第395話 収穫祭の祝宴に無事参加した
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武術大会が終わり、収穫祭最終日となった。疲労はあるものの、行動出来ない程ではないので、予定されている祝宴には参加予定だ。
ただし、お父様達からも注意をされたのだが、ここ暫くは武術大会の件で色々絡まれる可能性があるので、気を付けないといけない。なので今回は、単独での参加ではなく、結婚しているがお兄様にエスコート役になって貰う予定だ。お義姉様は体調の都合で参加しないしね。
ある程度体を動かして、問題無いのを確認した後、祝宴の準備に取り掛かった。
準備が整い、時間となったので、お父様、お母様、お兄様と一緒に出発した。
今日はワゴン型空動車にアルカドール家の紋章を付けていて、操縦手は私ではなく家の者だ。最近は私やお母様以外にも空動車を操縦できる者が増えたので、こういった使い方も行っているが、まだまだワゴン型空動車の普及率は低いので、基本的には高位の貴族と認識されている筈だ。
もっと普及したら、空動車の運用に合わせたルールも作る必要があるとは思うが、今の所は法務省が検討しているだけのようだ。
少々控室で待機した後、お父様とお母様が入場し、その次に私とお兄様が入場した……ところ、やはり物凄く注目された。
続いて三公や外務大臣も入場し、最後に陛下達が入場し、いつものように陛下の挨拶で宴が始まり、私達は簡単に挨拶を済ませようとした……のだが、やはり昨日のお祝いが多く、結構時間がかかった。あと、東公であるクリフノルド様の所にも一応挨拶に行ったのだが
「武術大会三連覇は確かに偉業ではあるが、淑女としてはどうなのかと思ってしまうな。そもそも、婚姻前の娘が男性と接触するのは、宜しくないのでは?」
と言われてしまった。まあこう言われる可能性もあったので返し方は考えていたが、まさかこの人から言われるとは思わなかったよ。
「まあ。公爵は、女性が舞踏をすることを好まれないのでしょうか?」
「いや、私はそのような事は言ってはいないが?」
「同じ事ですわ。舞踏では、婚姻前であろうが男性と女性は接触致しますし、むしろ、嗜みの一つではございませんか。まさか公爵は、不埒なことを考えて、舞踏を行っておりますの?」
「い、いや、そんなことはない! 傷などが付いてしまっては、折角の美貌が台無しになってしまうと心配しているのだ!」
「その時はその時ですわ。それくらいの覚悟はしておりますが……今の所は傷物とはなっておりませんわね」
「そ、それならば良かったな、では、失礼する」
話を終わらせて、クリフノルド様は去って行った。一応改革派の領袖という立場だから、こちらに難癖を付けたいという気持ちも判るのだが……まあいいや。
ただ、私とクリフノルド様の遣り取りは周りに聞かれていたのか、それ以降も挨拶をして来る人は多かったものの、同様の事を言う人はいなかった。まあ、一応私も公爵相当の立場があるからね……。
概ね挨拶の波も終了したので、お兄様にも確認し、知人の所に行くことにした。
「ダリムハイト様、ミリナ、お久しぶりですわね。ミリナはその絹の盛装に相応しい、夫人として落ち着きのある美しさを醸し出しておりますわね」
「お二人ともお久しぶりだね。ダリムハイトは安定感が出て来たね。やはり美しい妻と可愛い子供を護る為というところかな?」
「導師様、カイダリード、久し振りだな。しかし昨日の試合は痺れた。俺がどうやっても勝てないのが判ったぜ。それがこれほど美しい人だというのは、正直戸惑うところだがな」
「カイダリード様、フィリス、お久し振り。そちらもお子様がお生まれになったと伺ったわ。おめでとうございます。それにフィリス、三連覇おめでとう。決勝戦は観ていて心配したけど、無事勝てて良かったわ。ところであの方……やはり、彼なのかしら?」
「恐らくはミリナが想像されている方だと思いますわ」
「そうよね……わざわざ遠い所からフィリスを想って来たのよね……」
「あちらにも私にも、そのような感情はございませんわ。好敵手としては尊敬に値しますが」
どうもミリナは、自分が恋愛結婚したからか、少々恋愛脳になっているらしい。まあ恋愛自体を否定する気はないけどね……。
