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第404話 魔王との戦い 1

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

それは突然やって来た。


概ね北の方角……恐らくは「世界の果て」と思われる場所から、強烈な破壊の意志が膨れ上がり、爆発したような感じがした。恐らくは魔王がこの世界に出現するのだろう、いつでも動けるように準備は整えていたので、そのまま教主猊下の所に出向くと、既に事態を把握していたのか


「神使殿、間もなく魔王が出現します。直ちに例の場所に向かって下さい」


と、跪こうとする前に言われた。その後に教主猊下は口だけ動かし


『必ず帰って来て下さい』


と言っているように見えた。立場上言葉にすることは出来ないが、私を心配してくれているのだろう。


私は、踵を返して指定されている場所に向かった。事前に説明されていた所では、魔王を迎え撃つ場所は、大体サウスエッド国とターナコルデ国の中間に位置する奉奠島と名付けられた小島らしく、そこには転移門で移動し、その際は私以外にも見届け人が同行する。ということでその転移門の所まで行き、2名の見届け人と合流した。


「まあ、大司教台下も見届け人でしたの?」


「ええ。大司教以上でないと転移門の運用に負担がありますし……見知った者が対応するのが一番良いですからな」


もしかすると、私が神命の遂行に伴って命を落とした場合のことを考えているのかもしれない。確かにその場合、家族達に説明するのは、大司教台下になるだろうからね……。




ということで、3名で奉奠島へ転移した。


転移門は地下に作られていて、階段を上ると、島自体は全体的に平地で何もないことが判った。島の形は概ね円形で、半径500mくらいの広さで、転移門のある地下室は、中央から少し離れた所に位置している。


階段から離れたところ、地下室周辺が神域と同様の力で護られていることが判った。この小島で何が起ころうとも、地下室付近には影響を及ぼさない造りになっているのだろう。


神域との時差は2時間程度だろうか、先程から太陽が下がったように見えるが、特に戦闘には関係なさそうだ。


私は魔王を迎え撃つため、島の中央付近で移動した。


大司教台下はこちらを見守っている。何か箱の様なものを持っているが、説明されていないので、私が神命を遂行するのには関係ない何かなのだろう。また、もう一人の見届け人……確か大聖堂で見たことがある神官だったかな……については、青い顔をして剣を持っていた。あれは恐らく話に聞いたところの神剣で、私が魔王に倒されてしまったならば即座に使用するつもりなのだろう。


あの人も犠牲になることのないように戦えるだろうか……と考えていたところ、北の方、恐らく「世界の果て」で、何か途轍もないエネルギーを感じた。そしてそのエネルギーが、考えられないような高速、まるで弾道ミサイルみたいな感じで、真っ直ぐこちらに向かっているのが解った。


周りにいる精霊達が


『来るよ! 魔王がこっちに来るよ!』


と叫んでいる。では、そろそろ和合しておこう。


「精霊達は、私から離れてこの島を囲みなさい」


話を聞く限り、精霊は魔王の攻撃が効くわけではないけれど、私の攻撃が影響を与えそうだからね……。


私の命令で、近くにいた精霊達は島の外周くらいに退避した。また、島の外からも精霊達がやって来て、島を囲い始めたので、何だか観客がいるかのように感じてしまった。まあ、気にする余裕などないが。


『四大よ、我が前に集え』


私が魔力を込めながら呟くと、その声に応じて、四大精霊が私の前に現れた。今の私は、女王様の権限を預かっている状態だから、命令に従ってくれるわけだ。



【我が魂の同胞たる四大精霊よ。我が命に従い、共に在らん】



『我等四大精霊、愛し子と共に在りましょう』



すると、四大精霊が赤、緑、青、黄色の光になって、私を包み込んで行く!



これは……あの「始まりの地」での試練の時のようだが……今の私は、世界そのものである私は、自身の意識を保ったままでいられるようだ。


そして、世界のあらゆる動きが、手に取るように解った。


どうやら、魔王出現の影響を受けて、世界各地で魔物の動きが活発化し、多くの場所で魔物暴走が発生しているようだ。魔物暴走多発地帯があるロイドステア国・アブドーム国間、ラルプシウス国、ウィサワーゴ国、ターナコルデ国はもとより、その他の国々でもかなりの数の魔物が暴れている。


私が根源である魔王を何とかするので、それまで魔物達の対処をお願いします。精霊達よ、皆の力になって下さい!




