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第361話 お兄様の婚姻式が行われた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

国軍総合演習が終了し、通常の業務が続いた。休日も普通に休めたが、冬なのでビースレクナ領の方に奪魔掌の練習に行く事も無く、王都邸で通常の鍛錬などをして過ごし、第3週の週末になった。


事前の調整通り休みを取って、明日のお兄様とチェルシーの婚姻式の準備を行っている。こういった冠婚葬祭の際は、通常であれば馬車などで移動をするところだが、お互いの家長については仕事の都合により、前日に転移門で移動することになった。勿論転移門の使用は、魔力が有り余っている私が行う。


チェルシーやその他西公組は、船を利用して移動し、先行してアルカドール領入りしている筈なので、私が移動支援を行うのは、お父様と宰相閣下のジャスクナード様だ。


お父様と一緒に王都邸でジャスクナード様を待ち、到着後、転移門でセイクル市の本邸まで転移した。ジャスクナード様は、明日の準備や家族水入らずで話をしたりするために、既に到着していた西公組と合流した。西公組の宿泊は本邸だが、私達については、今日のところはこれ以降一緒に行動することは無いようだ。


私はお母様やお兄様に挨拶をして、明日の準備……と言っても私が表立って行うのはドレスや装飾品の確認くらいだが……を行った後に、自室で待機しつつ、明日の天気を確認した。どうやら私が天気を操作するまでも無く晴れの様だ。


明日はパレードもあるから晴れていた方が良い。雪の中パレードをやるのはお兄様達にも民衆達にも大変だからね……。聞いた話では、パレードの経路は雪かき済で、住民は基本的に皆出て来て並ぶことになっているらしい。


強制ではあるけれど、利益が無いわけではなく、その後は街の酒場などでの飲食代が全てアルカドール家が持つから、文句を言う住民はいないそうだ。さて、私も明日は早朝から色々あるから、部屋の中で体を動かしておこう……。




夕食後、部屋で寛いでいると、チェルシーが訪ねて来た。何の用だろうと思いつつ、部屋に招き入れた。


「フィリス、有難うございます。少しお話がしたくなって……」


「チェルシー、いつでも構いませんわ。どうぞこちらにお座りになって」


来客用の椅子に案内し、クラリアを呼んでお茶を入れて貰った。見た感じ、楽しそうではないから、これは所謂マリッジブルーという奴だろうか。まあ、環境が大きく変化するわけだし、仕方ないかな。




暫く無言でいたのだが、チェルシーは少しずつ話し始めた。やはり現状が不安なようだ。


「カイからは、信頼出来る関係を築きたい、と言われているけれど、私に出来るのかな……」


「大丈夫、兄は誠実な方ですから。これまできちんと婚約者として扱って頂けていたでしょう? それが夫人という立場になるだけですわ。家の者も貴女を尊重致しますが、もし何かございましたら、私にでも仰って頂ければ、いつでも相談に乗りますわ」


「でも……カイは私を……見てくれない……」


……? 、それは恋愛対象として見て貰えてない、ということかな? 正直、今の年齢で考えると、4才差だから、お兄様からするとチェルシーは妹が増えた様にしか見られていないのかもしれない。


しかしながら、会った当初は6才だったから幼いイメージだったが、今では成長して、お兄様の隣にいてもおかしくない立派な令嬢だし、明日からは義理の姉になるのだ。


この世界の常識的には、離婚をすることはあまり無いし、基本的には政略的な意味が強い結婚だから、アルカドール側から離婚するということは今の所ありえない。現状では諦めが肝心で、恋慕の情は必要無い、とも言えるわけだ。


結局の所、今後何十年も一緒にいれば、恋愛とかは関係無くなるだろうから、この人と過ごして行けるかどうか、という点が重要になるのだと思う。前世の日本の常識とは異なるかもしれないけれど。


