第370話 再び新年の挨拶会に参加した
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護衛達と鍛錬したり、奪魔掌の更なる改良などをしているうちに年が明け、1527年となった。
朝食時に家族で神様に年初めのお祈りをして、お父様の
「新たな年を祝おう」
という言葉と共に、色々飾りつけられている縁起物の料理を頂いた。
それから、新年の挨拶会の準備を行い、昨年同様、家族全員で領行政舎に移動した。まあ、今回はお義姉様がいることが少々違っているのだけれども。
私達は一旦領主室と応接室に待機し、皆が揃ったところで職員に案内され、広間に入場した。最近は光魔法の照明用魔道具が普及しだしたから、以前よりもかなり明るい。それに、水晶像にも光が当てられて、煌びやかに飾られ、存在感を増していた。
お父様が新年の祝いの言葉を述べ、新年の挨拶会が開始された。基本的には流れは同じだが、やはり次期領主夫人であり、公爵家から嫁いで来たお義姉様は、特に注目を浴びている。
特に現在、西公領とは交流が活発化しているので、お義姉様の考え一つで立場が変化しかねないため、周囲はかなり気を使っているらしい。特に商工組合長など、どう表現したら良いか判らない複雑な心境のようだ。
挨拶の時間が終了したので、私は年明けそばを食べた後、空いている参加者の所に行くことにした。まあ基本的に殆どの人は知り合いだけど、お義姉様対応で忙しそうな人達以外の所かな……。
とりあえずパティの所に行こうとしたら、昨年と同じような目をしていたので、後で感覚共有をして話に行くことにして、レニの所に行った。どうやらレニをエスコートしているのは、茶会で話のあった、婚約者殿らしい。
「新年おめでとうございます、レニデロアナ様。今年も宜しくお願いしますわ。そちらの方は、婚約者殿かしら?」
「こちらこそ、新年おめでとうございます、フィリストリア様。今年もどうか宜しくお願いします。こちらは私の婚約者ですわ」
「お、お初にお目に掛かります! さ、サームバルク・メニスレアと申します! 領軍に勤めております!」
「メニスレア行政官には良く一緒に仕事をさせて貰っておりますわ」
メニスレア男爵は、アルカドール領の古手の行政官の一人であり、産業振興などでもそれなりに話している。夫人とも茶会で話したりしているが、息子さんと話すのは初めてだ。確か次男さんだっけ。
「おお、父からも良くお嬢様のお話を伺います! ご挨拶させて頂いて光栄の極みであります!」
何か非常に食いつきがいいな……と思っていると、何だかレニの様子が微妙に……ああ、確かに婚約者そっちのけで話されたら機嫌を悪くするのは道理だ。お邪魔虫は退散しよう。
「婚約者を大事になさって下さいな。では、失礼しますわ」
……あからさまに逃げて来たが、レニはほっとしているようだ。やっぱりこういう場は深入りしないように気を付けないといけないね。
ふむ……知り合いは……と、ネリスを発見したが、やはり持っていた撮像具で、周囲への挨拶もあまりせずに撮影をしている。そして、私を見つけていつもの様に撮影しに来た。首から「撮像具使用許可証」と書かれている札を掛けている。あれは聞くところによると、お祖父様が準備したものらしい。まあ、一応悪気は無いようだし、何だかんだ言って良い感じの構図を選んでくれるからいいのだけれどね……。
さて……お兄様とお義姉様は、相変わらず様々な人達に囲まれて話をしている。まああれは仕方がない。
私があちらに行くと、更にややこしくなりそうなので行くのを遠慮して、とりあえず料理などを食べておこう。
ふむ……豆腐料理があるな。豆腐は今の所一般家庭には殆ど広がっておらず、高級食材枠に収まっているそうだ。大豆から手間をかけて作るので、そこまでして食べたいとは思わないのだろう。どちらかと言うと、うちの場合はおからの副産物のような扱われ方をしていて、微妙に勿体ない気がする。
おからについては、私が知っている料理をうちの料理人達に色々教えたので、週に1~2回は出て来るが、それは基本的にお母様の注文だ。
雪花会の人達にも、おからが美容と健康に良いという情報を教えているそうで、今この会場にいる会員達は、どの方も健康的だ。私としては、寒い日には湯豆腐など食べたいところなのだけれど……まあ、健康的なのは良い事かな。
おや、お兄様達の輪の中からコルドリップ先生が外れたな。食事を取りに来たようだ……その途中で私、と近くで私を撮っていたネリスを見て、少し顔をしかめた。まあ、父親としては微妙な気持ちになるのだろう。目も合ったことだし、少し話してみようか。先程挨拶は終わっているから、割と気軽に話せるしね。
「先生、少しお話して宜しいでしょうか?」
「ええ、お嬢様、大変光栄にございますよ」
流石のネリスも、父親が近くにいるとやり辛いらしい。ここを離れて別の場所へ行った。
「ふふ、流石のネリスも父親の前では態度を変えるのですね」
「お恥ずかしい。全くどうしてあのように育ったのやら。これからまともな相手が見つかるか、心配ですよ」
「あれでも魔道具研究にかけては優秀ですから、そのうち爵位を頂けたなら、多少行き遅れても引く手数多となりますわ」
「確かにこちらに帰って来ても、用事のある時以外は部屋で研究をしていますから……そうであって欲しいのですが。ところで娘は現在、何の研究を行っているのでしょうか。私には聞いても教えてくれないのですよ」
「大魔力を生み出す魔道具のようです。完成すれば、非常に素晴らしい魔道具になると思いますわ」
「何と! 確かに完成すれば歴史に名を残すでしょう。かのワターライカ伯爵のように」
「娘さんもあれで頑張っているようですので、暫くは見守ってあげて下さいな」
それから、ネリスを心配するコルドリップ先生を宥めつつ、領政について気になった所などを話したりした。その後は、酒が飲めなくて悲しそうにしているロナリアの所に行って、色々話しているうちに、挨拶会は終了した。
夕食後、地精霊と感覚共有をしてパティの所に挨拶に行ったところ、チョコレートを食べながら考え事をしていたようだ。また太る……とは言わないでおこう。
『パティ、新年おめでとうございます』
「……ああ、フィリス、新年おめでとうございます。今年もよろしくね」
『こちらこそ宜しくお願いしますわ。ところで、何か考え事をしていたのでしょうか?』
「ええ。私が精霊術士を辞めた後の事を考えていたのよ」
『あら、こちらに帰るのではないのかしら? 貴女なら大歓迎だと思うわよ?』
「でもねぇ……私が25才まで精霊課で勤務したとして、いい感じの旦那さんって、この領にはいない感じなのよね……今日の挨拶会に出てみて、それが良く分かったわ」
『確かに……そうね』
「なら、いっそのこと新天地で暮らしてみるのも、悪くないかも……と思っているのよ。勿論、いい旦那さんがいることが最低限の条件だけどね」
『ふーん、それなら、今のうちから意中の男性と婚約しておくのは如何でしょうか? 確か最近、魔法兵団の殿方と仲が良いという噂を聞きましたが……?』
「えっ! フィリスの所にもそんな話が届いているの? それは誤解よ!」
否定しつつも、満更でも無さそうなパティをからかったりしているうちに時間が経ったので、家に帰って感覚共有を終了して休んだ。
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