第368話 領の詳しい状況を確認した
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次の日、朝からお父様やお兄様と一緒に領行政舎に行った。不在間の状況を詳しく聞くためだ。首席行政官のコルドリップ先生達から、細部状況を確認したのだが、現状は順調に進んでいるようであった。ただ、併せて報告をしてくれた領軍長の話を聞くと、良い事ばかりではなさそうだった。
「成程。ノスフェトゥス国側の動きが活発になっているということだな」
「その通りです。流民だけならまだしも、国境付近で小規模な偵察が繰り返し行われております。今は落ち着いておりますが、そろそろ春になりますので、また活発になると思われます」
「国防省の方にも概要は届いていたが、それほど頻繁なものだったとはな……可能性としては、主要経路である北東街道沿いの侵攻ではなく、小部隊毎に小道を使用して領内に浸透しようという所か。対応するためには、広範囲に部隊を展開する必要があるな。領内の即応態勢は問題無い様だが、ガスマークとは連携が取れているのか?」
「早馬を準備しておりますが……緊急時にはもっと早期に対応出来た方が望ましいですな」
第1歩兵隊の駐屯地であるガスマークはトリセント領にあるので、いざ出動しようにも距離が離れているから、即応態勢はもっと整備した方が良いかもしれない。
「では、ガスマークにも遠隔談具を保有して貰うのは如何でしょうか?」
「ふむ、確かにその方が良いだろう。王都に戻った際に指示するとしよう」
「それは助かります。後は領軍にも空動車が導入出来れば良いのですが……」
「伝令や拠点警戒などの限定的な任務であれば問題無いが、部隊としての運用をするとなると、どうしても導き手が必要だ。やはり風の精霊術士が我が領にも来て貰えると有難い所だな」
風の精霊術士で、次に退官予定となっているのは、フェルダナかな。彼女は王都出身だが、そこまで王都にこだわりは無さそうなので、調整は可能なのだろうが、現行の法令に則ると3年後だな。うちの領出身の精霊術士だと、恐らく来て貰えるだろうとは思うけれど、一番早く退官するレブネアでも、私より年下だからかなり先だ。とりあえずその様な話をしたところ
「お嬢様、退官予定日が近い風の精霊術士殿のために釣書を準備しますので、好みの男性の傾向などを聞いて頂けないでしょうか」
と、真顔でお願いされた。王都に戻ったら、それとなく聞いておこう……。
その後、帰省中に行えるような作業を確認した。すると、例の開拓村? について、警備上の観点から周囲を壁で覆ってしまいたいとのことだったので、作ってしまうことにした。簡単に逃げ出せないようにして、監視を容易にするという意味もあるようだから、年内にやってしまおう。後はプトラムの港を更に拡張するという話か。こちらも年末に行うことになった。
領行政舎を出て、甘味研究所に向かった。こちらは建物が増築されたようで、更に人が増えていた。他の領から修行に来る人もいるらしく、レシピの取扱いに準じて対応しているようだ。当然多額の謝礼が必要となるが、そういった人達は基本的に貴族お抱えなので、金銭面の心配は無いそうだ。
色々な試作品を頂いて、感想を述べたり今後の助言などを行ったりしたが……これらの経験を積み上げて、出来れば魔道具などで作ることが出来れば、更に発展するのだろうけれど、魔道具は高価だからね……魔石の生産が出来るようになって貰いたいものだ。
そして、菓子折りなどを準備しつつ、甘味研究所を後にして、アプトリウム子爵のセイクル市邸に向かった。リーズを私の専属護衛として雇うにあたり、許可を貰いに行くのだ。
アプトリウム子爵は基本的にプトラム分領の方にいるので、セイクル市邸には夫人がいると聞いている。港の工事のためにプトラム分領には向かうが、その前に夫人に話をしておく必要がある。
お父様を通じて連絡はしておいたし、リーズにも今日伺うと言っておいたので、問題は無いだろうが、こちらからも話を通さないとね……。
セイクル市邸に到着し、部屋に案内された。暫くして、夫人とリーズがやって来たので、許可を頂きに来たことを話すと、夫人からは
