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第350話 季節が変わり、収穫祭が始まった

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

秋口となり、そろそろテトラーデ領などでは稲刈りの時期だ。


米作りを始めた頃は実際に作業を見に行っていたが、今では現地の人達に任せていても全く問題無いので、手が空いた時に風精霊と感覚共有を行って作業を見に行く程度になっている。新米はシーラ村に貰いに行くけどね。


テトラーデ領は、元々小麦の生産にはあまり向かない所だったため、主食となり得る米の生産を積極的に進め、今ではかなりの地域に田んぼが出来たし、稲作のやり方を把握している人材も増えた。このまま行けば、相当な米どころになるだろう。


それと最近、マーク叔父様達からの手紙で知ったことだが、領内で緑茶を作ろうと考えているようだ。テトラーデ領と言えば、お茶も有名で、この「茶」というのは、前世で言うところの「紅茶」だった。この世界にも緑茶自体は存在しており、帝国などから輸入したものが該当しているのだが、ロイドステア国では一般的では無かった。


しかしながら最近、米食にシフトして来ているためか、緑茶の需要が増えてきており、領で緑茶を生産してみようという話らしい。緑茶を自国で生産するなら、和菓子のレシピを増やすのも良いし、何ならお菓子の材料としても使えるから、有難いことだ。必要なら、品種改良を手伝うのも悪くないかもしれない。




お兄様が、チェルシーとの結婚の調整のために王都にやって来ている。


今回はウェルスカレン側の「家長」は、現当主であるフェルドミナーク様……ではなく、チェルシー様のお父様である宰相閣下、ジャスクナード様が務めるそうだ。本来は当主が務めるのだろうけれど、流石に婿養子が実のお父さんを差し置くのは……という判断らしい。


ということで、両家長である宰相閣下と国防大臣の都合を合わせないといけないので、時期がかなり限定されるわけだ。今回調整した結果、国軍総合演習が終了した後、予算審議の調整が活発化する前にしようということになり、10月の第3週末になるという話を、お父様から聞いた。


式はセイクル市内で行われるので、その頃だと、特にパレードの際には雪が気になるところだが、いざとなったらこっそりいい感じの天気にさせて貰おう。道路の積雪については、氷魔法を応用して、除雪すればパレードにも使えるようになるだろう。




月末の政府全体会議に参加したが……今回目を引いたのは、魔法省の報告資料だった。総務課長が言っていたように、主要な報告事項には、撮像画が使用されていたため、以前とは見映えが違っていた。私が魔法学校で講義を行った際のものも使用されていた。


他省参加者については、魔法省の資料を見て、撮像具を使わないとまずい、と感じているようだ。特に、宰相府の広報官については直接、魔法省に対して、撮像具による広報活動の支援を会議の場で依頼していた。まあそうなるだろうね……。




8月に入った。まずは恒例の合同洗礼式での精霊術士候補確認だ。今回については1名、風の精霊術士候補が確認されたので、連絡しておいた。


今週の主要業務は、ワターライカ島の開発支援だ。現在は第2次入植が落ち着いた状態で、住居の方は何とか整備出来たらしいが、今後新規入植者達が働く場所などが不足しているようなので、今回はその支援を行うことになっている。


特に、田んぼとその周辺の水路や、漁港の拡張などが主要な業務だ。さつまいもや野菜用の畑であれば、当面の仕事として割り振れるのだろうが、余所から来て田んぼを見たことが無い人にいきなり作らせるのは難しいだろうし、漁港の整備は私でないと難しい案件だからね……。


ヴェルドレイク様とも、開発状況について話した。


「当面は、領として活動する分には、行政官達も尽力した結果、可能となりました」


「ヴェルドレイク様や行政官達の御苦労には、敬意を表しますわ」


「いえ、これは自らが選んだ道ですので。導師様にも、領民となる者達の生活の安定、それと更なる発展のために、御力添えをお願いします」


「勿論ですわ。この地は私や精霊とも深い縁のある地ですから」


「誠に有難く存じます。この島では、精霊や貴女に日々感謝の祈りを捧げる者も多いのです。特に生活苦により、新天地を求めてこの島に来た者にとっては、貴女は救い主とも言える存在です」


