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第336話 ワターライカ領主選定戦 1

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

3月第4週となり、ワターライカ領主選定戦が開催された。


会場は王城の庭の広場に臨時で設置された試合場で、それぞれの待機部屋が近傍に準備されているようだ。また、試合場周辺には推挙した領主達や政府高官達も観戦出来るようになっていて、私にも席が用意されている。


審判は3人いて、主審は騎士団長であるシンスグリム子爵、副審は魔法兵団長、歩兵団長がそれぞれ務めている。また、試合前の魔道具のチェックを魔道具課長が行っていたり、会場に複数の神官が待機していて、試合後は直ちに治療を受けられるようになっているなど、非常に力を入れて準備している様が伺えた。


試合のルールは国軍で定めている総合戦に則ったもので、武器は剣以外でも使用可能、出場時に申請した武器であれば出場時に複数装備して使用可能で、各種魔法を使用可能なように、試合場の周囲には、魔法学校の年末魔法戦と同様、各属性を多量に含んだ物質を備え付けている。それに、出場時に申請した魔道具を1種類だけ持ち込むことが可能だ。


選定戦は全試合を6日間、1日目から5日目までは予選組で、6日目が本選組の試合となり、それぞれの総当たり戦が行われる。本日は予選第1日目、くじ引きで1番から5番を引いた候補者の試合だ。


1番はトリセント伯爵が推挙した伯爵次男で、現在は特別補佐官付として勤務している。要はオスクダリウス殿下の側近だね。殿下も出場している手前、どうなのかと思うのだけれど、基本的には優秀な人なのだろうし、推挙されるのは当然とも言えるわけだ。


2番はノーナイスト伯爵が推挙した伯爵三男、現在は領政の補佐を行っている。3番はディクセント侯爵が推挙した侯爵次男、現在は領政の補佐を行っている。4番は魔法大臣でもあるエルステッド伯爵が推挙した伯爵次男、現在は魔法兵団の隊長として勤務していて、私も何度か会ったことがある。


5番はワンスノーサ伯爵が推挙した領の行政官。そういえば……この、クレリックス・ペントリアムという青年は、昔私の専属護衛に応募した人の一人だったっけ……昔見た時もそれなりには強かったが、今はどうなっているのだろうか?




……第1日目は、エルステッド伯爵次男が全勝で予選を通過した。特に目を引いたのが、魔法の巧みさだ。彼は水属性なので氷魔法を多用していたが、魔法の練度で言えば、お兄様に迫るものがある。流石は国内有数の魔導師であるエルステッド伯爵の次男といったところか。


勿論他の候補者達もそれぞれ高い実力を見せた。特にペントリアム男爵は剣技が素晴らしく、組内2位の成績だった。剣だけの戦いであれば予選通過出来ただろうが、今回は総合戦だ。


エルステッド伯爵次男は、氷魔法で足元を凍らせて機動力を削いだ上で、氷で光を反射させたり顔に少量の水を掛けたりして目晦ましを行い、そういった中で魔道具により風の防護壁を作ったりと、かなり巧みというか嫌らしいというか、そういった戦いの中で生まれた隙を突いたのだ。


まあ、この試合は生き残ることが強さの証と判断されるから、仕方ないわけだけれども。




予選第2日目、くじ引きで6番から10番を引いた候補者の試合だ。


6番はビースレクナ侯爵、つまりフィル叔父様が推挙した領軍の部隊長で、私も顔を合わせたことがある。7番はブラフォルド伯爵が推挙した伯爵次男、現在は商務省工業課で勤務している。8番はカルテリア伯爵、つまり伯従父様が推挙した人は伯従父の次男、要は私のはとこにあたる人だ。現在は領政の補佐を行っているそうだが、これまでは会う機会が無かったな……。


9番はウェルスカレン公爵が推挙した領軍の部隊長、10番は国軍総司令官でもあるサウルトーデ伯爵が推挙した伯爵三男、現在は騎士団の隊長として勤務している。今日もいずれ劣らぬ兵揃いのようだが、誰が勝利するのだろうか?




