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第335話 ダイヤモンドの製造法を検討した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

ワターライカ領主選定戦は、3月第4週に実施されることが決定したため、それまでの間、候補者達は準備を行うことになる。基本的には5個組に分かれて組毎に総当たり戦を行い、勝ち残った5名が更に総当たり戦を行う。そして最も勝ち数の多かった者が領主となる。


候補者達にはかなり過酷な戦いになるとは思うが、それも領主としての資質を見極めるためと言われれば、否という候補者はいないだろう。それと、今回は特別ルールがあるそうで、2敗した者はその時点で残りの試合出場資格を失い、不戦敗の扱いとなる。


あみだくじ(方式)で引いた番号に従い組分けが成され、それに応じて試合順も定まるので、後に戦う方が疲労も少なくなる可能性がある。ただし、勝利数が同数の場合、実試合回数が多い者が有利らしいので、一概には言えないようだ。


1日1組の試合を行い、計6日間で領主が選定される。選定された者は、2日後の御前会議の場にて、正式に紹介される流れになるようだ。


私は領主選定戦を希望した手前、全ての試合を観戦する予定になったが……第4週に調整しづらい業務が入ってなくて助かったよ。




当座の業務については、ワターライカ島の開発支援が入っていたため、1週間ほど農地の拡大を主体に活動した。


カカオ豆や南国フルーツ関係の農場が、苗木などが安定して生育しており、また、栽培に成功した場合、通常の作物より収益が見込めそうだということで、新規の入植者から結構な人数が割り当てられて、農場で働きだしたのだ。


このため、現在の苗木が生育している環境を参考にして、農地を拡大させて新たな苗木などを植えていったが、地精霊達も力を貸してくれるそうなので、何とかなるだろう。


また、先日作物研究所で品種改良して作った牧草を、ワターライカ島でも植えてみることになり、広範囲に例の牧草の種を撒いていった。ワターライカ島では、これまでアルファルファに似た草を主体として植えていたそうだが、別の種類の牧草も増やしていこうとしていたらしく、丁度良い機会だったようだ。


それと、アルカドール領に精霊酒製造のための研修に行っているそうで、戻って来たら、酒も造っていくそうだ。まあ、頑張って下さいな。




休日となったが、今日についてはアルカドール領に一度帰省することになっていた。炭素素材の研究が始まるということで、様子を見るよう調整していたのだ。


ダイヤモンドの作り方については、大まかな考え方を紙に記載するとともに、前世の知識を含めた内容をお祖父様に教えていたが、それだけで出来るほど簡単ではないだろうからね……。


本邸に帰ってお母様やお兄様に挨拶して、現在の状況などを確認したところ、炭鉱についてはかなり深く掘ったが、無事発見出来たそうで、現在は採掘の体制を作っているようだ。


それに併せて、カーボンナノチューブやダイヤモンドなどの炭素を利用した素材を研究するための施設もドミナスに建設され、現在お祖父様がそこに行って、選抜された火魔法士達と共に素材作成のための研究を始めたそうだ。


今から空動車で移動すれば、昼前には到着出来るということで、研究施設に顔を出すことにした。お兄様が案内してくれるということで、同行してくれた。遠視を使ってたまに様子を見ているそうだ。


ドミナス分領の中央街にある、石炭素材研究所(仮)の建物に到着したところ、今日は一応休日の筈だが、研究は続けられていた。お祖父様も来ていたので、挨拶をした。


「お祖父様、こちらのことが気になっておりましたので、伺わせて頂きましたわ」


「おお、カイ、フィリス、有難う。こちらは研究を始めたばかりでのう。今のところ、2つの研究室を作っておってな。あちらが樹脂組、こちらが金剛石組じゃ。樹脂組の方は、王都からも人を呼び、実際の作り方を学んでおるところじゃが、金剛石組の方は、お前に教わった理論を検証しておるところじゃよ」


