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第386話 発展しつつも、そこから他との調整も必要になる

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

6月末ということで、御前会議が行われた。


今回の魔法省の報告については、魔力炉の利用法や生産体制についての内容が一番注目を集めたようだ。陛下もご下問されたし、他省の人達の視線を沢山感じたからね……。


現在聞いているだけでも、農務省は大規模農地開発や山林の開発への使用を検討しているそうだし、商務省は金属の大量精錬や魔道具を使用して作っている新素材の大規模製造などを検討していたり、建設省はトンネル工事や港湾整備など、これまでは私にしか出来なかった工事が行えるのではないかと検討していた。


他にも特別補佐官であるオスクダリウス殿下の所では、空動車の技術を利用した鉄道のような大規模輸送の手段や、ベルトコンベヤーみたいに物を自動的かつ大量に運搬する魔道具の研究を魔道具研究所と行うことを検討しているそうだ。


まあ、魔力炉は魔石を沢山使う魔道具らしいから、今の所は大量に作ることは難しいが、ワターライカ領で現在行われている貝の研究が進み、成果を出すことが出来たなら、その限りでは無いだろう。非常に楽しみだ。




来光軍の体術の再現もこなれて来て、これなら実戦でも使えるだろうし、要領を確立させて武術大会に臨もうと考えたので、月末の休日に久しぶりにビースレクナ領に行ってみた。テルフィの様子も気になっていたからね……。


簡単にフィル叔父様に挨拶しつつ、護衛の一人にテルフィの家に案内して貰った。


「テルフィ、様子を見に来ましたわ。息災かしら?」


「導師様、このような所にわざわざお越し下さり、光栄です」


既に例の男性と結婚し、家庭を築いていたテルフィは、一応主婦っぽい感じの格好をしていたが、微妙にロイドステア国でよく見る服装とは違う気もする。聞いてみると


「ビースレクナの女性は、いつでも戦えるような服装を好んでいまして、私もそれに倣いました」


ということだった。ミリナなどを見る限り、貴族女性の服装にはそういった考えは無かったが、一般女性だとやはりそういう所がビースレクナ的なのだろうと感じた。で、現在は家事をしつつ、街の女性達に剣術を教えているそうだ。


これまでこちらの女性達は男性から教えて貰っていたから、殆どの人はどちらかと言うと力任せに殴るような形になって、あまり上達することがなかったらしい。そこでテルフィが、例の体操から始めて体づくり、剣の構え方や、相手の剣をいなしつつ態勢が崩れた所を狙う型などを教えているようだ。


これらは基本的に女性唯一の殿堂入り剣士であるレイテアから教わった剣術であり、今では結構な数の王都の女性達も嗜んでいるものだから実績もあるので、口コミで広がり教わる女性達が増えているようだ。あと、対人剣術という割に、魔物対応にも使えると評判だそうだ。基本的に力の弱い人間が力の強い存在に対抗するための剣術だからね……。


ということで久しぶりにテルフィと対戦してみた所


「以前より、対応力が格段に上がっておりますわね。多くの人達に教えているからかしら?」


「お褒め頂き有難く存じます。導師様には及びませんが……」


と、テルフィ的にも更なる向上の手ごたえを感じているような状況だった。


他にも、こちらでの奪魔掌の実験状況なども聞いたのだが、やはり魔力量に大きな差が無いと似た現象を起こす事は出来ないようだ。ということは、一般人や魔物などに対して行えるのは、今の所私くらいかな。もしかすると最終的な魔力量の伸び次第ではお兄様なども可能になるかもしれないが、そこは何とも言えないところだ。




後は、テルフィも同行して、来光軍から得た体術を使って魔物を退治してみた。


「……明らかに魔狼などより動きが素早いですね。遠目なら何とか追えますが、近接されると正直対応は難しいですね。思考加速した状態であっても、躱すのがやっとかもしれません」