……第2日目は、ウェルスカレン領軍の部隊長が予選を通過した。今回の組はどちらかというと剣が主体の人が多かったが、思わず私も混ざりたくなってしまった程熱い戦いだった。


こうして改めて見ると、以前のこの国の剣術の傾向が少し変わり、レイテアの剣術が取り入れられつつあるような動きを見せていた。そういった意味では、剣術の新たな潮流が生まれつつある状況を垣間見ることが出来、非常に有意義な試合だった。


あと、何故かビースレクナ領軍部隊長とはとこの試合は、他の試合に増して、鬼気迫る執念の様なものが感じられたが……あれは一体何だったのだろうか……何故か私が触れてはいけない気がした。




予選第3日目、くじ引きで11番から15番を引いた候補者の試合だ。


11番は財務大臣でもあるセントラカレン公爵が推挙した、ヴェルドレイク様だ。流石に親しい人が試合に出るとなると、少し緊張するものがあるが……どのように戦うのだろうか?


12番はイストルカレン公爵、つまりクリフノルド様が推挙したうちの1人で、現在は農務省水産課で勤務している。13番はトワイスノウ伯爵が推挙した伯爵次男、現在は領政の補佐を行っている。


14番は建設大臣でもあるカウンタール侯爵が推挙した領行政官、15番はクインセプト伯爵が推挙した伯爵三男で、現在は特別補佐官付として勤務している。こちらもオスクダリウス殿下の側近だ。


さて、誰が勝利するのか……立場的には公平であるべきなのだろうけれど、個人的にはヴェルドレイク様に勝って欲しいと思ってしまった。




第1試合は11番と12番、ヴェルドレイク様の初試合だ。


候補者達が入場し、向かい合ったが……何やら言い争っているような雰囲気だ。そういえば、セントラカレン家とイストルカレン家は仲が悪いから、こういう場になれば、雰囲気も悪くなるよね……。


「あの子は大丈夫かしら……」


近くの席だったからか、今日の試合を観戦していた、レクナルディア様から呟きが聞こえた。やはり息子の試合なので、心配なのだろう。まあ、相手の強さが判らない以上何とも言えないが、私自身はそれほど心配していない。


「ヴェルドレイク様は、この試合形式であれば、近接戦闘に限れば私も危ない位ですわ。ですので、そうそう遅れをとることは無い筈ですわ」


「まあ。フィリストリア様からそのように評価して頂けるとは、心強いですわね」


レクナルディア様が落ち着きを取り戻したようだ。実際、ヴェルドレイク様が魔法を使う所は良く見ているが、短時間にあれほど精緻な魔法を使える人は、私の知る限りいない。しかも、雷魔法も使えるのだから非常に厄介だ。


恐らく、私が対戦したとしても、気を抜けば対応に困る筈だ。私には魔法は効かないが、魔法の結果発生した事象については有効であり、帯電した物に触れれば当然感電するから、それを考慮して戦わなければならず、更にはその状態で剣などの攻撃が加わるのだから、絶えず電気を逃がしながら戦うことになるわけだ。


さて、ヴェルドレイク様は実際にどのような戦い方をするのだろうか……?




試合が開始され、相手が地魔法で土塊を作って発射しつつ、土壁を作ったが、ヴェルドレイク様は構わず身体強化により、土塊を躱しながら素早く接近した。身体強化に風属性を含ませているらしく、通常の身体強化より更に動きが素早いようだ。


ヴェルドレイク様は相手を翻弄しつつ土壁が作られていない方向から接近し、剣で攻撃をした。当然相手は剣で受けたのだが、その途端


「ぎゃあっ!」


相手は絶叫を上げて気絶した。試合はそこで終了となり、ヴェルドレイク様が勝利した。


まあ、剣を通じて雷魔法を放ったら、ああなるよね……実戦の場で使われたら、本当に厄介だわ。


普通の魔法士が実戦の場で剣による攻撃に魔法を織り交ぜるのはほぼ不可能で、剣技もさることながら、卓越した魔力操作や魔法への習熟が必要だ。魔道具を使えばその限りではないが、破壊される可能性も大きいため、特殊な場でなければ使用されることは無いだろう。




結局、他の候補者達も、ヴェルドレイク様の戦い方に対応出来ず、この組はヴェルドレイク様が全勝で予選を通過した。


ただ、この結果は私以外には、驚きの内容だったようだ。どうやらヴェルドレイク様は魔力量が低いことから、負けると予想されていたらしい。最初の試合でも、それで嘲りを受けていた様だ。しっかり調査して分析すれば、強者であることは理解出来ただろうに、先入観はやはり危険だね……。


何はともあれ、ヴェルドレイク様は本選に出場することになった。試合の疲れをしっかり取って、本選では悔いの残らないように戦って欲しいものだ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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