「では樹脂組の方は当面は問題無さそうですわね。金剛石組の方は、検証はどうなっているのでしょうか」


「やはり、魔法での再現が出来んで困っておるところじゃよ」


「では、一度私がこの場でお見せしましょう」


そうして、お祖父様や研究者達の前で、ダイヤモンドを作った。両手を火精霊と同化して、石炭を純化し、形をブリリアントカットに整えた上で、両手で握りながら火属性のエネルギーを大量に加えて分子構造をダイヤモンドに徐々に変化させた。途中の状態で何度か説明しつつ、最終的には以前作った物より小さいダイヤモンドが出来た。


「おお……実際に製造の行程を見ると、何とも素晴らしいのう。これが魔法で再現出来ればのう……」


「しかし先代様、お嬢様の行った方法は、我々では再現することは難しいかもしれません。あそこまで強力な火属性の力を集中させるのは……」


「それと、石炭に火属性の力を集中させているのに、燃えないというのが何とも加減が難しいと申しますか……」


やはり、私が行った方法を魔法で再現するのは難しいようだ。大まかには2点、そもそも力が不足すること、それと、燃えてしまうこと、これらを解決しないといけないわけか……。


燃やさないようにするには、酸素を操れば基本的には解決する。実際私も、酸素を近づけないようにはしているが……これが実際に魔法で可能なのか、正直疑問だな。酸素というイメージを持てるかどうか……要検討かな。


力が不足するというのは、どう解決すればいいのだろうか。どうもこれについては、単純に人を増やして解決する話でもないらしく、精霊の力そのものを使える私だから可能なのかもしれないため、別の手段を検討した方が良いらしい。


そもそも、ダイヤモンドは炭素が高温・高圧下で分子構造を変化させたものだ。分子構造を変えやすいように火属性のエネルギーを多量に加えているが、このエネルギーが、魔法では私の様には加えられないというのであれば、他の方法を試してみるべきなのだろうか?


そうだな……高圧を発生させる……圧力……空気……は難しいから……重力魔法辺りだろうか? ただし、この場合は、私がやったように形を整えてから行うのは不可能だろう。炭素塊に対し、中心に向かうように強い重力を与えるようにすれば、何とか出来るかもしれない。


それにこの方法だと、表面が燃えることもさほど気にしなくていい筈だから、現状の問題は解決出来る気がするし、試しにやってみてもいいかな。


「……お祖父様、では、精霊導師の力を使う方法以外で、金剛石を生み出す方法を、試してみますわ」


「ほう! どのように行うのかのう」


「まず、私の様に炭の塊の形を整えてからというのは、困難でしょう。このように純度を高めた塊をそのまま使用します。次に、地魔法士により重力魔法を使用し、塊の中心に向け、強い圧力を掛けます。ここで火魔法士が、火属性の力を中心に集め、更に別の火魔法士が、構造を変化させるのですわ。この場合、炭の塊の表面は燃える可能性がございますが、中まで燃えなければ、問題無いかと思われます」


「……承知致しました。とりあえず、地魔法士を呼んで参ります」


研究員の一人が、重力魔法を使える地魔法士を呼んで来る間に、火魔法士の分担を決めた。要である、構造を変化させる魔法については、炭素の構造について私がレクチャーした、お祖父様が行うことになった。私は全般的に様子を確認して、必要な時にアドバイスなどを行うことになった。


地魔法士が到着して、要領を説明し、実験が開始された。


まずは純度を高めた炭素塊の作成。次に、重力魔法による圧力の追加。最初は魔法が失敗し、炭素塊が床に押し付けられたりしたが、私がイラストを描いて説明した結果、何とか所期の通りに発動させることが出来た。


更に、高重力下での火属性エネルギーの付与を一人の火魔法士が行いつつ、お祖父様が炭素塊の中心の構造をダイヤモンドに変化させるように暫く念じ続け、一旦終了した。炭素塊を割り、中心付近を確認してみたところ


「む? 石炭とは違う石になっておるのう」


「これは……通常の金剛石ですな! お嬢様が作り出した金剛石のように光輝いているわけではございませんが、この方法を洗練させれば、いつかは可能となるやもしれませぬぞ!」


「研究の方向性が見えましたな!」


こうして、ダイヤモンド製造の方向性を検討して、私はセイクル市に帰り、王都に転移した。帰省した甲斐があったようで、良かったよ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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