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第330話 ダイヤモンドを作ることに成功した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

年が明けて暫くは、空いている時間に空動車の車体を作っていたのだけれど、当座の数は作れたので、少し違うものを試しに作ってみようとふと思った。アルカドール領にも炭鉱があったわけだし、他にも石炭を活用する方向性があれば面白いかな、という軽い気持ちだったのだが……。




石炭、つまり炭素については、様々な活用法がある。アルカドール領は寒いから、燃料としての所要が大きいだろうが、ここ最近私が作っていたカーボンナノチューブ素材などを含め、前世を考えると、素材としても色々活用出来るわけだ。


ただ、この世界で前世同様の活用法を提言しても、基礎知識や技術、設備などの面から時期尚早と言わざるを得ない。簡単なもので、魔法などを利用して出来ることはないか、と考えてまず思ったのは、ダイヤモンドを作れないか、ということだ。


基本的には、氷魔法や水晶生成・加工、カーボンナノチューブ作成などが出来るのだから、ダイヤモンドも出来る筈だ。ただし、この世界では宝石としてのダイヤモンドは流通していないようだ。


確かどこかの国で、サファイヤやルビーより硬い石がたまに発掘されると聞いたことがあるので、恐らくそれがダイヤモンドに当たる石なのだろう。剣を研いだりするのに利用されているらしく、武器屋や鍛冶屋などでは高級砥石として人気らしい。そういえば、館でも武器の整備は行う筈だから、あるかどうか聞いてみようかな。


……うちにもあった。火精霊に聞いたところ、確かに炭素の塊なので、ダイヤモンドなのだろう。黒くくすんでいるので、宝石として活用出来るものではないけれども、硬さだけはあるようだ。




とりあえず、試しにやってみようと思い、両手を火精霊と同化させて、炭素の純度を高めた石炭の塊を両手で包み込むように持ち、ダイヤモンドの構造である立法晶系構造に変化するよう、火属性のエネルギーを加えながら暫く念じてみた。


すると、一部はダイヤモンドに変化したようだが、やはりくすんでおり、とてもではないが宝石として使えそうになかった。これは、相当なエネルギーを加える必要がありそうだな……。とは言っても、水晶を作る時の様に加熱しすぎては、普通に燃えてしまうだろうし、調整が難しそうだ。




色々試した結果、炭素塊が燃えない程度に火属性のエネルギーを加え、逐次構造を変化させていき、長時間作業を継続することで、宝石として使用可能なダイヤモンドが出来るようだ。


これは……魔法で同じことをやろうとすると、小さいダイヤモンドしか出来ないかもしれないね。あと、ダイヤモンドに構造を変えた後に力を使って形を変化させようとすると、すぐに割れたりするので、宝石として形を整えるには、やはり研磨する必要があるようだ。


ならば、炭素塊の段階で、宝石として使う際の形に近い形にしておけば手間が減るだろう。ダイヤモンドと言えばブリリアントカット、あの58面体だ。


正確にどう言うかは覚えていないが、上下2面、上側部が8面、8面、16面、下側部が16面、8面の計58面で、案外覚え易かったから覚えている。大まかにあの形を整えてからダイヤモンドの構造に変化させてみよう……。




おおっ、これは中々の出来だ。本当はここから更に研磨した方が良いのだろうけど、とりあえずはこの状態で、お父様達に見て貰おう。




夕食後、お父様達に簡単に事情を話し、談話室に集まって貰った。


「こちらが先程お伝えした、石炭から作った石ですわ。金剛石と同じものになります」


私が作った直径5センチ弱のダイヤモンドを見たお父様達は、やはり大きな関心を示した。


「何と! これは宝石ではないか! これが石炭から作られたというのか?」


「この、光り輝いている様は、これまで見たどの宝石よりも素晴らしいわ!」


「この美しさはまさに、君を彩るのに相応しい宝石だね!」


「こちらは、前世の知識を利用して作ったものですわ。現在、この世界においては流通していないようですが、ごく少数の自然石としてならば、発掘している可能性もございます。勿論この石は非常に硬いものですので、加工は非常に難しいですわ。金剛石同士で研磨することにより、加工が可能です」


