表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

398/414

第391話 武術大会3回目の参加 2

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

試合の準備を終えて暫く待機していたところ、係員が呼びに来た。


二回戦、相手は剣聖とも称されたランドリック子爵の弟子の一人、アストリーク・エルイストフ男爵だ。去年は慢心故か、引くことのない戦い方をしていたからあまり苦労せずに勝てたが、今回は、カールダラスの調べによれば、随分と師匠に鍛え直されたり、早めに王都入りして、兄弟子であるシンスグリム子爵と鍛錬していたらしいからね……。


今年はこちらも考えて崩しを行わないと、隙を作る事すら難しいかもしれない。


係員に案内されて試合場に上がり、開始位置まで移動して、礼をした。


「あんたと当たることが出来て嬉しいぜ。去年の屈辱を晴らしてやるよ」


「全力で相手をさせて頂きますわ」


と、言葉を交わしつつ互いに構え、試合が始まった。


やはり昨年とは一味違うようで、エルイストフ男爵は、こちらの様子を見ているようだ。だが、いつでも飛び掛かれる状態であるのは良く分かる。こちらもこの状態で、少しずつ間合いを縮めていこう。


暫くして、棒の間合に入ったところで、私から突きを放った。


「えぃ!」


当然エルイストフ男爵は突きに対応し……棒をいなす様な動きをした。棒の間合で連続して突きを放つも、以前の様に叩き伏せるのではなく、私の力を利用しようとしている?


やがて間合いが縮まり、剣の間合に入ろうという頃に、動きが変わった。棒をいなすだけでなく、こちらの間合に入ろうとしたのだ。まずは様子見で、いなされそうになった棒を回転させることで牽制し、互いに間合いを切った。


「ははっ、流石に簡単に入らせては貰えねぇか」


「昨年とは違いますわね……しかしこちらも、鍛錬を重ねているのですよ!」


私はそう呟くと、改めて体内の魔力を強く意識し、あれを使うことにした。


「はっ!!」


間合の外から棒で突く様は、傍から見ると奇妙に映ったかもしれないが……魔力撃によって攻撃されたエルイストフ男爵は驚いている。どうやら私の様子を見て本能的に避けた結果、鳩尾を狙った私の一撃は外されてしまったようだが、避け切れずに左肩の付近に当たったようで、そこだけ魔力の流れがおかしかった。


「な、なんだそれは……そんなの出鱈目だろう……」


「帝国の第2皇子が使っていた技ですから、出鱈目ではありませんわ……よ!」


私が何度か魔力撃を放つと、接近するしか勝ち目の無くなったエルイストフ男爵が、私の動作を読むことで魔力撃を掻い潜って私に攻撃を仕掛けて来た。


いくら魔力お化けの私でも、そこまで絶え間なく連撃が出来るわけではないから、エルイストフ男爵ならばそう考えるだろうが、攻撃の方向が読めるなら、当然避け易く、また、反撃も容易い。


私はエルイストフ男爵の攻撃を避けつつ、奪魔掌の技術を使いながら、棒をエルイストフ男爵の身体に当てるように攻撃した。すると、避け切れなかったのか、棒先がエルイストフ男爵の左腕を掠った。


「ぐっ!」


左腕の魔力の流れが変調したのを見た私は、エルイストフ男爵の左側に高速で接近し、棒で連撃を行い、態勢を崩しにかかると、エルイストフ男爵は、体勢が崩れながらも逃げて間合いを切った。


ここで一気に攻めて態勢を崩そうと思ったが、何となく嫌な予感がして、引き続き牽制で棒による突きを放ったところ


「だぁーっ!」


何と、エルイストフ男爵は、一旦下がったことでばねのように力を溜め、一気にこちらに攻め込んで来たのだ! その勢いは凄まじく、防ごうとした私の棒が弾き飛ばされそうなくらいであった。


だが、その時、様子見の状態であり余裕のあった私は、敢えて棒を離すことで、エルイストフ男爵の攻撃方向を逸らすことに成功し、そのまま徒手の間合に入り


「やぁ!」


四方投げの応用でエルイストフ男爵を投げ、そのまま右腕を極めた!


「ぐわっ! ……ま、参った!」


エルイストフ男爵が降参したことにより、二回戦も私が勝利した。




極めていた手を離し、棒を取って開始位置に戻ると、エルイストフ男爵も右腕の痛みを堪えながら、落とした剣を拾って開始位置に戻った。


「……最後の誘い込んでの一撃にあんたが引っ掛かってくれればまだ勝ち目があったんだがな……まあいい、次戦う事があったら、今度こそ勝ってやる!」


「その時を楽しみにしておりますわ」


礼をした後退場したが……あそこで嫌な予感がしなければ、正直負けていたのは私だったかもしれないな……と思いつつ歩いていたところ、あの予感の正体に思い至った。


先日観たウェルステッド国の兵士達の、今でも戦場で戦っているかのような、死に物狂いの一撃を連想したのだ。私は対人の実戦経験自体はそれほど多くないから、そういった有り難さを味わいながら、控室に戻ったのだった。


二回戦の後は大きめの休憩が入るので、仮面などを取った後に軽く体操を行い、調子を整えた。その最中、お兄様の視線を感じたので、軽く手を振っておいた。




少々時間が出来たので観客席を見てみようと思い、地精霊と感覚共有して、とりあえずパティの所に行ってみると、軽食の代わりか、お菓子を食べながら試合について話していたようで、私が声を掛けると


「ん~っ、んぐんぐ……はぁ、驚かせないで」


と、淑女にあるまじき対応をさせてしまった。申し訳ない。


『ごめんなさい、少々間が悪かったようですわ』


「いいのよ、忙しい貴女がこちらに来ているだけで有難いわ」


ということで、ミリナ達からも応援の言葉を貰い、今度は精霊術士達が固まって観戦している所に行ってみた。


その途中で、ヴェルドレイク様がお兄様の横で観戦しているのを発見したので、判らないのは解っているが何となく手を振ったところ、一瞬目が合ったので、偶然なのだろうが嬉しく思ってしまった。


そして、精霊術士達の所まで来て……とりあえず近くにいた地属性のミストラに


『ごきげんよう、ミストラさん』


と話し掛けたところ


「ん……何で私の名前を知って……もしかして、導師様?!」


と、ミストラが大声を出したため、精霊術士達が一斉に寄って来た。とは言っても今の姿が見えるのは地の精霊術士だけなのだが。とにかく、皆が私を応援してくれる気持ちは十分過ぎるほど伝ったよ……。


まあ、あまり長居は出来ないので、お暇させて貰って控室に戻ると、暫くしてリーズが戻って来た。


「お嬢様、こちらが現在の試合表になります」


……どうやら、私の次の相手は、第1騎士隊長のようだ。確かこの人は国軍総司令官のサウルトーデ伯爵の三男だったな。領主選定戦にも出ていたから覚えているが……以前の戦い方通りであれば、多分勝てるだろう。


勝てた場合は準決勝に進むが、この試合表から見ると、ラセルグ・アノークが勝ち上がる可能性が高いかな。


そして決勝はカルロベイナス殿下……となるかどうかは、とりあえず彼の次の対戦相手である、騎士団副団長次第といった所だろうか。私としても、少しでも試合を観ておきたいところなので、接戦だと有難いかな。


試合表を確認しつつ魔力循環を整え、疲労などを回復させて次の試合の準備を行った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