表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

331/414

第324話 予算審議で重大な発表があった

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

王都に戻ってからも各所との調整が入ってそれなりに忙しくしているうちに、1526年予算審議の週となった。


いつも通りの会期で実施されるが、今回については、重大発表があるという噂がちらほら聞こえている。魔法省や私に関係することなのかは聞いてみないと判らないが、雰囲気からすると、悪い話ではなさそうだ。




審議初日は総務省と財務省関連だ。


総務省は……来年の行事や式典の予定、サウスエッドとの人材交流、セクハラ対策関連が、私に関係する内容だな。特に人材交流は、技術を習得して帰国する人が出始めているようなので、別の希望者を送り出したりするほか、サウスエッド国からワターライカ島への移住を希望する人もいるそうで、そちらの対応も行うらしい。


ここでは明言されていないが、スイーツ交流も確実に入っているだろう。砂糖の消費量が増えるから、アルカドール領としても有難いことだ。


財務省は……私に関係する話は無かったが、興味深い話があった。何と、ワターライカ島の例の鉱脈で、金や銀が塊で発見されたらしい。ただし、すぐ掘り尽くされたそうで金・銀鉱山としては認定されないらしいが、それでも通常の金山・銀山の数年分に相当する量が発見されたらしい。


現在は国王直轄地なので、金山や銀山と同様の収益として、来年の予算に計上するそうだ。景気が良い話だ。




審議2日目は、外務省と国防省関連だ。


外務省については、アブドーム国やセントチェスト国との関係が良好となっていて、特にアブドーム国は絹製品の輸出により財政が急速に回復しており、カウンタール領などの隣接領を経由した交易が活発化しているらしい。


それと、セントチェスト国は鉱毒防止に関する技術供与で担当者間の交流が活発になったりしているそうで、もしかすると関連する式典に私も呼ばれる可能性があるそうだ。一応下調整での話は聞いていたけれど……夏頃と秋頃か……。


国防省については、引き続き飛行兵団を増加するという話と、海兵団の海軍化を進めるという話が重要な所だ。どちらも精霊術士が関わっているからね。


勿論、魔法兵団との協同訓練や国軍総合演習は継続で、来年は、サウスエッド国との共同指揮所演習も行われるらしい。共同指揮所演習には私も参加する予定だから、きちんと把握しておかないとね……。




審議3日目、建設省と魔法省関連だ。


建設省は……道路工事が6箇所と、一時期に比べてかなり増えている。これは、精霊術士による支援もあるが、王太子殿下が中心になって進めている、流通の整備のためだ。まあ、私が各所にトンネルを作ったので、その分道路を整備する必要が出来たという面もあるが……。


治水工事は2箇所で、これは例年と同等だから問題無し。その他、私が工事を行うかどうかは判らないが、東西公領の港の拡張についても話が出ていた。私が言うのも何だけど、港の拡張は結構な労力が要りそうだからね……こちらにも精霊術士の支援が必要になると思われる。


西公領はかなり交易量が増加しているから、それを見込んで拡張するそうだが、東公領は交易量が減少しているのに何故拡張するのか、と議員に突っ込まれていた。


ワターライカ島との間の物流を交易量に含めると増加傾向にあるから、という理由付けで納得させていたけど、東公領が落ち目なのが明確になったな……と感じた。その他、ワターライカ島の施設建設や道路整備なども継続事業となっていた。




いよいよ魔法省関連だ。魔法教育については、新体制を定着させるため、引き続き人材や教材の普及を図っていくようだ。その際、ここ数年間の王都魔法学校や公府の高等学校魔法科の入学試験において、受験者の魔法の能力が全般的に向上していることが挙げられていた。


今年については魔法学校の平民枠を増加しているらしい。この様子なら、魔法兵団の低充足も改善するだろうし、魔法による文明の発展も進むだろう。


精霊課については、来年行われる精霊術士集中鍛錬や、各領巡回助言の話があったが、こちらはここ数年と同様に行うため、特に大きな疑問は発生しなかったようだ。なお、精霊術士集中鍛錬については、西公府で行うのが恒例と化したけれど……まあ、成果も出ているから問題ないかな。


そして、今回の魔法省の目玉である「魔道具研究所の創設」に関する説明が始まった。


当面は魔法研究所の一研究室という位置付けで、魔道具研究所準備室という部署を魔道具課の研究員達をもって編成し、魔法研究所に隣接した敷地に施設を建設しつつ、市井の魔技士達の中から希望者を募って体裁が整えば、研究所として独立させるそうで、2か年計画の事業だそうだ。