「うちのリーズが、そのような大役を担うなど、余りある光栄に存じます。リーズが健常な状態で成人を迎えられますのは、お嬢様のおかげですので、本来であれば無条件に奉公させて頂くくらいでも良いと思っているのですが……親としては気掛かりな点がございまして」
「お母様!」
「いいえリーズ、これだけはお伺いさせて頂きます。娘の嫁ぎ先についてですわ」
なるほど、確かに親としては気になるところだな。
「娘には、基本的に自由に生きて欲しいと思いますが、お嬢様のお力で何とかここまで成長出来ましたので欲目が出て来てしまったのか、最近では夫ともそういった話をしておりまして……」
「いえ、ご両親がそのように思われるのは当然ですわ。勿論リーズメアラ様には、お相手がいらっしゃいましたらご婚姻されても問題ございませんわ。ちなみにもう既にお相手がいらっしゃるのでしょうか?」
「そ、そんな人はいません!」
「リーズ! ……失礼致しました。現在、娘には気になる殿方はおらず、今回の帰省で私どもが婚約者を調整しようと考えておりましたので、現段階ではおりませんわ」
「では、当座の間はリーズメアラ様本人に任せ、20才頃にご両親から勧めてみるのは如何でしょうか」
「それをお許し頂けるのであれば、私どもは問題ございません。宜しくお願いします」
「こう申しては何ですが、私の専属護衛は様々な場所で男性との接点がございますから、そのうちお相手が見つかるのではないかと思いますわ。実際、前の2人は特にこちらから紹介するまでもなく、見つかりましたので」
レイテアに至っては求婚者が殺到したくらいだからね……。私の専属護衛は、こう言っては何だが目立つし、リーズの場合、騎士学校時代からの知り合いとかも多そうだから、案外すぐに見つかるかもしれない。まあ、この件に関しては暫く様子を見よう……。
その後は、リーズの在学中の話などをした後、家に帰った。
次の日は、恒例のお母様が主催する茶会があったが……その前に新たに私付のメイドになる人を紹介された。
「ローゼイラ・ニスクスと申します。宜しくお願いします」
「こちらこそ、お願いするわ」
水属性を示す青色の瞳で赤髪という容姿なので、あまり似ていないが、パティのいとこにあたるらしく、戸籍は平民だがそれなりの家らしい。話した感じでは、物静かだが仕事はてきぱきとこなすタイプのようだ。暫くはクラリアと一緒に働いて引継ぎを行う予定だ。
ということで、ローゼイラは早速午後の茶会の準備をクラリアに教わりながら行っていた。
午後になり、セイクル市に住む貴族夫人や令嬢が集まり、茶会が開始された。当初私は夫人達の所で色々話したが……ロナリアは、懐妊したのは喜ばしいところだが、禁酒が堪えるというのはあまり笑えない話だった。無事にお子さんを産んで下さいな。
それと、私が付けているダイヤの髪飾りについても質問されたが、そのうちドミナスの方で製造される見込みであることを話すと、皆非常に嬉しそうだった。
暫く夫人達と話してから、令嬢達の所に席を移した。
今回も2名、初めての令嬢がいたので紹介して貰い、領の話を色々聞いたのだが、どうやらレニに婚約者が出来たようだ。相手は領軍の部隊長候補らしく、お父さんである領軍長が目を掛けている人らしい。レニも満更ではないようなので、問題なさそうだ。
また、リーズが次の専属護衛になる話をしたところ、驚かれたが、リーズは皆から激励されていた。
ネリスは、この場に撮像具を持って来ていて紹介しつつ、やっぱり私を主体に撮影していた。話している限りでは、お祖父様と意気投合? したようで、午前中も撮像具の使い方を教えに行っていたらしい。まあ、写真を撮るのが趣味な人も前世には結構いたから、そういう意味では問題無い……のか?
あと、茶会が終わり、皆が退出する時に、パティから
「あの子は無口だけど、悪い子じゃないから、宜しくね」
と、お願いされてしまった。まあ、仲良く出来るようにはしよう。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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