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第372話 アルカドール家に新たな家族が増えるようだ

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

ドミナス分領から帰って来て数日は、鍛錬をしたりアルカドール領の巡回助言を行ったりしていた。


まあ、今回は特に問題は無かった。ノスフェトゥス国からの流民も、開拓村を作ってからは受け入れ始めているし、主要経路である北東街道以外の、整備されていない経路についても、封鎖できる所は封鎖したり、封鎖が難しい場所については検問所の様な建物を作って領兵を配置するようになったそうだ。


定期的に交代してはいるが、常駐して監視しているため、荷物などを持って移動する人は大抵発見出来る。周辺を巡回しているし、領兵の中にはお兄様の様に遠視の恩寵を持つ人が何人かいるそうなので、定期的に監視しているとのことだった。


これまでは領兵の数が足りず、国境警備が不十分な面もあったが、最近は兵数も増加し、領内の主要な道路も整備されたので、何かあった場合にも以前より対応が容易だ。今後は遠隔談具や空動車の導入により、更に即応態勢が強化されることだろう。




そのような中、大きなニュースがあった。何と、お義姉様が妊娠していることが判ったのだ。お義姉様は、ドミナス分領から帰って来てから体調が悪くなったので、お医者様に診てもらったわけだが


「若奥様におかれましては、当面は激しく体を動かす事の無いようお願いします」


お医者様はそう言って帰って行った。暫くは定期的に通ってくれるようだ。お父様、お母様と私がお義姉様の部屋でお祝いの言葉を掛けていた中、領行政舎に行っていたお兄様も、お義姉様の様子を確認するため家に帰って来たところで報告を受け、戸惑いつつも


「有難う」


とお義姉様に声を掛けていたのが、印象深かった。




その後、お父様がお兄様を連れて部屋の外に出て行った。父親としての心構えを話すそうだ。そしてお母様は、お義姉様のベッドの方で今後の話を始めた。ついでなので私もお母様の所で聞いておくことにした。


「吐き気があるそうだけれど、他にも、いつもと違うことはないかしら?」


「……はい、吐き気自体は、少し前から起こってましたが……軽いものでしたので、あまり気にしておりませんでしたわ。それと、最近は少しのことで気が立ったり、これまでは気にならなかった匂いが気になりだしましたわ。こちらは、医者にも伝えております」


「妊娠中は、通常の時とは異なるものですからね。恐らくは味の感じ方なども違ってくる筈ですから、違和感があったら遠慮しないで伝えて頂戴。新しい家族が増えるのですもの、皆で対応していきましょう」


お母様はお義姉様が不安に思うことのないよう、経験者の立場から色々優しく話しているようだ。こういった所は、知識より経験や共感が重要なので、特に私が話せることは無いと思うが……確か、つわりに関しては前世でも原因は全てが明らかになっていなかった筈だが、概ね知られていたことを思い出してみる。


つわりの程度を決めるのは本人の体質や、ホルモンバランス、生活環境などの説があるが明確には言えないという話だった。だからつわりそのものを失くす方法は無いが、軽減する方法などは流布していた。


お母様も今話しているが、吐き気が強い時は無理に食べようとせず、口に出来るものを少しずつ食べるとか、刺激の強そうな匂いのあるものを周囲に置かないとか、寝たい時には眠るなどといった対処法だが……その辺りは前世とも変わらないようだ。


しかしながら、地球とは異なる面もあるとも思ったので、何となくお義姉様の身体の魔力の流れを良く見てみたところ……下腹部、恐らくは子宮の辺りに魔力の滞留が見られた。もしかすると、こういったものもつわりの要因になっている可能性があると思ったので、お義姉様に聞いてみた。


「お義姉様? 現在お腹の辺りに、魔力の滞留が見られますわ。もし宜しければ、魔力の流れを整えましょうか?」


「……そうなのですか? お義母様、こういう場合、どうすれば宜しいでしょうか……?」


「フィリスの施術は、身体に悪影響を及ぼすものではないから、やって貰うのも良いかもしれないわね」


「……では、お願いしてもいいかしら?」


ということで、お義姉様にはベッドで仰向けに寝て貰って、下腹部に軽く手を当て、魔力を同調させていった。すると、いつもとは微妙に違う手応えがあったが、同調自体は行うことが出来た。もしかすると、2つの異なる属性の魔力と一度に同調したためかもしれない。