ただ、ここ数年の魔法教育の成果か、魔技士志望の人も増えているそうで、勉強しながら魔技士試験合格を目指す人を研究員見習いとして受け入れることも検討しているらしい。


魔道具課としては魔法省職員という立場から、魔技士を目指しているだけの人の受け皿にはなりえないから、そういう意味で研究所の意義が増すわけだ。ヴェルドレイク様の各種発明を最たる例として、魔道具の発展は以前より重視されているので、裾野を広げるためという説明は、議員達にも受け入れられたようだ。




審議4日目、商務省と農務省関連だ。


商務省だが……遂にカーボンナノチューブとグラファイトの複合素材について、魔道具を用いた製造法を確立できたそうで、今後は大量生産を可能とするため、空動車の生産の場で人材を育成していくらしく、その施設や器資材の予算を要求していた。まあ、私に車体製造を頼み込んでくるくらいには、需要があるからね……。頑張って貰おう。


その他、目を引いたのが、海軍創設に絡んで大型船を開発しようという話だ。サウスエッド国の方ではかなりの大型船を建造していたけれど、こちらではどうだろうね……。一応精霊課も研究には協力しているから、何かしら助言する機会があれば行う、ということで。


農務省については、引き続き幾つかの作物の品種改良依頼が来ているが、その中でも変わり種としては、乳牛の乳が美味しくなる牧草を作って貰えないか、というものがあった。一応試してはみるけれども。


米やさつまいもは、引き続き広めていくそうだ。ちなみにテトラーデ領はかなり田んぼが増えて、米を使った料理も普及した。王都にも料理店が出来ているそうなので、今度食べに行こうかと思っている。


それと、養蚕業をヘキサディス領以外でも広めているそうだが、病気の対策や産卵など、手探りでやっている状態らしいので、精霊課は研究協力を依頼されている。ただ、虫が嫌いな精霊術士がかなりいるので、人を選ぶ仕事になっているのは、否定できないところだ。




審議5日目、法務省と宰相府関連だ。


法務省は……魔力循環不全症対策に関する事業が、カラートアミ教との共同事業になってしまったので、正式に法務省の所掌になったのよね……勿論事前調整はあったけれど。来年の2月に神域で行うそうなので、参加させて頂きます。


宰相府は……災害対処関係については変化なし。あと、特別補佐官であるオスクダリウス殿下から、重力魔法について、現在の施策の更なる深化を図りつつ、来年は国民議会を通じて広く活用意見を求めるとともに意識改革を図り、更なる普及を図る旨の説明があった。


それと、建設省のワターライカ島開発に乗った形での、重空動車による輸送形態の検討を挙げていた。特に大きな疑義は上がらなかった。




そして最終日、陛下が予算案への幾つかのご下問をなされた後、来年の事業について、聖慮を拝することになった。



「現在直轄地であるワターライカ島については、新規の伯爵領とするため、必要な検討をせよ」



議場は騒然となった。


「おお……」「何と……」といった、驚きのあまり思わず漏れた声が各所から聞こえる。というのは、ロイドステア建国後初めて、新規の上級貴族枠が増えるからだ。


ワターライカ島については、これまで聞いていた話では、幾つか統治案が検討されており、そのまま国王直轄地として執政官を置く案や、近傍の伯爵領に併合して、併せて侯爵領とする案なども挙がっていたのだけれど、島民が10万人を超えて更に増加しているし、それなりに統治機能も構築されていることから、そろそろ方向性を決定しようとお考えになったのかもしれない。


陛下の聖慮に対しては、宰相閣下が御前に移動して跪き、それを見た皆が我に返って静まった中で


「御意。来年における最重要事業とさせて頂きます」


と返していた。内容的には、初事業なので宰相府案件になるからね……。


とりあえず、ワターライカ島を伯爵領として統治するために、現段階で不足しているものは、領警備隊だ。現在国軍で行っている業務を、基本的には領で行わなければならない。


この辺りは国防省が主体で検討するのだろうけれど……元々島の警備体制を検討していたらしいし、利権が絡むわけでもないから、そこまで難しくはないと思うし、私が関与する話でもないだろう。お父様は大変だろうけれど。


問題は、誰を領主に任命するか、ということだ。これは正直、荒れると思う。


派閥の話で言うと、容認派は静観する可能性が高いけれど、改革派は絶対領主をねじ込もうとするだろうし、体制派はそれを防ごうと対立候補を挙げようとするだろう。そういった意味では、現宰相閣下が容認派なのは、公平を期すという観点から良いと言えるかもしれない。


それと、派閥を抜きにして個人として考えても、上級貴族となれる又とない機会なのだから、立身出世を考える貴族なら、間違いなく全力を尽くす筈だ。何せこの国は、現領主の嫡男に生まれないと基本的に領主になれないからね……。


暗殺すら流行りそうな気がするし、当面の間は、精霊達に王都内の警戒を強めて貰おうかな。正直、精霊課にも協力して貰った方がいいだろうね、これは……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