くことも困難だろうし、恐らくは足に魔素を集中させて拘束している地面と氷を破壊して脱出しようとするだろうが、あれには鉛が多量に含まれている上、水属性エネルギーを多量に含んだ氷が覆っているから、魔素の浸透にも時間が掛かるだろう。


これなら、いかな魔王の「魔素の支配」でも簡単には拘束から逃れることは出来ない筈。荒魂を放つ準備をするなら今だ!


『同胞達よ、我が元に属性力を!』


私は周囲で見守ってくれている精霊達にも力を借り、この近辺にある属性のエネルギーを集めた。そして、両手を大きく広げて空を仰ぐような姿勢を取り、可能な限り属性エネルギーを取り込んでいく。


その際、エネルギーと一緒に私に取り込まれていったのか、世界中の様子も感覚で伝わって来た。戦っているのは私だけではない、世界中の各所で人々が、今、命を懸けて魔物と戦っているのだ。そして魔王を討伐しない限り魔物が発生し続けるため、戦いが終わることはない。


そう、私は世界の命運を握っているのだ。絶対に魔王を倒してみせる!


私の身体は四属性のエネルギーを取り込み、黄金の光に包まれた。信じられない程の凄まじいエネルギーが私の身体に満ちている。



時は、来た。



私は、魔王に向かって半身の姿勢を取り、両脚を大きく開いて大地を踏みしめ、両腕を伸ばして掌を魔王に向けた。魔王は拘束を解こうとしていたが、もう遅い。



「魔王よ、世界に還りなさい……荒魂!!」



その瞬間、視界の全てが黄金色の光に飲み込まれ


『なぜだぁーーっ!』


と魔王が叫んだような気がしたが、その気配は荒魂の光と同化し、儚く消えて行った。




そんな中、私は勝利を喜ぶのではなく、あることを思い出していた。


あれは、合気道の開祖の口述をまとめた本だったか。どうも開祖は武道家であっただけではなく、スピリチュアル系の人でもあったようで、正直前世であの本を読んだ時は、文章は読めても内容が全く頭に入らなかった。


しかし今なら、判る気がする。まさに今、そのような思いで一杯だからだ。これが悟りの境地というものなのだろうか。


あの本の一節を、今の状況に置き換えて表すならば、このようなところだろうか。



「世界そのものである私と……争おうとした時点で、既に負けているのですわ……」



私の思いは、消滅してしまった魔王の魂に、届いただろうか。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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