第369話 頼まれた領内の工事を行った
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今日は午前中にセイクル市内の聖堂に行くことになっていたので、空動車で向かった。相変わらずギャラリーの方が大勢いたが、特に問題無く精霊術士候補を探すことが出来た。
火と風が1名ずつおり、終った後は領行政舎の戸籍担当の人と、候補者の親御さんと思われる人達が今後の話をしていた。
その後は大きな用事は無く、市内の知人に会ったりした。メイリースの家にも行ったりしたが、お子さん達は更に成長しており、可愛らしかった。精霊が見えるラメイスも順調に成長しており、今回は普通に挨拶をしてくれた。精霊だけでなく、人ともきちんと接しているようなので、安心したよ。
その次の日は大きな用事は無く、家で護衛達と鍛錬をして過ごした。なお、長年我が家の護衛を務めていたオクターが、少し前に年齢を理由に護衛を辞めたそうで、今はセイクル市郊外の家に住んでいると聞いた。
実家は牧場を管理している家の一つだそうで、今は牛の世話をやっているそうだ。郊外なので、稀に魔物が出る時もあるらしいが、護衛の時よりはのんびり出来ると聞いている。何はともあれ、お疲れ様でした。
今日は、先日話があった、ノスフェトゥス国からやって来た流民達を集めて作った開拓村、ノスト村という名前らしいが……そこの周囲を壁で覆う作業を行うため、現地に向かった。空動車には、テルフィ達護衛のほか、担当の行政官や領軍からも人を連れて来ている。
セイクル市から2時間程でノスト村に到着し、村長や警備隊長を交えて、作業の要領を話し合った。
「恐らく、この付近までは畑を作れそうですので、この位置に壁を作って頂きたいのですが……」
「待て。そこまで行くと森に隣接してしまう。警備上問題があるのではないか?」
「では、この森の木をこの付近までこちらに移し替えては如何でしょうか? これで丁度この出入口からこちらの道との動線も繋がりますから、利便性も向上するのでは?」
「お嬢様はそのようなことまでお出来になるのですか……? もし可能でしたら、お願いします」
「承りましたわ。それとこの辺りですが……」
といった感じで話を進め、その後一旦現地を見るため、空動車で村を一周した。その間、村人達には不用意に近付いて作業に巻き込まれることの無いよう、壁の作成などを行うことを達した。
それと、見た感じでは村内の道もあまり整備されていないから、併せて道も整備しておくことになった。この範囲であれば、和合して作業を行えば、さほど時間を掛けずに終わるだろう。
現地確認が終わり、村の中央付近に移動して、和合を始めた。
【我が魂の同胞たる地精霊よ。我と共に在れ】
和合を完了し、まずは村と周辺地域一帯の掌握を始めた。地面を通じ、地域内の膨大な情報が入って来る。とりあえず壁を作ろうとしている所に人はいないようだ。株を移し替える予定の森も問題無し。
ということで、まずは移し替える先を適度に均しつつ、穴を作り、そこに木を移して行く。株ごと地面から切り離してそのまま穴まで移動させ、土で埋めつつ、根付くように地属性のエネルギーも多めにしておく。その作業を手早く行って空いた土地を作った。
次は村周辺の壁だ。土は近くの丘を削って持って来て、指定された場所に盛っていった。それが完了すると、次は成型だ。高さと幅は3クール、地球の単位で言うと概ね2.7mの壁を作り、石化していく。その壁の上には更に落下防止用の壁を作り、上がって警備することも可能にしている。
壁の形は上から見ると概ね正方形だが、それぞれの辺の中央付近には入口となる場所を作った。後で門や詰所などを作るらしいが、それは任せよう。後は村内の主要な道路を均して固めて……よし、こんな所かな。
「このような感じで宜しいでしょうか?」
私の作業を見て、驚いていたらしい村長達は、暫くしてから反応し
