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第355話 領主任命の儀や祝宴に参加した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

収穫祭3日目、最終日については、王城で各種式典が行われている。


特に午前中はヴェルドレイク様の領主任命の儀があるので、陪席させて頂くことになっている。昨日の試合で軽い疲労が残っているものの、行動を阻害するものではないので、制服を着て普通に登城した。




各種式典は謁見の間で行われる。叙爵の儀などが終了し、一旦装飾などの交換がなされた後、陛下が臨場されて玉座に座り、任命の儀が開始された。


「ヴェルドレイク・セントラーク、前へ」「はっ!」


ヴェルドレイク様は陛下の御前に出て、跪いた。


今日のヴェルドレイク様は、領主の正装を着ている。かなりごてごてしていて歩きづらそうだが、まあ、今後は権威を背負わないといけないわけだから、仕方ないとは思うけど、自分が着るのは嫌だな……着ることはないけど。


「ヴェルドレイク・セントラーク。そなたは神より賜りしこのロイドステアの地の一部を任せるに足る者であると認める。伯爵となり、ワターライカ領を統治せよ」


「偉大なる我が王の、輝かしい治世の一隅を担えるとは、我が身に有り余る幸せでございます。身命を賭して、偉大なる王の威徳を領内に下知致しましょう!」


「うむ。今後はワターライカ姓を名乗り、その身に命を刻むが良い」


陛下がヴェルドレイク様の前にお出でになり、王笏を侍従の差し出す盆から取り、手渡した。あの王笏は、神から統治を任された証ということで、王の権威を意味しているらしく、その一部を貸与するということらしい。


聞いた話では、陛下の持つ王笏はもっと長く、ごてごてしているらしいが見たことは無い。今目にしている王笏は、以前西公襲爵の際に見たものとは違って、少々短いので、恐らくは爵位によって異なるのだろう。


通称では十把一絡げに「王笏」だが、一応こちらの正式名称上では区別があるので、敢えて言うならば、陛下の王笏はそのまま「王笏」で、公爵だと「公笏」伯爵だと「伯笏」とでも言った方が良いかもしれない。


ちなみにこの王笏、カラートアミ教に依頼して作って貰っているらしいが、特に何らかの力を持っているわけではないようだ。


「偉大なる我が王よ。私ヴェルドレイク・ワターライカは、偉大なる王より賜りし王笏の輝きにより、領民を導き御代を讃え、務めを奉ずることを、御前にて誓います」


陛下は頷かれて、玉座に戻られた。ヴェルドレイク様は退出し、領主任命の儀は終了した。


私は宴の準備もあるので王都邸に戻った。




軽食を取った後、化粧やドレスの着付けなどを行い、再度登城した。


今年の宴も、宰相閣下、各大臣、各省の課長級以上、その他学校や軍、各研究所などの要職の方々、各国大使、その他参加可能な領主達が参加しているが、その中には当然、本日ワターライカ領主となったヴェルドレイク様もいる。


皆も注目しているのか、既に多くの人達に囲まれているようで、陛下達が入場される前からかなりざわついていたが、陛下達が入場すると、静まり返った。


例年通り、陛下の開催のお言葉で宴が始まったが……今回は、ネリス達撮像班? が壇上の陛下達を撮っていたのが結構目立っていた。今後は主要な宴の時には、こういう動きも当たり前になっていくのだろう。


挨拶回りは簡単に済ませ、まずはヴェルドレイク様の所に行った。やはり多くの人達に囲まれていたが、私が近付いたためか、人だかりが割れて、普通に声をかけることが出来た。


「ワターライカ伯爵、領主就任、誠に喜ばしいことですわね」


「おお、導師殿。神の御許より舞い降りたかの様な美しき方に祝って頂けるなど、何たる僥倖か。誠に有難きことだ」


……領主となったためか、これまでとは口調が少々変化しているようだ。特に、上下関係的なニュアンスが、以前は下の立場からのものだったのに対し、今ではこちらを立てているものの、同格のような話し方だ。まあ、爵位に関わらず、領主については同格の口調で話しても問題無いとされているからね……。


