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第373話 イストルカレン領内を一斉捜索した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

王太子妃殿下の第3子ご懐妊の話は、またたく間に政府内に広まったが、目立った動きは無く、通常通り業務が行われていた。私についても、精霊術士集中鍛錬を手伝ったりしているうちに2月となり、いつもの合同洗礼式に合わせた精霊術士候補の確認を行ったりしていた。




2月には、例年の業務となっている各領巡回助言があり、こちらについても概ね問題無く……一部、領政の相談に関して面倒な事を言って来た所はあったが、そういったものは適当にいなしているうちに、各領巡回助言も終了した。そして、引継ぎを終え、正式にテルフィからリーズに専属護衛が交代となった。


「テルフィ、これまで本当にご苦労様。あちらに行っても、達者に暮らして頂戴」


「お嬢様、いえ、導師様、これまでご指導頂いたご恩は決して忘れません。ビースレクナ領で導師様やレイテアーナ様から教わった剣術を広めて参ります」


「テルフィ様、これからも精一杯腕を磨き、お嬢様を絶対に守ります!」


「リーズメアラ様、今度お会いした際には、手合わせをお願いしますね」


テルフィはそう言って私達と別れた。聞いた話では、ビースレクナ領に向かう大きな隊商の護衛に混ざって移動するそうなので、安全に到着出来るだろう。




遠隔談具により、定期的に領の状況の報告が入るようになっていたが、その内容の中に、お義姉様の様子も加わっていた。どうやら体調は安定しており、お父様やお母様も安心しているようだ。お父様など、最近は宰相閣下と顔を合わせる度に、お義姉様の様子を聞かれるそうなので、そういった意味でも有難いようだ。


あと、宰相閣下は既に出産祝いについて検討しているらしく、生まれる子供が恐らく地属性であることをお父様が話したところ、非常に喜んでいたらしい。プレゼント選びの参考にするようだ。まあ、私などは先日も王太子妃殿下の所に呼ばれて、某国王の依頼で属性の確認をやらされたからね……。




そんなほのぼのとした雰囲気は、ある日の呼び出しによって吹き飛んだ。


どうも近年の我が国の懸念事項の一つであった、麻薬の流通の件で会議を行うとのことで、陛下、王太子殿下、宰相閣下やお父様、法務大臣が王城の会議室に集まっていた。


「陛下、全員集合致しました。会議を開始致します」


という宰相閣下の言葉で、会議が始まった。当初は宰相補佐官から全般説明があり、要約すると、東公領を中心として麻薬が広がりつつある状況を、カラートアミ教が良く思っていないらしい。


広まりつつあるのは我が国だけではないそうで、この状態が放置された場合、カラートアミ教が強制的に介入するかもしれない、と大聖堂の方から仄めかされたということだ。勿論我が国としても、解決の為に体制を整えつつあったのだが、急がないといけない状況になったようだ。


そして、早期解決の障害となっているのが、東公領の対応らしい。領内の自治権を盾に協力を拒んでいるため、折角編成した麻薬取締の任務を持った部隊も動かせていないそうだ。しかし、ある条件と引き換えに、協力すると言って来たという。


「領内には、既に背教者が潜伏していないことを認めよ、か……」


東公領には、神託に反する内容を意図的に流布していた背教者として指名手配されている者達が潜伏しているとされているため、探し出して異端審問に掛けるよう、陛下が直々に命じている。まあ、先代のイストルカレン公爵が私を排除しようと企んだことから始まった件なので、証人となる者達が探し出されることは無いと思われるのだけれども。


ただ、その代わりに先代が表に出られなくなり、クリフノルド様に代替わりしたが、聞いた話では引継ぎが上手くいっていない上、クリフノルド様は領主としての適性が無かったようで、イストルカレン家はかなり傾いているという。夫人のアシュリノーゼ様も、かなり苦労しているそうだ。


「確かに、そろそろ解放しても良い頃合いよな。精霊導師よ、それで良いか?」


なるほど、当事者である私にも確認しておきたかったから呼んだのか。まあ、もうこちらには絡んで来ないだろうし、問題無いのではなかろうか。そもそも先代が活動出来ていたら、麻薬が流行することも防げた可能性が高いしね……。