「お、おお……遠くに突然壁が現れて、驚きましたぞ! それに、村の道がこのように立派に……お嬢様には何とお礼を言って良いやら……」
「領内の生活を豊かにするのは領主家の仕事ですわ。ところで、他に作業はあるかしら?」
「そ、それでしたら……もし可能でしたら、井戸を作って頂きたいのです」
……井戸なら同化で対応出来るな。なら、和合は解除させて貰おう。
それから、井戸が必要な地域に移動し、水精霊から適地を確認し、右手を地精霊と同化させ、井戸を掘る作業を数回繰り返した。
「本当にお嬢様や領主様には感謝しきれません。我々はノスフェトゥス国での生活が出来なくなり、こちらに逃げて来た流民でしたのに、この様な土地に住まわせて頂き、そしてこのように、生活を守って下さる……有難うございます」
「人は誰しも幸せになる権利があるのですわ……勿論、その為の努力は必要ですが。今後も暫くこの村には流民を受け入れて貰うことになると思いますが、皆、力を合わせて励みなさい」
「承知致しました」
そこで村長達と別れてセイクル市に帰り、お父様やお兄様に報告して、その日の作業を終えた。
それから暫くはのんびりと過ごし、プトラム分領の港を整備する日となった。泊りがけで作業を行うので太守邸に宿泊することになっている。リーズもあちらに帰っていると聞いているし、セレナとも話せるかな。
空動車で2時間程移動し、プトラム分領の中央街に到着し、まずは太守のアプトリウム子爵に会いに行った。遠隔談具も設置されているので、セイクル市との連絡は容易に取れるようになっており、私が来ることも事前に分かっていたようで、歓迎された。また、その際にリーズの事もお願いされた。
その後、港湾管理の担当行政官、つまりセレナの旦那さんとも会って、港湾拡張工事の計画や、奥さんであるセレナの話などをしつつ、現地に移動した。
「では、本日はこの辺り一帯の底を深くしつつ固めますわ」
「宜しくお願いします」
今回の工事は、外国にも航行可能な大型船でも使用可能な船が寄港できるようにするためのものだ。以前は海底を均しただけだったが、今回は全体的に掘り下げ、船底がぶつからないようにすることが目的だ。
海にも入るので導師服でやって来ており、両足と左手を水精霊、右手を地精霊と同化させ、停泊中の船を避けつつ海底を掘り下げていった。その際出た土砂は、埠頭の強化に使ったり、余ったら水流を作って沖の方に流したりした。
作業が終わり、その日は太守邸に宿泊した。
中央街の別の区画に住んでいるセレナもこちらにやって来ていて、リーズも一緒に色々話したりした。セレナは旦那さんとうまくやっているようだ。正直昼に旦那さんと話した時も、半分惚気に聞こえたからね……。
次の日は、近傍の漁港を大型船での漁が出来るように拡張したいという要望に基づき、工事を行った。特にこの漁港は、カマボコ工場やフリーズドライ加工工場が近くにあり、需要が大きいので、大型船を使いたかったらしい。
最近はこの付近にも居住区が広がってきており、漁師だけでなく工場で働く人達の多くが住んでいるとのことだ。
以前は漁師を引退したら、塩田で塩を作るか、魚醤を作るくらいしか仕事が無かったようで、結構な人達があぶれていたようだが、今では製塩に加え、こちらの工場でも働いているため活気があるそうで、これに加えて夏頃には観光客が多くなるので、それはもう賑やかになるそうだ。
最近ではテトラーデから米が入って来ていて、観光客用に海鮮丼などを出しているそうだ。特に人気があるのがふんだんにウニを乗せたウニ丼、カニの身と味噌を贅沢に乗せたカニ丼らしい。その話が出た時にうっかり顔に出てしまったのか、その日の昼食はウニカニ丼だった。勿論美味しく頂きました。
こうして、漁港の方の整備もしっかりと進めたので、今後は更に水揚げも増えて行くだろう。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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