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第003話 精霊が見える子は珍しいらしい

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

私は2才になった。


体もだいぶ思うように動かせるようになり、自分の名前である「フィリストリア・アルカドール」も発音して挨拶ができるようになった。まだたどたどしいが。


家族は私のことを「フィリス」と呼ぶ。使用人達は「お嬢様」か「フィリストリア様」と呼ぶ。家の中を歩くと、出会った人は大抵私に話しかけて来る。やはり、まだ危なっかしいのだろう。


アルカドール邸は領主家だけあって、2才には広すぎる。うちの爵位は、5つあるうちの上から2つ目だそうだ。だから西洋風に言うと、侯爵になるわけだ。歴史的・文化的な位置付けは、地球と同じかは判らないが。




さしあたっては、家をうろつくだけで鍛錬になる。暇も潰せるし、有難いことだ。最近はそれに加え、合気道風の準備運動やストレッチなども出来る範囲で始めたのだが……その様子を見た私付のメイドであるメイリースに


「お嬢様、その奇妙な運動は一体何なのでしょうか」


と不審がられた。流石に前世の記憶云々というと、不都合が起こるのは明らかなので


「せーれーさんにきいた」


とごまかした所、暫くして父様の執務室に連れて行かれた。まずかっただろうか?


父様は私に尋ねた。


「フィリス、お前が奇妙な運動をしていたと、メイリースから報告があったが、その際「精霊に聞いた」と言ったそうだが、本当か?」


と聞いてきた。精霊に聞いたのは嘘だが仕方ない、それで通そう。父様ごめんなさい。


「はい、とーさま」


「フィリス、お前は精霊が見えるのか?」


「はい、とーさま、今もとーさまのうしろに1つ、かぜのせーれーさんがいます」


「そうか……本当に見えるのだな……。フィリス、実は、精霊が見える人は特殊なのだ。だから、外でみだりに精霊が見えることを口にしてはいけないよ」


「はい、とーさま、フィリスはいいつけをまもります」


「いい子だ。お前は私が守ってやるからな」


父様は私の頭を撫でながら、そう言った。


父様の執務室から、部屋に連れて帰って貰ったところに丁度地の精霊が植木鉢に寝ころんでいたので、精霊が見える件について聞いてみた。父様の言うことは本当らしい。


精霊が見える人は「精霊術士」と呼ばれているそうだ。そして、精霊術士は通常、国に数人いれば良い方で、いない国も多いという。


例外は妖精?族という種族の国であるウォールレフテ国や、その周辺の妖精族集落がある国、そしてここ、ロイドステア国。妖精族は基本的に全員精霊と意思疎通ができ、精霊の加護を得て、強力な精霊術を使うそうだ。ロイドステア国は、300年前に「精霊導師」という凄い人がいたそうで、その影響で、国内に4~50人ほど精霊術士がいるそうだ。


で、精霊の話から類推すると、精霊術士は、自然の流転を司る精霊達から情報を得て、天気予報や道路などの状況、農作物の出来具合、地下資源の状況、疫病の流行などを詳細に知ることが出来るので、国家として是非囲っておきたい人材なのだろう。


で、私は精霊術士になることがほぼ確定、と。


国家に使い潰される可能性も高いわけで、だから先ほどの父様の「守ってやる」発言が出たわけだ。

父様迷惑かけます、ごめんなさい!




邸内を歩いて移動できるようになってから図書室を発見したので、毎日通うことにした。当初はメイリースに絵本を読んでもらったりしたが、次第に文字を覚え、自分で普通の本も読めるようになった。


この世界の文字や文法は、地球で言うところの英語に近い感じだ。語学はさほど得意ではなかったが、海外の論文もそれなりに読んでいたし、何といってもこれから使っていかねばならない言語だ。しっかり覚えよう。


また、フィアースの歴史や文化を知ることが出来、地球との差異を感じて、なかなか面白いと感じた。3才になる頃には、図書室の本はそれなりに読むことが出来るようになった。


