第035話 レイテア、武術大会への参加を決意する
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午前から昼食時にかけての礼儀作法の授業が終わり、休憩していると、先日注文した棒が届いた。丁度午後は身体強化の実践という名目の鍛錬時間だ。早速試してみよう。
鍛錬場に来て、包みを開けてみると、銀色に光る六尺の長さの棒が出て来た。断面は円形で、太さは、今なら八分くらいでも良かったが、今後使うなら少し太いものにしようと思って、一寸で加工して貰ったが、使うことはできる。重さも大丈夫だ。
さて、魔力を流してみよう……おおっ、腕が伸びたように感じる。このまま少し振ってみると、やはり剣よりバランスが取り易い。剣だと、どうしても重心が剣の方に寄ってしまうからね。その点、棒は比較的徒手の重心を保つことが出来る。魔力により、感覚を棒の先まで延ばすことが出来るようになるので、魔力を気のように考えた場合は、投げなども手に近い感じで行うことが出来る。これはいいものだ……。
早速レイテアや他の護衛達とも対戦してみて、その使い心地の良さに改めて感動する。少し調子に乗り過ぎて、皆を倒してしまった。反省。
夏も終わりに近づいた。教養や礼儀作法の勉強に加え、鍛錬や精霊術の練習もやっていると、結構忙しいが、その甲斐あって、戸惑うことなく精霊と体の同調が出来るようになっている。で、同調の仕方で呼び方を変えるようにした。
部分的に同調するのは「同化」で、全体的に同調するのは「和合」だ。その方が、個人的にはイメージが強化されるので、更にいい感じだ。なお、同化については、言葉を呟かなくても、近くの精霊を見ながら活性化して念じるだけで出来るようになった。複数の精霊を呼び出すことが必要な、和合の方は言葉を呟かないと駄目だけれど。
ある時、遠視と視覚共有の違いについて気になったので、お兄様に聞いてみた。
「お兄様、お伺いしたいことがございまして。お兄様が賜った恩寵「遠視」についてです」
「ああ、かなり練習して、今では領地内なら、色々な所が見聞き出来るようになったよ」
「それは素晴らしいですわ。実は私も、精霊を使役することで、ある程度は遠視に似たことが出来るようになりました。それで、どう使い勝手が異なるか、確かめようと思いまして」
「なるほど。では私と同じものを見てみよう、ということかい?」
「その通りです。ふふ、何だか二人でお出かけするような気分ですわ」
その後、セイクル市を見て回ったり、プトラム分領の方まで見て回ったが、見ているものはほぼ同じだったが、お兄様の方はどの場所を見る時もでもタイムラグがないのに対し、私の方は、風精霊の移動の分、見るのに時間がかかる。ただし、道のような連続するものを確認する場合は、私の方がやり易かった。
「私の方も色々検証出来たし、楽しかったよ。フィリス、有難う」
「こちらこそ有難うございます」
週1回の鍛錬時間を終了し、控室で着替えを行っていると、レイテアが話しかけて来た。
「お嬢様、実は今度王都で行われる武術大会に参加したいのです」
おお、遂に参加を決めたか。最近レイテアは、護衛間の対戦成績負けなしだ。ここで1度、実力を試すのは、更なる成長の為にはいいことだと私も思う。
「参加の意思を固めましたか。貴女の頑張りは、私も含め皆知っていますよ。私からもお父様に話してみましょう」
「宜しくお願いします」
次の日、2人してお父様の所にお願いに行き、許可を貰った。ちなみに、転移門での移動だ。お父様は、最近領内の仕事が忙しく、残念ながら同行できないそうだ。また肩に魔力が滞留していたので、ついでに肩を揉みつつ、治癒してあげた。喜んでいるようで何よりだ。
ということで、お兄様や何人かの護衛、使用人達とで向かうことに決まった。とは言っても大会は一か月先だ。3日間ある収穫祭の中日に武術大会は開催される。収穫祭の前日に移動し、受付を行い、体調を整え、本番に臨むという予定を立て、それまでは通常の生活を送ることになった。
私は、護衛達と相談し、レイテアに贈り物をすることにした。とりあえず準備をオクターさんに頼む。2週間後、物が準備できたので、鍛錬の後、皆に集まって貰って、その場で私からレイテアに渡した。
「お嬢様、先輩方、有難うございます……これは、模造剣ですか!」
「少し使ってみて頂戴。一応、貴女に合わせて作るよう注文したのだけれど」
「はい……え?これ、軽いのに……固い?」
「その剣は、魔法銀製なのですわ。丁度材料が余っていたので、作って頂いたの。大会に必要でしょう?」
「……そのような貴重な物をこの私に……有難うございます」
レイテアは、それからますます調子を上げていき、収穫祭前日、移動の日を迎えた。
転移門に私とお兄様、レイテア達護衛と、メイリース達使用人が、準備をして集まった。私が魔力を流すと、王都の侯爵邸に転移した。事情はこちらの管理要員にはあらかじめ伝達していたため、前の様に準備不足なところはない。荷物を置いて、早速馬車に私、お兄様、レイテア他3名の護衛兼御者が乗り込み、受付会場に前進した。
お兄様と私は、王都を歩くのは初めてなので、迷子にならないよう、手を繋いで歩いた。収穫祭前なので人通りが多いが、その分護衛を多く連れている。精霊にも念のため警戒をお願いしているので、多分大丈夫だろう……と思っていたのだが、受付会場のところで、何故かレイテアが変な男に絡まれていた。
「何だ嬢ちゃん、大会に参加するのか?怪我する前にやめときな。俺のような冒険者も出るんだぜ」
「心配は無用です。私は参加します。こちらは書類です」
受付の人に書類を渡し、受理して貰う間も、変な男は絡んで来る。
「親切にしてりゃあつけあがりやがって。魔物みたいにぶっ殺してやんよ」
「そうですか、対戦することがありましたら、その時お願いします」
「けっ、手前ぇなんざ、ガキのお守りがお似合いだ」
そう言って変な男は去って行った。腹が立つが、大会前に事を荒立てるのは得策ではない。試合で叩きのめせばいいのだ。護衛達もそう思っていた様で、実際レイテアにそう言っていた。その日は寄り道せず、そのまま侯爵邸に帰った。
次の日、収穫祭初日、レイテアは調整の為、侯爵邸に待機させた。私はとりあえずレイテアの魔力循環の流れを見てみたが、全く問題ないことを確認したので、せっかくの収穫祭だし、お兄様と収穫祭を見ることにした。
収穫祭は、主に王都中央広場と、学校や大聖堂などの施設で出し物や屋台などをやっており、午後には陛下達のパレードなどがあるらしい。馬車で行けそうな学校に向かうことにした。
面白そうな出し物がありそうだったので、魔法学校に行ってみた。屋台があったので、立ち寄った所、偶然ヴェルドレイク様に会った。焼き串の売り子をやっていたので、普通の挨拶はできず、略式の挨拶にさせてもらったが。
その場で話していると、級友の方?から、中で話すよう勧められ、お兄様と一緒に中で暫く話させて貰った。手紙ではやり取りさせて貰っていたが、実際に会うとやはり嬉しいものだ。
お兄様も、再来年の春には魔法学校に入学予定なので、実際の学校の様子は気になっていたらしい。ヴェルドレイク様は、その魔力操作の才能を生かすため、魔技士を目指して勉強しているそうだ。やはり頑張っている人を見るのは心地良い。気付けば時間が経っていたので、お兄様とともに挨拶をして、お暇した。
明日は武術大会本番、楽しみだ。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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(石は移動しました)