それはともかく、滞留を解消して、お義姉様の身体の魔力循環は正常になった。なお、精霊達にも様子を確認して貰った結果、問題は無さそうだったが、地精霊との親和性が高かったことから、生まれて来る子供は、恐らく地属性だろう。


「……体がとても楽になりましたわ……フィリス、有難う」


「そのまま暫くお休みになった方が良いですわ」


「……では、失礼して、眠らせて頂きます」


お義姉様をそのまま寝かせて、お母様と私は部屋を出た。それと念の為、属性の話についても、お母様に報告すると


「まあ! そのようなことも判るのね。出産祝いは属性にもこだわる人がいるから、有難いわね」


……そう言えば、某国王もそんな感じだよね……何だかんだ言って、リーディラゼフト殿下の時と同様にメイリスデニア殿下の時も調べさせられたからね……。この世界では、瞳の色が属性に影響されるから、合わせたくなる気持ちも判る気がする。まあ、性別とかもあるから、生まれてから選んでも別にいいと思うけれどね。




今日は王都に戻る日だ。私やお父様以外にも、これまで同様パティやアルカドール領出身の精霊術士達、魔道具研究所準備室に行くネリス、その他使用人達も同行しているが、今回についてはこれまでと違い、お母様も同行する。


これまでは、お父様が王都に住んでいるので、お母様も一緒に王都に住みたかったところだったのだが、領内のご婦人達のまとめ役がいなかったので、領に残らざるを得なかったのだ。しかしその役はお義姉様に引き継いだので、晴れて国防大臣夫人として王都に住めるようになった、ということだ。お母様については領の広報活動もやって貰うので、今後は更に観光客が増えるかもしれない。


ただ、お義姉様が妊娠しているため、お母様が王都に行く時期を遅らせようという話が出たのだが、私の施術が良かったのか、あれから体調がかなり回復したようだ。ついでにお義姉様にも例の体操を教えたので、恐らくは魔力循環不調による体調不良は防げるはずだ。


そういった理由で、結局予定通りに移動することになったのだ。




お母様が王都に行くことで、メイドや料理人なども何名か増えている。それと、私付のメイドもクラリアからローゼイラに正式に交代となったので、現在私にはローゼイラが同行している。


クラリアは見送ってくれているが、私が渡した髪飾りを付けてくれているようだ。メイリースの時と同様、属性に合わせた石を拾って来て髪飾りに加工したものだが、あれは人工光で赤くなるから、今は青色だ。相手の人は水属性らしいからね……。


リーズについても当然同行しており、これから専属護衛としての引継ぎを行っていく予定だ。


お兄様やお義姉様、その他の皆の見送りを受けながら王都に転移した。




次の日から通常勤務が始まった。当面は新年の挨拶回り、不在間の状況掌握などで大きな行事は無かったが、宰相閣下の所に行った際には、お義姉様から何かしらの報告がある旨の話をしておいた。昨年のこの時期は、ワターライカ領主の件で結構荒れた雰囲気だったから、のんびりした雰囲気なのは良い事だと思う。


年初めの省定例会議についても、精霊術士集中鍛錬の話など、予定されていたものが殆どであり、大きく話題になるものは無かったので安心していたのだが……。




暫くして、夕食の時にお父様が


「どうやら、王太子妃殿下がご懐妊されたらしい」


と教えてくれた。既に男子であるリーディラゼフト殿下がいらっしゃるから、そこまで大騒ぎにはならないとは思うが、王族の誕生自体が大きなニュースだからね……。


何らかの権力争いも発生するから警戒する必要があるし、単純に喜ばしいとは言えないのが難点だが……これで我が家に誕生する新しい家族と性別が違っていたら、結婚とか、少々面倒な話も出て来るかもしれないね……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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