その他色々話したが、私が贈ったベビージムなども話題に出た。最近は激しく動いているそうで、ベビージムで遊んでいる所が、かなり可愛らしいそうだ。お兄様も関心を示していたし、可愛い甥っ子のフェルにも作ってやらないとね。
暫く話した後、ミリナ達の所を辞して、レイテア達を見つけたので話しに行ったところ……国軍関係者や騎士学校関係者に囲まれてしまい、代わる代わる武術大会の祝辞を頂いてしまった。どうやら皆、話し掛け辛かったので、私がレイテアの所に来る時を狙っていたようだ。まあ、以前からそういうこともあったけど、今回は激しかったよね……。有名税みたいなものなので、仕方が無いか。
その中で、是非指導に来て頂きたい、という話も幾つかあったが……まあ、そこは系統立てて調整して下さい、と言うにとどまった。ただし、国軍関係だと、基本的にお父様の目が届くので微妙な所だし、可能性としては、騎士学校くらいになるのかな。久々に行くのも悪くないかもね。
落ち着いた所で、レイテアやシンスグリム子爵と話をした。
「あの決勝戦を観ていると、今後は魔力を利用した剣術を検討せねばならないと、強く感じましたね」
「アンダラット法や魔力波などで、素地は出来ておりますわ。後は私の方でも、指南書を作成しているところですので、完成したら見て頂こうと思っているのですわ」
「それは有難い。そう言えば確か、流派を作りたいと仰っていましたな。その準備でしょうか」
「ええ。ただ、私は単なる武術として教えようとは考えておりませんので、趣は異なるかもしれませんが」
「それはそれで楽しみではございますな」
その後、幾つかレイテア達と話をした後、別の所へ向かおう……と思っていたところ、ヴェルドレイク様がいたので、話をしに行った。
「導師殿、カイダリード、やはり今日は話す事が出来るだけで有難いね。ここにいる皆、昨日素晴らしい偉業を成した導師殿と、何とかして話したいと思っているのだから。今日は一際輝いて美しいので、近寄ることも難しいようだけれどね」
「まあ。お褒め頂き有難うございますわ。ワターライカ伯爵こそ、いつもはお忙しいので中々お会い頂けないのですから、良い機会でしたわね」
「今後は更に、陛下の御代を支えるため、中央との連携を強めて参りますので、宜しくお願いします」
おや? この言い回しは……もしかすると、今回は体制派に加わることを正式に伝えるために王都に来たのかな? 漸く領内の貴族の意見をまとめることが出来たのだろうな……。
「何と! では、我々と同じ立場となるということでしょうか? 我が家も歓迎致します」
お兄様もヴェルドレイク様の発言の意図に気付き、同じ体制派の貴族として、歓迎の意を示している。
同じ派閥の領主家が増えることは、基本的には勢力が増すことになるので、歓迎すべきことだからね……ただし、一つの派閥が強くなり過ぎるのも国家全体としては宜しくないらしく、王家としてはどの派閥にも一定の配慮をしていると聞いている。
まあ、体制派が強くなり過ぎたら、不満が溜まって改革派の力が強まるのかもしれないが、それは今ではない。派閥の専横や我田引水などが増えないように、私の方でも気を付けよう。
ヴェルドレイク様からは、現在の貝の研究の話や、風属性の魔力炉の研究の話なども聞いた。
貝の研究については、言葉は濁されていたが、順調のようなので、今度また確認に行くことになった。そして風属性の魔力炉についても、試作して実験したところ、良いデータが得られたそうだが、いかんせん必要な風砂の量が多く、国内の産出に頼った場合は運用が限定される可能性が高いということだった。
なので、私がターナコルデ国の事を話すと、非常に喜んでくれた。
その他、色々話し込んでいるうちに祝宴の時間が終了し、皆で王都邸に戻った。
なお、お父様は、私に指南して欲しいという国軍関係者からの要望が殺到していたらしく、かなり機嫌が悪かった。申し訳ありません。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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