皆の無事を祈りながらも、私は、迫り来る脅威に目を向けた。何らかの力で空を飛んでいた存在が、高度を下げた。やはり、この島を目指していたようだ。暫くして私の目の前に、音も無く人の形をした何者かが、降り立った。


私を見て、何かをしようとしたようだが


『……こわれない……なぜだ……』


と呟いていた。恐らく例の「魔素の支配」により、私を破壊しようとしたのだろう。


早すぎて目では見えなかったが、私の身体の周囲にある魔素が、一瞬目の前の存在と繋ったのが、確認出来た。しかしその繋がりは、私の身体の前で途絶えていた。やはり今の私の身体には、魔力はあっても魔素は無いようだ。


目の前の存在は、成人男性のような体格で、服は着ておらず、肌は青黒く硬質化したかのように変化していて、甲虫を思わせるような外観なので、裸という感じはしない。


頭には髪は生えておらず、眉毛や睫毛なども無いことから、身体が変化するにあたり、無くなったものと思われる。そして、瞳の色はこの世界の人間ではありえない、漆黒だ。その瞳からは「全てを破壊する」という意志以外、何も感じられない。


これが「魔王」と呼ばれる存在なのだ。




私が暫く観察している間、魔王は何度か私を破壊しようとしたが、失敗に終わったので


『ならば、ちょくせつ、こわす』


と呟くと、目にも止まらぬ速度で私に迫り……魔王の身体は地面に叩きつけられていた。


それでも魔王は怯まず、何度も私に襲い掛かって来たが、私は魔王の超高速度の攻撃が理解出来ており、魔王の力を利用して地面に叩きつけていた。四大精霊と和合したことで、私の身体能力自体も通常時とは比べ物にならないほど上がっているらしく、これなら魔王の攻撃には対応出来そうだが……問題はどうやって魔王を倒すかだ。


流石にこの超高速度で動かれては、荒魂を使う隙は作れそうにないし、先程から見ている限り、魔王に疲れは見えない。魔素が魔王の本体ということなので、魔素がある限り、スタミナは無限と考えて良いだろう。


一方、私の魔力は有限だ。いくら魔力お化けの私でも、四大精霊と和合した状態を長時間維持することは出来ない。和合が解ければ、私の敗北は必至なので、和合している間に魔王を倒さないといけないわけだ。とにかく、攻略法を探してみよう。


魔王が攻撃して倒されている間に、私は周囲の属性エネルギーを集めた。流石に大精霊達と和合しているので、思うだけですぐに大量の属性エネルギーが集まった。また、周りの精霊達も手伝ってくれているようで、島の周囲には全ての種類の属性エネルギーが大量に集まった。


これなら荒魂はもとより、魔法なども使い放題だ。さて、色々試してみよう。


魔王を叩きつけるのに合わせて、地面を変化させて一瞬魔王の動きを拘束し、レーザーを同時に発射したところ、一度は穴だらけになったものの、少し間を置くとすぐに穴は塞がった。


『魔王の身体は薄い魔素で覆われているから、火の系統では効果が薄い様ですね』


火の大精霊が、アドバイスをくれた。確かに、穴が開いたのは身体の浅い部分だったようだ。あれ以上の出力を出そうにも、レーザーは溜めの時間が必要だから、あの程度が限界だ。別の攻撃にしよう。


周囲の海から海水を移動させ、魔王を地面に叩きつけるのに合わせて海水で魔王の身体に被せ、水圧を掛けてみたが、魔王は高圧下の海水の檻からするすると抜け出た。


『あら? 周囲に高密度に魔素を展開して、膜のようにして水圧から身を守ったわね』


今度は水の大精霊がアドバイスをくれたが……この攻撃も駄目なようだ。


では、次は風属性で攻撃してみよう。まずは雷だ!


様々な方向から稲妻を当ててみたが……ほとんど効いていない。


『うーん、どうやら魔素を使って、地面に雷を逃がしたようだね。次は風の刃で斬ってみたら?』


風の大精霊がアドバイスをくれた。確かに、魔王に向けて放たれた稲妻が、地面に吸い込まれて行ったから間違い無いだろう。ということは、雷も駄目か。ならば、今度は風の刃で攻撃だ!


魔王の接近に合わせて岩壁を出し、飛び越えようとしたところを風の刃で狙い撃った。逃げられたので直撃は避けられたが、風刃は左肘の下付近に当たり、そのまま斬り飛ばした! これならどうだ!


魔王は、左手を失っても特に苦しむことは無かったが、暫く私から距離を取った。そこで残った右手に力を込めると……爪が伸びた?


爪は鋭く尖っており、まともに喰らえば、導師服を貫いてしまいそうだ。魔王の猛攻が再開した。武器を持っているのと同様なので、少々動きが変わったが、何とか対応出来ている……が、どうやらこの時私は、形状を変化させて襲い掛かる魔王に警戒して、意識をそちらへ向け過ぎてしまったらしい。


『危ない!』


後ろから何かが迫って来る! 大精霊達の言葉で気が付いたものの、避け切れない!


「ぐっ!」


身体を翻し、辛うじて直撃は避けたものの、背中に焼けるような痛みを覚えた。気が付くと、魔王の傍らに、先程斬り飛ばした筈の、左手が漂っていた。ご丁寧に、爪を伸ばしている。どうやら私を背後から襲ったのは、左手のようだ。魔王は、切断された体をも、自在に操ることが出来るらしい。


背中は痛いが、傷は和合の効果により少しずつ回復しているから、行動に支障は無さそうだが……


「流石に、一筋縄ではいきませんわね……」


私は、気合を入れ直した。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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