「今がそうだからと言って、今後そうならないとは限りませんわ。ただし、人の心はどうにもなりませんから、期待しすぎてもいけませんが。それよりも、今後兄は、一番身近な家族となりますわ。今後何十年も助け合いながら、共に暮らすのですから、そういった観点ではどうでしょうか。カイダリード・アルカドールは、信用できない男性でしょうか?」


「……ううん、私には勿体ない位、素敵な方」


「それなら良かったですわ。でないと、私は今から兄を問い詰めなければいけない所でしたから」


「……ふふっ、そうね、これからだものね!」


漸く笑ってくれたチェルシーと、暫くお兄様の話題で女子トークを行った後、明日も早いということで就寝した。




婚姻式の日となった。当然私は婚姻式及び祝宴に参加する。式と祝宴の間にセイクル市内のパレードが行われ、新郎新婦の2人が民衆に祝われながら移動するのだが、今回使用するのは馬車ではなく、特別製の空動車だ。基本はワゴン型だが、今回はオープンカー仕様に改造している。


朝早く起きた私は、準備を終えて婚姻式が行われる聖堂に移動した。


聖堂に到着し、まず新婦であるチェルシーに挨拶に行った。今日は情緒不安定な様子も無く、どちらかと言うと婚姻式が待ち切れないような感じだった。チェルシーはペルシャ様の婚姻式の時と同じように、シンプルな白いドレスを着ていたが、紅薔薇の冠を使っていた。


その後はお兄様の所に行ったが、落ち着いているようだった。まあ、領主になるなら、このくらい平然とこなすくらいでないといけないということかもしれない。


式は予定通り行われた。新郎家の長であるお父様及び新婦家の長であるジャスクナード様の立ち合いのもと、司教様が祝詞を新郎新婦に向けて唱えていた。それが終わると新郎新婦に問いかけた。


「カイダリード・アルカドール。汝は、この女を妻とし、神の教えに従い、共に生きると誓うか」


「誓います」


「チェルシアーナ・ウェルスカレン。汝は、この男を夫とし、神の教えに従い、共に生きると誓うか」


「誓います」


「両家長よ、新たな夫婦の誕生を認めるか」


「認めます」「認めます」


「神の御名において、婚姻は成った。新たな夫婦の誕生に、祝福を」


司教様のその言葉で、私を含めその場に居合わせた人達の拍手の音が、聖堂内に鳴り響いた。




その後は、新郎新婦はパレード、その他の人は祝宴への参加準備の時間となった。私はクラリアにドレスを着せて貰い、お兄様達がパレードから帰って来るのを待ちながら、ついでに風精霊と感覚共有を行ってパレードの様子を観に行った。二人は手を軽く振って民衆の祝いの声に応えていた。




祝宴の時間となったので、会場である大広間に移動した。


お祖父様と一緒に暫く待っていると、新郎新婦と双方の両親が入場し、大きな拍手で迎えられた。そしてお父様の挨拶で祝宴が始まった。私はお兄様達に合流し、暫く挨拶受けに付き合った。基本的には領内の貴族家当主や有力者が祝宴に参加している。領の外からは、雪で参加が難しいことから殆どいないが、西公家と関係の深い貴族は、少数ながら参加していた。御苦労なことだ。


その中で、私は久しぶりにルカとセレナに会い、話をした。セレナはまあ特に問題無いだろうけど、ルカは一応様子を見ておこうと思ったわけだが……心配は杞憂に終わった。しっかり旦那さんと信頼関係を築いているようだ。


古くからの郷土料理に加え、これまで開発して来た様々な料理やお菓子、精霊酒などもふんだんに出され、食事の面でも盛り上がっていた。そばなども食べてみたが、以前より更に美味しくなっていた。主役の2人は、ろくに食べられないので大変だろうが、そういうものなので割り切って貰いたい。




大盛況だった祝宴も終了し、アルカドール本邸に静けさが戻った。お父様達は親同士で引き続き飲み明かすそうだが、女性陣は就寝するようなので、私も仕事があるから休ませて貰おう。お兄様とお義姉様は……言及するのは野暮か。仲良くやって下さいな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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