「それは過分な評価ですが……精霊への感謝を頂けるのであれば、その甲斐もあるというものですわ」


何だか妙な見られ方をしている様だが……実害が無ければいいかな。


ということでこの週は、新規の田んぼを作りつつ、ハリス・ボルク漁港の拡張を行ったが……確かに、そういった活動を行っていると、所々で私に感謝する声を聞いた。喜んでくれているのであれば有難いが、あまり持ち上げられても困るところだ。




ワターライカ島の支援が終了し、王都に戻ってみると、かなり収穫祭の準備が進んでいた。


当然私は、今回の武術大会にも参加する。正体を隠していたとは言え、一応昨年の優勝者だしね。ということで、今年の参加者の情報などを簡単に収集して貰っている。戦い方や強さなどは、実際に見てみれば判るのだが、何せ自分が参加していると、それを見る機会が殆ど無いからね……。幸い、今回は予選をパス出来るから、その際に可能な限り見せて頂こう。


昨年同様、高揚感を抑えるのに苦労しながらも、収穫祭の日を待った。




そして収穫祭がやって来た。昨年同様、収穫祭前日にはお忍びで受付を行った。今年は昨年の様には驚かれなかったが、応援の言葉を貰った。


初日は武術大会の調整のために屋敷で待機する。朝から軽く体を動かしていると、クラリアが呼びに来た。何と今年は、お兄様だけではなく、お母様とお祖父様も来てくれたようだ。


「フィリス、今年は貴女の活躍を見させて貰うわ。勝ってくれるのでしょう?」


「ふふ、お母様ったら。勝つための努力はしておりますが、保証は致しかねますわ」


「それならそれでもいいわ。ただ、後に残る様な怪我を負わないようになさい」


「ええ。お約束しますわ」


「フィリス、試合を楽しませて貰うよ」


「ええ、お祖父様」


やはり家族に活動を認めて貰うのは嬉しいものだ。明日は頑張らないとね。




今日の所は、お祖父様とお母様は知人の所に行き、お兄様はやはり魔法学校に行くようだ。後から話を聞かせて貰おう。そして私は、調整の合間に、風精霊と感覚共有して、昨年同様、甘味品評会の会場に行ってみた。今年も盛況の様だ。


そして、アルカドール風甘味店の出品を見たところ、今年はやはり、ホワイトチョコレートを使ったようだ。他にも、生クリームやクリームチーズなどを使い、真っ白なお菓子になっている。試食者達も、その外見の美しさと、実際に口にした際の味を褒め称えている。今度食べに行かせて貰おう。




その日の夕食時は、お兄様が魔法学校の展示内容や、品評会の結果などについて話してくれた。


甘味品評会については、最優秀賞だったそうだ。特に、ホワイトチョコレートについては、サンプルとして作っていたホワイト生チョコを献上したところ、王太子妃殿下が感銘を受けていたそうだ。


あれは現段階ではアルカドール領でないと作れないから、わざわざアルカドール牛の販路、つまり異空間収納の恩寵を持つ人を使って輸送したものだからね……。王都ではなかなか食べられない逸品なので、観光に来た際に食べて貰えると有難いかな。


その他、お母様は知人の所でお茶会に参加したところ、そこにいた全員が、領に観光に行くと言っていたそうだ。まあ、お母様の肌は非常に若々しいからね……顔を出す事自体がセールスになってしまう状態だ。


お祖父様は、どこから聞いて来たのか、撮像具に物凄く関心を持っているようだった。私にも詳細を聞いて来たので、発明者であるネリスのことを話すと、今度直接会いたいので伝えておいて欲しいと言われた。光魔法の関係で何かを教えて貰うのかもしれない。




久し振りに家族全員で楽しく食事をした。明日は去年の様な良い戦いが出来ればいいな……と思いつつ、早めに就寝した。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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