3才になってからは、何人かの家庭教師が付き、教養やマナーについて、教育を受けることになった。読み書きは出来るようになっていたので、数学、歴史、地理、神学、生物学、音楽、美術、詩作や礼儀作法、テーブルマナー、ダンスなどを学んだ。


数学は、前世の経験が使えたので全く問題なく、歴史、地理、神学、生物学はかなり楽しく勉強させて貰っている。まだ若いからか、すぐに知識を覚えられるので非常に有難い。音楽や美術はそれなりだが、詩作はイマイチだ。著名な詩を沢山覚えるよう、先生に言われた。


マナー関連については、前世との違いもあり、覚えるのに少々手間取ったが、体を動かす分には楽勝だった。というのは、前世で研究室にいた時、膨大な動作のデータを見て、身体構造や動作のイメージを強く持てたおかげで、見た動きをまねるのが得意になっていたのだ。


そして今世では、動きを1度見れば、速度はともかく、ほぼ動作をまねることが出来た。特にダンスは先生からのお墨付きが出たので、兄様と踊ったのだが、兄様よりうまいと褒められた。何かズルをした気分になった。ごめん兄様。




マナーを習い始めてからは、実習の一環ということで、父様の視察や母様の外出に同行する機会が増えた。特に母様は、マナーについては厳しく、気を抜くとすぐに注意された。また、常に微笑みを絶やさない様にしなさいと言われた。平常心を保つという意味にとらえれば、立派な精神修養になるので、こちらも真摯に取り組んだ。その甲斐あって、母様の恐ろしい微笑みは減った様に思う。


視察に行くと、日頃は優しい父様が、領主であるアルカドール侯爵になる。領主としては若手のようだが、かなり威厳はあると思う。視察先では、非常に丁重に迎えられていた。ただ、私を褒められると、一瞬デレッとするのはやめた方がいいと思う。


視察先では、相手の子弟がいて、私の遊び相手にもなったりしてくれたが、正直面白くなかった。全く話は合わないし、媚びを売りにこられても、退屈だ。父様と一緒に視察先の話を聞いた方が、よっぽど面白い。視察後に父様にそのように話したところ、


「貴族には、相手を楽しませる話術も必要になるので、視察先では積極的に話題を振って相手を楽しませるよう努力をしなさい」


と注意された。反省。


出先で私が3才だと紹介すると、その度に驚かれた。5才くらいに見えるそうだ。好きで発育を良くしているわけではないのになあ……。あと、私の瞳については、変に思われる可能性を考えていたのだが、どうやら黄色に似た色と思ってくれているようで、特に変な反応は無い。父様の手前、騒ぎ立てるのを嫌ったのかもしれないが。




その他分かったのは、美的感覚は私の住んでいた頃の地球と大差ないようだ。どこの視察先へ行っても、私は可愛いと言われていた。特に初見だと、かなりの人が私に見惚れていた。性別、年齢を問わず、大体そんな感じなので、領主の娘ということでおだてている、というわけではなさそうだ。家族の贔屓目やおべんちゃらで可愛いと言われているだけなのを真に受けると、痛い女に成長してしまうからね……。気を付けないと。


今の所は、容姿は何の役にも立たないと思うけれど、自分の顔面偏差値を知っておかないと、要らぬところで敵を作ることもある。父様だけでなく、私の周辺にも護衛がいるのは、私も危険な証拠だ。家族に心配をかけないように気をつけよう。あと、他人が私に見惚れるのは、今後は基本的に気にしないことにした。気にするとキリがないようだし、ねぇ。


そういえば、精霊術士については、肌が綺麗になったり、髪に艶が出たりして、妖精族の様に美人が多いと言われているそうだ。これも精霊のおかげらしい。私についても、暫く精霊が髪を触っていたなあと思ったら、何時の間にか髪がツヤツヤサラサラになったりというような現象が起こっている。私付メイドのメイリースには


「手入れの必要が無いほど美しい御髪ですね」


と、褒められつつも腕を振るえないことを嘆かれている。魔法による美容法が各所で研究されているというのも、当然だろうか。


精霊術士は何故か女性しかいないらしいし、そういう意味でも囲われてしまう可能性があるわけか。大丈夫だろうか私。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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