「成程……ある程度の美しさを持つ金剛石が、どこかで自然石として産出していた可能性もあるが、加工も難しいものであるし、これまではさほど重要視されていなかった、ということだろうな。我が国でも、砥石の材料としては知られているからな。このような宝石を石炭から作ることが可能であれば、間違いなく産業化出来ると思うが……どのように作成するのだ?」


「基本的には、氷魔法や水晶、車体製造に使っているものと同様の方法ですわ。石炭は火属性ですので、火魔法となります。ただ……非常に多くの魔力を必要とする筈ですので、恐らく魔法では、ほんの小さなものしか作ることは出来ないでしょう」


「たとえ小さいものであっても、この宝石なら装飾品としての価値があるわ。台座に敷き詰めると良さそうね。ところでフィリス、この宝石の形状は、これまでの宝石に無かったものなのだけれど、意味があるのかしら?」


「はい。これは金剛石の特徴を生かし、輝きを引き出す形状として知られたものでしたわ」


「では、この形状自体も、知識の出所を明確にする必要がありそうだけれども……例えば、水晶像などの研究の過程で生み出されたもの、ということにしておけばいいかな」


「光の反射率などを考慮した結果生み出された形状ですので、材質は違えど、それが一番妥当ですわね……ドミナス分領の炭鉱から産出する石炭は、基本的には燃料として使用すると伺っておりますが、金剛石の研究も行っては如何でしょうか」


「勿論そうさせて貰おう。当面は炭鉱を整備することを重視するが、採掘が開始されたならば、研究所……とまではいかないが、元々新素材に関して研究を行う部署を作ろうと、分領側と話し合っていたのだ。その一部として、研究を進める方向で進めよう」


「丁度良かったようですわね」


「フィリスのおかげで、火属性の者も生活に役立つ魔法を色々使えるようになったな。それまでは精々火種を作るくらいしか生活面では役に立たなかった。勿論、戦闘分野では火魔法士は花形だったがな。父上はそういった面が好きではなかったようで、あまり魔法に興味を持てなかったようだが……最近は光魔法を学んでいるそうだ。この話も、喜んでくれるだろう。それとこの話は、出来れば父上にも協力して頂きたい案件だ。新たな利権の調整は難しいからな」


「では、明日お祖父様の所にお伺いして、お話させて頂きますわ」


その後、ダイヤモンドの取扱いなどについての話をして、その日は終了した。




次の日、いつもの様に鍛錬などをこなした後、別邸にいるお祖父様を訪ねた。お祖父様は大きな病気などは無いが、最近は以前より外に出ることが少なくなっているそうで、少々気になっているところではあるが、私が顔を出すと、非常に喜んでくれた。


「フィリスや。今日は何やら、儂に見せたいものがあるとか」


「はい、お祖父様。実は先日、領内に炭鉱を発見致しましたので、石炭を活用する方法を考えておりまして……これを作っては如何かと、昨日父達に紹介させて頂きましたの」


そう言って、宝石箱に入れて異空間収納していたダイヤモンドを取り出して、お祖父様に見せた。


「……おお、何と素晴らしい輝きじゃ。フィリス、この宝石は一体……?」


「これは金剛石ですわ。非常に硬いため、砥石として使われておりますが、物によっては、このような形状にすれば、光り輝きますのよ。金剛石は、石炭から火魔法を利用して作ることが、恐らく可能ですわ」


「成程。現段階では、お前にしか作れんということか。しかし、魔法を用いて作ることは、理論的には可能、ということじゃな。産業化に成功すれば、巨万の富を得られるじゃろう」


「はい。今後はこれを作成出来るよう、ドミナス分領に研究組織を設立しようと考えております」


「ほう……では、儂もその研究や、産業化に助力させて貰えんかのう」


「お祖父様、それは非常に有難いのですが、宜しいのでしょうか?」


「なに、最近はカイに教えることも少なくなってな。それにな、儂も魔法でそのような美しい宝石を作ってみたいのじゃ。ほれ、最近ではこのようなことも出来るようになったわい」


そう言ってお祖父様は、宝石箱の前に7色の光を出した。ダイヤモンドが幻想的な光を放っていた。




こうしてダイヤモンドなどの、炭素を使った新素材に関する研究がドミナス分領で始まることになった。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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