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第398話 髪の手入れ用魔道具の研究状況を確認した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は、以前依頼した、髪を美しくするための魔道具の研究に関して、ある程度成果が出たという話を聞いたので、魔道具研究所準備室にやって来ている。


応接室で、室長とクインスール研究員から現状を確認させて貰った。クインスール研究員の髪は、実験の為か、以前よりかなり綺麗になっているようだ。


「成程……検査と調整、2つの機能に分けて魔道具を作っているのですね?」


「はい。2つの機能を1つの魔道具にまとめることも可能なのですが、そうすると女性が取り扱うには重くなりますので、分離させた方が良いと考えました」


「主に使用するであろう女性が使い辛いというのでは、本末転倒ですからね。では、使用方法を教えて下さるかしら」


「はい。まずは検査用の魔道具を髪に当て、ゆっくりと梳くように動かします」


ブラシ付ドライヤーの様な形をした魔道具を髪に当てて動かすことで、髪に含まれる属性エネルギーの量を検知するようだ。取っ手に魔力を流す部分があり、使う際にはそこに魔力を流しているようだ。


また、ブラシ部分の背に、各属性の量を表示する部分があり、色が強くなると該当する属性が多い、ということらしい。現在は、クインスール研究員が使用している。


「私が使用したところ、やはり水属性が強めに出ておりますので、今度はこちらを当てて、水属性力を取り除きます」


概ね同じ形をした調整用の魔道具を、髪を梳く様に当てながら動かしている。どうやら、量を調整したい属性とその量を指定するスイッチのようなものがあり、髪に満遍なく当てることで調整するようだ。


その後、再度検査用の魔道具で検査を行ったところ、確かに水属性エネルギーを抑えることに成功したようで、バランスの取れた状態が表示されていた。


「魔道具の使用法としては、このような形になるのですが……ご意見を頂けると有難いです」


今の所、クインスール研究員だけで実験を行っているからか、あまり汎用性が無い様な気がするので、その辺りを改善して貰おうかな。


「そうですわね……まず、属性力量については、可能であれば数値で表示して下さると使いやすいのではないでしょうか。ワターライカ伯爵が発明された計算具を応用して、最新の測定用魔道具は数値化されていると伺っておりますわ」


「それも考えたのですが、属性力量の単位がございませんので、どうしたものかと……」


「では、こちらで決めてしまえば良いのでは? 桁の重みに対応させれば、量を表示することも難しくはないと思いますわ。室長殿、如何でしょうか?」


「そうですな……今後もこういった魔道具を作るのであれば、属性力量の単位も必要となるでしょうから、これを機に検討させて頂きます」


「その方が宜しいですわね。それと、調整の際は、検知した属性力量を均一化するわけですから、その数値が必要になるのですが……どのように調整しているのかしら」


「現段階では、使用者の勘ですね」


「そこは数値を見ながら行えた方が良いと思いますが……ちなみに、現在の魔道具の重さの原因となっているものは、何でしょうか?」


「属性力が不足している場合に追加するため、属性力を多量に含んだ物質を入れておりますので……。また、この属性力量の表示部分も、意外に重いのです」


説明を受けて、暫く考えたが……これが可能なのか判らないが、聞いてみよう。


「まず、現在の形状は良いとして、表示部分と属性力の補充を別にして……例えば、箱状にして台に設置し、紐状のものでこちらの魔道具と接続して使用する、というのは如何でしょうか?」


「つまり、検査と調整のために髪に当てる櫛状の部分を一つ、属性力量の表示と属性力補充の部分を一つ作り、それを導線で接続するのですね。それならば……出来ないことはないと思います。櫛状の部分は切り替える仕様にすれば、兼用は可能ですし、確かにその方が使い勝手は良くなるような気がします」


「やはり多くの方が使用する魔道具になりますから、ある程度は経験に頼らず成果が出せる物の方が望ましいですからね。試しに、他の方にも使用して貰いましょう」


室長に、ネリスを呼んで来て貰った。現在は魔力炉関係の業務は落ち着き、新しい研究を始めたらしいが……相変わらず、あまり髪の手入れを行っていないな。


「導師様! 私に御用とのことで、何用でしょうか!」


「コルドリップ研究員殿、さあ、こちらに座って下さいな。紐は一旦解きますわよ」


後頭部で髪を束ねている紐を解き、髪を梳くように検査用魔道具を動かした。


「は、はわわ……、ど、導師様! 一体何を……?!」


「髪の手入れを行う魔道具の実験ですわ。暫く動かないで頂戴」


手入れが行き届いていないので所々で引っ掛かったが検査は終わり、火属性のエネルギーがかなり多いことが判った。他にも地属性が少々多い様な気がするな。


「続いて、火属性力と地属性力を抑えましょう。火属性は大1回、地属性は小1回程度でいいかしらね」


調整用魔道具を当てて調整した後、もう一度検査をすると、火属性はもう少し整えた方が良さそうだったので、小を1回行って、再度検査をすると丁度いい感じになった。


「コルドリップ研究員殿、研究に夢中になるのも良いのですが、髪の手入れも程々に行った方が宜しいですわよ」


「は、はいぃっ! 導師様にお手入れして頂いた髪ですもの! 大事にしますっ!」


「クインスール研究員殿、やはり何度も確認が必要になりますから、属性力量の表示は常に確認出来た方が宜しいですわね」


「はい。安全性はこれまでの実験で概ね保証出来ましたので、今後は他の女性研究員にも協力して貰い、使い勝手などを改良致します。恐らくは皆、快く協力することでしょう」


それから、クインスール研究員と今後の研究のやり方などを話して魔法省に戻った。なお、試しに私も検査用魔道具で属性力量を確認した所、どの属性も同じくらい強く光っていたので、調整の必要無しということだった。まあ、体質だし、しょうがないよね……。




その日の夕食時、お母様に進捗を報告したが、お母様の方でも色々検討していたようで


「洗髪剤や整髪剤は、多くの種類があるけれど、人によって最適な品を選んでいるのが現状だわ。髪の手入れに属性が影響するという話を、懇意にしている商会に話して調べさせたのだけれど、属性毎の特徴は洗髪剤の方には見られたそうよ。例えば私の使っているものは、やや風属性力が多かったらしいわ。整髪剤については、どれも属性的には均整だったそうよ」


ちなみに私が使っている洗髪剤の属性を聞いたところ、属性的には特に偏りが無かったそうだ。何だかんだ言いつつ、私の髪に最適なものを選んでいたようだ。


「これまでは、主人の髪質に合う洗髪剤を探すのは、女中達の一大関心事だったそうなのだけれど、ある程度の方向性が見えたという意味では、良かったかもしれないわね」


「ただし、あの魔道具が完成して、継続的に使用することで、洗髪剤との相性も変化する可能性はありますので、その辺りはご注意下さい」


「そうね。案外、貴女の使用しているような、属性の偏りが無いものを選ぶと良いかもしれないわね」


その他、その商会に調べて貰った結果を聞いたが、魔力量が大きい傾向にある貴族女性は、自分の属性に反する属性のエネルギーが高めの洗髪剤を使っているらしい。


平民……といっても、裕福な商人達が多いのだが……については、どちらかというと属性の偏りが無い洗髪剤を選んでいるそうで、私が使っているものも、その一つらしい。


なかなか奥が深そうだが、個人的には最低限整っていればいいかな、と考えている程度なので深入りは避けることにして、いつも私の身形に気を配ってくれているローゼイラや精霊達に感謝をしつつ、その日を終えた。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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