「陛下の御心のままに」


「うむ。法務大臣、法的な問題は無いか」


「一度こちらで大々的に捜索して全員発見出来なければ、背教者は既に死亡した、と大聖堂に認定を頂くことは可能でしょう」


「……問題は、大々的な捜索を行う時間の余裕が無い事か」


陛下がそう言うと、皆が黙ってしまった。そうだな……法務大臣に聞いてみるか。


「法務大臣殿、東公領に潜伏したとされる3名の容姿や特徴が判る資料はございますか?」


「……一度捕らえた際に作成している。また、奴等にはカラートアミ教から借り受けた特殊な鋼鉄製の首輪が装着されていて、鍵が無いと容易には外せないため、すぐに判るが……それがどうかされたかな?」


「それならば、精霊による捜索が可能ですわ。1つの領であれば、数日で捜索出来ることでしょう」


「何と! 陛下、ここは精霊導師殿の力を用いましょう。精霊であれば偽りを申しませぬ故、証拠として特に適していると言えるでしょう。大司教台下への説明も容易です」


「成程。……精霊導師よ、イストルカレン領内の背教者を捜索せよ」


「拝命致しました」


「精霊導師殿、合わせてある程度、麻薬の存在を確認させることは可能だろうか?」


ついでにお父様からも支援の話が来た。解決を急がなければならない案件だから、使える物は何でも使え、ということなのだろう。


「国防大臣殿、勿論可能ですわ」


「では、併せて麻薬の捜索にも助力せよ」


「拝命致しました」


その後、これからの動きに関して幾つか話し合い、会議が終了した。




会議から1週間後、私は支援をしてくれる風の精霊術士、フェルダナ、フィズナ、ピアーラの3人を伴って、東公府イストラードにいた。


他にも宰相補佐官や法務省信仰課長、麻薬捜査支隊長、大聖堂から派遣された神官数名も同行しており、かなり重苦しい雰囲気だったのだが、待ち時間に、アルカドール領の行政官に頼まれた件などをフェルダナに確認して、緊張を解きほぐしたりした。なるほど、優しい男性が好み、と。


領行政舎の会議室で暫く待機していると、行政官とアシュリノーゼ様がやって来た。


「申し訳ございません、公爵は只今体調を崩しており、私が代理で参りました」


とアシュリノーゼ様は言ったが、同行している行政官の疲れ切った表情を見る限り、違うようだ。まあ、今はそこに突っ込むより、さっさと捜索を済ませることが肝要だ。


事前に話をしていたが、改めて今回行う内容について話をして、了解して貰う。東公領でも以前巡回助言は行ったことがあるので、その時と同様の準備をして貰い、準備が整ったところで、頭を風精霊と同化させて、風精霊達を1000体呼び出した。


「このイストルカレン領において、こちらの首輪が付けられた、これらの人相の人間を探して下さい」


私はそう言って、風精霊達に区画を割り当てて、魔力を与えて探して来て貰う。区画が概ね900あるから一苦労だったが、何とか指示を終え、風精霊達は元気に飛んで行った。残りの100体には、それぞれ9区画ずつ割り当てて、麻薬が発見された場合、こちらにすぐ知らせに戻るように指示した。




それからは、フェルダナ達3人に背教者達の情報を集めて貰い、私の方は麻薬が発見され次第、風精霊と感覚共有して現場に向かい、所持者や使用者がいたら雷魔法で気絶させ、その場所を麻薬捜査支隊長に通報していった。


麻薬捜査支隊には、かなりの数の飛行兵と空動車が一時的に配属されており、私が連絡する度に、指定された場所に飛んで行った。最初は多すぎて辟易したものの、精霊達から


『ここにはいなかったよ』


という回答が増えて来たのが有難かった。




途中仮眠などを挟み、捜索が完了するのに2日半かかったが、何とか終えることが出来た。麻薬捜査支隊も物凄く忙しかっただろうが、領内の捜索が完了した時に、支隊長からお礼を言われたので、良かったのだろう。


フェルダナ達については、特定の人物の捜索は、地域によって差があることと、精霊自身が特定の人物を捜索することに慣れていないため、かなり間が空く結果になったが、2日程で捜索が完了した。勿論、該当者は存在しなかった。無駄かもしれないが、お疲れ様。


大聖堂から来た神官達も、私達の捜索結果を見て、安心したようだ。密輸組織の人間も摘発出来たし、これで当面は、麻薬が流行することは無いだろう。後は他の人達に任せ、私達は王都に戻った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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