「この体術については、現在要領を確立するため、指南書の形をとって纏めている所ですので、完成したら貴女にも見て貰うわ」


「私が習得出来るかは判りませんが、有難く存じます」


ということで、実際に魔物を倒しながら指南書の内容を検討したりして、休日は終わった。




7月に入り、毎年恒例の魔法学校での講義の時期となった。


ここ数年は、他国の関係者からもこの講義を聴講したいという要望が来ていて、併せて留学の検討の参考にもするそうだから、結構な人数が聴講に来るようだ。各国大使館の関係者をはじめ、ピリコノーメ様達の帰国後もまだ調査や交渉のため残っていたターナコルデ国の関係者なども来るそうだ。しっかり準備しないとね……。


第2週の週末になり、予定されていた魔法学校で精霊概論の講義を行った。やはり学生や教官達の他にも他国の関係者や、撮像具を持った報道関係者も来ている。イベント化した感じもするが、進めて行こう。

そういえば、去年は風の大精霊が来たよね……と思いつつも講義を進めていたところ


『愛し子よ、風のから聞いたが、儂らのことを人達に教えているそうだな』


と、地の大精霊が現れて私に声を掛けた。


「まあ、地の大精霊殿、如何されましたか?」


『なに、折角愛し子がおるのだから、偶には人に姿を見せた方が良いだろうと思ってな』


つまり地の大精霊は、人との関係を良好にするため、この講義を利用したいという考えなのかな。それなら前回の様に紹介させて頂こう。


「皆様、少々講義の予定を変更しますわ。地の大精霊殿、姿を見せて下さいませ」


と言って姿を見せて貰ったところ、やはり大きな反響があった。特に驚いていたのは、ウォールレフテ国大使のパットテルルロース様とその付き添いのイリナピピラーデだった。その場で跪いていたが、まあ、あちらの信仰的にはそんな感じなのだろうな……。


『儂ら精霊は、神より夫々の属性の管理を任されており、属性を淀みなく流転させることで世界の調和を保つのが仕事だが、世界と万物の長たる人との間も取り持たねばならん。故に、儂らのことも知って貰う為に顔を出した。何か知りたい事はあるだろうか』


と、地の大精霊は言った。やはり、自分が姿を現して人と語ることで、セントチェスト国であった様な、精霊の忠告を聞かなくなる事態を無くそうと考えているようだ。


地の大精霊が精霊に関する各質問に答えてくれるということで、学生達はもとより聴講者達も結構質問していたが、地の大精霊は案外饒舌な感じで回答してくれたので、時間は少々オーバーしたが、実りある講義になったと思う。


その後、毎回行っている魔法強化の体験も行われた。やはり他国関係者の注目度は高く、自分でも確かめてみて、威力が段違いになっていたので驚いていたようだが……その後で某国大使が私に、現在の我が国の精霊術士の数を質問してきたが、その答えを聞いて顔色が変わっていたので、その辺りも本国に報告されるのだろうね……。





ということで、今回の講義も大好評で終了した。


なお、留学の件に関しても、魔法学校長から現状を確認することが出来た。どうやら、来年から希望する国の留学生を受け入れる方向で進んでいるらしい。ただし、今の所は水属性のみということのようだ。まあ、比較的安全? で、生活にも役立つ魔法が多いからね……。


それと、他国的にはアンダラット法を修得するだけでも当面は有難いらしい。まあ、学生達が短時間で活性化を行い、魔法を放っていたのに対し、各国大使達の活性化には時間が掛かっていた。とっさの対応力の差に繋がり、死活問題になる可能性もあるからね……。


その他、精霊課ではサウスエッド国やセントチェスト国の精霊術士を既に受け入れているから、その辺りの話も精霊課長を交えて話したりした。


なお、ある程度他国にこちらの知識などを教えているのは、他国に脅威とみなされないために、必要なことらしい。力の均衡が図れていないと、それだけで疑念を抱かれてしまうため、留学の件に関しても、反対意見は根強かったが受け入れる方向で進んでいるのだそうだ。


全く政治の世界は面倒な事が多いな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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