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第332話 ワターライカ領主の選定に関する通達が行われた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は休日。いつもの様に鍛錬を行うところだったが、どうやらナビタンが魔力波を使えるようになったそうで、一度見ることになった。


王都邸の庭には、魔力波の試し撃ち用の岩が幾つか作ってあり、そのうちの一つが魔力波らしき攻撃で破壊されていたので恐らく成功したのだろうが、念の為に確認することにしたのだ。ナビタンはまだ幼いが、アンダラット法を覚えてからはかなり魔力量の伸びが良いようで、平民の子供としてはかなりの魔力量がある。そのおかげか、魔力波の威力もテルフィ達とそれほど変わらないようだ。


「はっ!!」


ナビタンの気合とともに、岩が破壊された。確かに魔力波は発動しているようだ。


「ナビタン、魔力波を習得出来ましたね。おめでとう」


「有難うございます、お嬢様。これで俺の技の幅が広がりますよ」


「それと、魔力が見えるようになっていないかしら?」


「最近、何か目を凝らしたらぼんやり見えるのって、やっぱり魔力だったのか!」


「今後は魔力の流れを感じながら稽古を行いなさい。そうすれば、より稽古が面白くなるわ」


「成程、それでお嬢様は、目隠ししていても戦えるわけか。俺も頑張らないとな!」


新たなステージに上がったナビタンは、更にやる気を出しているようだ。


かくいう私も、昨年の武術大会以降、武術大会でカルロベイナス殿下が見せた技、魔力撃と魔力衝を練習している。一応両方出せるようにはなっているが、まだまだ魔力のゴリ押しみたいな感じで、カルロベイナス殿下のように洗練されたものではないけれども。


私以外にもテルフィが練習しているようだが、なかなか出せないようだ。私としてもしっかり分析してコツを掴み、他人に教えられるようになろう。




第3週は淡々と業務を進めた。特に、月末から西公領で行われる精霊術士集中鍛錬の調整や、来月行われる各領巡回助言の資料確認などが主な所だ。どちらもこれまで何度も行っているので問題無く進めることが出来た。




第4週だ。私は精霊術士集中鍛錬の移動支援を行った。異空間収納による荷物運搬や転移門の起動、西公府ウェルナードでの各所への挨拶などをこなし、その他、義理の姉になる予定のチェルシーとも話したりした。チェルシーの誕生日は秋なので、お兄様との結婚はそれ以降になるが、それまでに色々準備させて貰おう。


そして、1月の政府全体定例会議が行われた。魔法省としては魔道具研究所準備室の話や、精霊術士集中鍛錬の話などを報告した。他の省は予算審議で承認され、開始した各事業について報告したり、関連情勢の報告などを行っていた。そして、最後に宰相閣下から、会議参加者に向けた発表があった。


「皆も聞き及んでいるだろう。新たに領主を定めるワターライカ島に関する陛下からの指示を、この場を使い達する。各領主にも、同趣旨の通達を送った」



そう前置きして、宰相閣下が述べたのは、次の内容であった。


・領主候補は、以下の条件を全て満たす者とする。

1 本年2月末現在で30才未満の成年男子。ただし、既婚・未婚を問わない

2 我が国の伯爵以上の貴族から、本年2月中に正式な推挙があった者

3 我が国の伯爵家以上の出自、又は、既に爵位を得ている者

4 魔法学校又は騎士学校にて、優秀な成績を修めた者



領主候補の条件については、皆なるほど……と思いながら聞いていたようだ。確かにこういった内容を満たすならば、領主として相応しい人物と言えるかもしれない。


仮にも領主級の貴族が推薦する、伯爵家以上の出自か爵位を得ている人物なのだから、基本的には身元がしっかりしていて礼儀作法は問題無さそうだし、学校の成績も良いのなら、領主としての仕事もこなせるだろうからね……。


ただし、この内容だと、王都在住者だけではなく、各領に住む貴族も対象になるわけだ。だから各領主にも通達を送ったのか。そのようなことを考えていると、宰相閣下が領主選定の要領を告げた。



