表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

351/414

第344話 モリコルチ大陸の魔物暴走対応 1

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

執務室で書類を確認していたところ、風精霊が


『風の神獣がやって来たよ~』


と私に告げた。暫くすると、窓から緑色の狼のような存在が入って来た。これが神獣だろう。


『愛し子よ、我が主から相談したい事があり、やって来た』


と、狼神獣は念話で語り掛けて来た。「我が主」とは、風龍様の事だろうから、これから感覚共有を使って話をするのかな。


「神獣様、今から風龍様と同調される、ということでしょうか」


『その通り……愛し子よ、初めて話をさせて貰う』


狼神獣の雰囲気が変わった。恐らくは、風龍様と感覚共有を行ったのだろう。


「風龍様、お初にお目に掛ります。精霊女王様より加護を賜っております、フィリストリア・アルカドールですわ。こちらにお越し戴けましたこと、誠に光栄にございますわ」


『うむ。急に押しかけてしまったが、相談事があるのだ』


「風龍様の相談事……と仰いますと、魔物対応に関するものでしょうか」


『その通りだ。最近こちら……人達の間では『モリコルチ大陸』と呼ばれておる所で、魔物暴走の兆候があったのでな、近傍の国家……と言うほどまとまってはおらんようだが……ともかく、魔物への対応をして貰おうと使いを出したのだが、奴らは、街壁を強化して、街の中に引き籠ってしまっておるのだ』


「それでは……魔物暴走は、誰が対応することになるのでしょうか」


『誰も対応せんのであれば、我が対応せざるを得ん。ただ……出来れば人の手で収めて貰いたい。故に、お主の所に相談に来たのだ』


ということは、このまま放っておけば、ウィサワーゴ国で見たように荒野が出来てしまう、ということか……。避けた方が望ましいのは間違いない。精霊導師としての仕事の範疇にもなるから個人的には対処に向かってもいいのだけれど、とりあえずは相談してみるか。


「風龍様、一度我が国の宰相と話をさせて頂いて宜しいでしょうか」


『承知した』


それから私は、狼神獣を連れて宰相閣下を訪ねた。ご多忙中だろうけれど、急ぎの案件だからね……。




宰相閣下に時間を取って貰い、狼神獣(と感覚共有した風龍様)と共に話をさせて貰った。


「……あの大陸は、小国家が乱立し、戦乱に明け暮れていると聞いておりましたが、魔物暴走に対応出来ないのでは、国家としての意義がありませんな」


「さりとて、魔物暴走を放置していては、世界の魔力の流れに変調をきたし、魔物達の動きが活発化すると伺っております。我が国においても、それは同様ですわ」


『そこで、愛し子の力を貸して貰えんだろうか。今ならまだ、我が直接対応せずとも愛し子で対応出来る域にあると思うのだが……』


「現在、魔物の勢力は1000体程度と仰っておりましたな。精霊導師殿、対応は可能か?」


「モリコルチ大陸に生息する動物は、我が国とさほど変わらないと伺っておりますから、その数ならば、これから繁殖して勢力が増したとしても問題無いと思いますわ。風龍様の眷属である神獣様達に魔物の群れを追い立てて頂いて、ある程度魔物達の動きを統制して頂ければ、更に対処は容易ですわね」


『それならば可能だ。頼めるだろうか』


「成程。正直、今から他大陸に進出して魔物暴走を収められる国などどこにもない。人間が対応出来る範囲内では、精霊導師殿にしか為し得ない事でしょうな。ですが、精霊導師殿は我が国において掛け替えのない存在であり、また、精霊女王様の愛し子でもあるわけですから、安易な承認は出来かねます」


『確かに。精霊女王にはこちらから話を通す。その他、必要なことは無いか』


「移動手段や、モリコルチ大陸滞在間の食住はどのようにお考えでしょうか。特にかの大陸は、カラートアミ教の転移門も設置されていないと聞いております」


『移動手段は、水龍の棲み処と我の棲み処が転移門で繋がっておるから、それを利用する。目の前の眷属も、そうやって移動したのだ。こちらに来たら、基本的な移動は眷属を使って貰う予定だ。滞在間は……我の棲み処にも人はおるからな、その者に世話をさせよう』