他にも色々話したいことはあったが、今日は他にもお祝いを言いたい人達がいるだろうから、私は場所を空けて移動した。昨年同様、昨日の武術大会出場について、誰もあからさまに私の優勝を祝ったりはしなかったが、理由なく驚かれることも多かった。


まあ、その辺りは気にしないことにして、知人達の所を回ることにした。とりあえず昨年同様、パットテルルロース様はイリナピピラーデと一緒に参加していた。社交的な彼女は、こういった催し物や宴に参加することも大好きらしい。


「昨日の武術大会を拝見しましたが……最後の方は正直、動きが速過ぎて判りませんでしたね……よく戦えるものですよ」


「そこは日頃の鍛錬の賜物ということでしょうか。そう言えば、ウォールレフテではああいった武術を競う催しは行われないのでしょうか?」


「妖精族は、剣も使いますが、それよりも弓を使う者が多いので、気の向いた時に腕を競ったりしますね」


「パットテルルロース様は、国内でも有数の腕前なんですよ!」


「まあ。それは機会がございましたら、拝見させて頂きたいですわね」


この国にも弓が上手い人はいるだろうし、そういった交流も図っていくのも良いかもしれないね……。




パットテルルロース様達と別れ、レイテア達がいる所に顔を出した。昨年同様、武術大会の話をしていたようだ。ミリナも話に入っていたが、旦那さんのダリムハイト様はいなかった。どうやら女性の輪に入り辛かったようだ。


軽く挨拶をして、少々話に入ってみた。やはり獣化を行った獣人族の動きは一般の人には判らないということだったので、あれは思考加速が使える人か、かなり鍛錬している人くらいしか判らない、と言っておいた。


近年は国外からも多くの人が来ており、その中には獣人族の人もいるわけだが、獣化を使って暴れられると対応が難しくなる……と、不安になる女性もいたが、そこは今後の課題かもしれない。




レイテア達と別れ、休憩がてら食べ物を置いている所に行ったところ、王太子妃殿下に捕まった。


「フィリストリア、あの白殻葵糖について詳しく教えて頂戴」


すっかりホワイトチョコレートが気に入ってしまった王太子妃殿下に、作り方などの概要を教えて、詳細なレシピは甘味研究所に問い合わせて欲しい、と回答した。


「早速製法を取り寄せて作ってみましょう。ですが、確かにアルカドール領の乳製品は一味違っていたわ。あの味が出せないなら、特別便を使った方が良いかもしれないわね……」


王家は、遠方の領などの特産品で日持ちしないものを取り寄せたい時に、異空間収納の恩寵を持った人に運ばせたりするそうなので、ホワイトチョコレートもそれで注文するかもしれないね。




王太子妃殿下から解放され、お父様達やマーク叔父様達が話していたので、挨拶をして話に入った。


「最近は『こめ』の料理が無いと物足りなくてね……現在うちの領で、こういった宴の際にも使える軽食用の料理を試作しているので、意見を貰えると有難いんだ。例えば『こめ』と炒めた肉などを薄皮に包んでみたり、他には何かを混ぜて握り、小さく固めたりしているが、他にも案が無いだろうか」


「マークは大層『こめ』料理を気に入ったようだな……私も辛み煮掛け飯や鶏肉玉子和え飯などを食したことはあるが、中々美味かったな。そういった物はあるのか?」


「ふむ……薄皮に包むのであれば大丈夫かもしれんな」


「叔父様、辛み煮掛け飯には、炒めて水気を飛ばしたものもございますので、それを使うのも宜しいですわ。それと餅を使用した甘味なども、甘味研究所に問い合わせて下されば、ある程度はございますわ」

「ほう! 詳しく聞かせて貰えるだろうか」


とりあえず簡単にドライカレーの作り方、ついでにお団子や大福などについても話しておいた。


文字通り食いつきが良かったマーク叔父様に色々教えているうちに祝宴が終了し、王都邸に戻った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


※ 造語

  白殻葵糖 : ホワイトチョコレート

  辛み煮掛け飯 : カレーライス

  鶏肉玉子和え飯 : 親子丼

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