「領主候補の中から総合戦の試合を行い、優勝者を領主とする!」



それを聞いた時に、会議場から多くのどよめいた声が上がった。お祖父様やお父様の話では、恐らく内々に準備していたので、その準備通りに試合で領主を決定することになったため、声が出たのかもしれない。


領主は、事が起これば皆を率いて領を守らなければならない、というのは、少なくともこの国では当たり前の話で、実際にお父様やフィル叔父様も最前線で戦っている。当然領主はそれなりの戦闘力を保持しており、領主を希望する者ならば、いざという時の戦闘を忌避してはいけないわけだ。


それを試す最適の方法……というようにも見えるが、私の軽い一言にも理由の一端があるわけで、そういう意味では複雑な心境だが、決まったものは仕方が無い。一国民として、楽しみにさせて頂こう。


定例会議後、多くの人達が慌しく会議場を出て行ったが、恐らくは今後の対策などを話し合ったりするのだろうか。多くの人々の人生を変えてしまうかもしれない話になるのだから大変なのだけれど、悪巧みのようなものは勘弁して欲しい所だ。




どことなく慌しい月末が過ぎ去り、2月になった。


まずはいつもの合同洗礼式における精霊術士候補の確認だが……今回は残念ながらいなかった。あと、今日から魔法研究所に魔道具研究所準備室が設置されたそうなので、併せて見に行ってみた。


書類や器資材については、先日から運搬されていたので、引っ越し自体は終わっている筈だが……魔法研究所に行ってみると、確かに隣に何かを建てるための敷地を確保してあり、立ち入り禁止の標示がなされていた。工事自体はこれから行う予定と聞いている。


一応所長に挨拶をしてから、準備室の方に顔を出したところ、準備室長、以前は魔道具課の研究班長だった方から現状の説明を受けた。以前から行っている研究は引き続き行っているものの、現在は研究所立ち上げの業務も併せて行っており、かなり忙しい様だ。


実際のところ、最近は研究の所要が大きくなり過ぎて、既存の研究員だけでは回しきれなくなっていたので、研究所を立ち上げることで研究員を確保したい、というのが切実な願いだそうだ。ワターライカ島開発などもあって色々頼んでしまってすみません……。


あと、研究員達にも激励をお願いしますと言われて、回ってみた……先程からネリスの視線が気になっていたので、とりあえずはネリスの方に向かい、声を掛けた。


「フィリ……導師様、わざわざ私にお声掛け頂き、有難うございます!」


「ふふ、コルドリップ研究員は、現在どのような魔道具を研究しているのですか?」


「はい! 導師様に教えて頂いた光魔法で、新たな魔道具を作りたいと考えております!」


と言われて、簡単に説明を受けたけれど……これは……カメラ?!


「まあ! これは完成すれば素晴らしい品になるわ! 是非励んで下さいな」


「勿論ですわ! 完成した暁には、至高の美たる導師様の御姿を形に残せますもの!!」


……適当に流して、他の研究員達の激励に回った。


火属性は光魔法関連や新素材製造の魔道具、地属性は重力魔法関連の魔道具研究で忙しく、風属性は風魔弾発射具の量産に関する業務が入っているそうでそれなりに忙しいそうだ。比較的手すきの水属性も、この前まで湯沸かし器や冷蔵庫の量産に関する業務を行っていたそうで、そういった話を聞くと、この国は発展しているのだなあ、と感じた。




最後にヴェルドレイク様の所に行った。これまでの実績から、既にヴェルドレイク様は研究班の先任研究員で、ここでも室長の次に偉い立場になっている。なので、現在は研究を行いつつ、研究所の設立に関する業務も進めているようだ。


「優秀な方ほど、多くの仕事が舞い込んでくるというのは本当の様ですわね」


「有難うございます。……正直な所、今は他のことに集中したいのですが、今後を考えれば、このくらいこなせないと話になりませんからね」


ん? ヴェルドレイク様が魔道具研究より集中したいこととは何だろう?



「導師様、私はワターライカ領主を目指します」



静かに告げるヴェルドレイク様の瞳には、強い決意が宿っていた。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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