「あと、申すまでも無いことでしょうが、身辺において憂いの無きよう、お願い申し上げます」


『それは当然だ。我も地龍の棲み処がある国で何が起こったか、知っておる』


「であるならば、直ちに陛下に奏上し、裁可を頂きます。精霊導師殿、陛下の所に向かうぞ」


「承知致しました。風龍様、暫くお待ち下さいませ」


『承知した。では、準備を進めておこう』




狼神獣(と感覚共有した風龍様)を宰相閣下の執務室に残し、宰相閣下と私は、陛下の執務室に移動した。移動途中、精霊女王様からの念話が届いた。


『フィリストリア、風龍から話は聞いた。まあ、助力してやれ』


『女王様、承知致しました』


ということで、精霊女王様の承諾は得られた。後は陛下に裁可を頂くだけかな。


「……成程。魔物暴走を座視していては、我が国にも悪影響を及ぼす。精霊導師よ、モリコルチ大陸の魔物暴走を収めて参れ」


「拝命致しました」


陛下にも裁可を頂き、私は早速準備を進めた。


今回の案件では護衛が付けられない。テルフィにはこちらで待機して貰うことになった。あと、お父様の所にはニストラム秘書官を通じて連絡して貰ったのだが……執務室まで見送りにやって来た。導師服に着替えている時に鉢合わせないで良かったよ。




こうして、急なモリコルチ大陸への出張? が決まり、慌しく出発した。


水龍様の棲み処までは、水龍様の眷属である鳥神獣に運んで貰った。一旦アルカドール領まで転移して、という流れでも良かったのだが、少々時間が掛かるし、一度王都から乗ってみるのも悪くないかと思って、狼神獣と一緒に移動したのだが、本当に物凄いスピードで飛んでいた。


最初はかなり恐ろしかったが、鳥神獣の力か、空気が当たって来ることもなく、落下もしないようだったので、修行の一環と考え、落ち着くことにした。


王都から水龍様の棲み処があるダリブノウ山まで、直距離で大体1000キート、概ね900kmくらいだが、1時間程度で到着したので、前世で言うところのジェット旅客機並みの速度で移動したわけだ。改めてその力に驚きつつも、一度水龍様に挨拶してから、風龍様の棲み処に転移させて貰った。


モリコルチ大陸は、以前お祖父様から頂いた本を読んだ限りでは、世界に8つある大陸のうち、6番目の大きさの大陸で、位置的にはカナイ大陸の北にあり、小国家が群雄割拠している状態だそうだ。


気候はロイドステアとあまり変わらず、象のように魔物化すると非常に強力な動物も存在しなかった筈だ。とは言え、初めて向かう大陸だ。風龍様も安全に気を配って下さるそうだが、自分でも気を付けよう。




転移門には、鹿に似た姿の神獣が待機しており、風龍様の所に案内された。歩いていると、様々な所から風を感じる。どうやらここは、1日中風が吹き込んで来る場所のようだ。暫くすると、強大な気配を感じた。風龍様だろう。


『愛し子よ。この先に主がおられる』


「承知致しました。ご案内有難うございます」


鹿神獣に礼を言って、私は風龍様がいるらしき、峡谷のような場所に入って行った。暫くすると、風龍様が見えたので、近くまで歩いて行き、跪いて礼をした。


『おお、愛し子よ、此度は我が求めに応じて貰い、感謝する』


「風龍様、本件はこの大陸の案件ではございますが、我が事でもございます。即ち、私が馳せ参じましたことは必然にございます」


『そう申してくれると有難い。それに比べ、こちらの大陸の者共は……』


「風龍様、責任は力を持たぬ者には果たせませぬ。考えても詮無き事にございます」


『……その通りだ。まずは現状を話そう』


それから、風龍様から現状を聞いた。魔物の群れは大きく2手に分かれ、勢力を増大させながら大陸内を移動していて、街壁のある所は引き籠ってやり過ごしているが、壁の無い村などは、既に幾つかが飲み込まれてしまったそうだ。


これまでも魔物暴走は数十年に1回の割合で発生しているそうだが、大抵は街壁の中に隠れてやり過ごしているらしい。このため、国家としての発展は望めず、また、魔物暴走の対応は当然風龍様が行っているが、その都度大陸内が荒れるので、生活も豊かではないらしい。


『我も可能な限り、大地に被害を与えぬようにはしておるのだがな……』


まあ、龍の力は、魔物の群れなど相手にならないレベルに設定されているのだろうから、仕方が無いのだろうけれど……。


その他、幾つか話をした後、風龍様が


『かの者を連れて参れ』


と、眷属に命令した後暫くして、一人の女性がやって来た。


『愛し子よ、ここにいる間は、この者に世話をさせる』


「愛し子様? ……私は、ピリコノーメと申します」


「私はフィリストリア・アルカドールと申す者ですわ。こちらにいる間、宜しくお願いします」


ピリコノーメと名乗る女性を紹介されたが……普通は龍の棲み処に人はいないような気がするのだが……とりあえず詮索はせず、魔物暴走への対応に集中しよう。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