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第032話 告白

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

私達はアルカドール領に帰って来た。お祖父様と兄様にも状況を説明し、あらかた説明が終わったところで夕食の時間となったので、皆で食事をとった。1週間ほど前にもとった筈なのに、久しぶりな気がするのは何故だろう。そんなことを考えながら、私は、食事後に言った。


「皆様、実は私から告げたいことが御座います。どうかもう少しお時間を頂けませんか」


「ん?そのように改まって何だ?言ってみなさい」


「他の者には言えないことなのです。人払いをして頂けると助かります」


皆、私の態度を訝ったが、それでも談話室に集まり、人払いをしてくれた。


「ご配慮感謝します。これから話す内容は、私が精霊女王様から伺ったことです。もしかすると世界の在りように関わることかもしれませんので、できればご内密にお願いします」


私がそう言うと、驚きながらも得心がいった様な顔をしていた。私は話し始めた。


「皆様は、複数属性者について、御存じでしょうか?」


「……ふむ、たまに世界に生まれるようじゃな。確か今は、儂の知る限り、帝国の第2皇子とサウスエッド国の宮廷魔導師長がそうだった筈じゃ。帝国の第2皇子は成人前じゃというのに帝国有数の剣の達人、サウスエッド国の者は、世界最高の魔導師じゃと噂されておるわ」


「……お二方とも、素晴らしい才能をお持ちの様ですね。では、そのお二方がそのような才能を持つに至った理由は、御存じでしょうか?」


「フィリス、才能を持つのに特別な理由があるのか?努力や師の存在などではなく?」


父様がそう言った。他の方も不思議そうな顔をしている。


「複数属性者には、共通した特徴があります。それは……前世の記憶を持つ、転生者であるということです。転生とは、亡くなった人が、記憶を持ちながら再び生を得ることで、前世は、その転生者の生前の人生のことです」


「死者の魂は神の御許に行き、生前の行いを評価されて、その内容に応じて新たな生を歩む、とカラートアミ教は説いていますが……記憶を持ちながら再び生を得るなど、初めて聞いたわ。フィリス、それは本当なの?」


「精霊女王様が、そのように話しておりました。神の御意志は不明ですが、優れた人物を転生させ、更に文明や文化を発展させるためかもしれない、と仰っていました」


「……ということは、その二人は、前世で名を成した人物で、死後今世での生を得て、更にその才能を伸ばしている、と言うことか。なるほど、それならば隔絶した才能を持つ理由が理解できる」


「父様、その通りです」


ここまでは前振りだ。流石に緊張する。今から私はこの温かい人達を失うかもしれないのだから。


急に黙ってしまった私を見て、何かを感じ取ったらしく、皆身構える。そんな中、兄様が呟いた。


「……なら、フィリスは、どうなのかな」


遂に来るべき時が来た。今一度心を落ち着け、事実を告げる。


「私も、前世の記憶を持つ、転生者です」




暫く誰も言葉を発しなかった。漸く、皆を代表するように、お祖父様が私に言葉を投げかけた。


「フィリストリア、お主は、誰じゃったのかのう」


その後、私は、自分の前世を語り始めた。前世はここ、フィアースとは異なる魔法や精霊のいない世界で生まれ育ち、父や母に育てられ、合気道一筋で生きて来たこと、地震で死んだ筈が、こちらに転生していたことを告げた。合気道と言っても判らないので、徒手を中心とした、相手の力を利用する武術という風に説明した。一通り説明が終わり、皆の目を見ながら、言った。


「私はこれまでこのことを誰にも言えませんでした。気狂いと思われるかも、気持ちが悪いと思われるかも、拒絶されるかも、少し考えるだけで恐怖を感じ、この秘密を墓まで持って行こうと思っていたのです。しかし、精霊女王様のところで聞いた話を、もし皆様が他の方から聞いてしまったら、と考えた時、私は自分を酷い恩知らずの裏切り者の様に感じてしまったのです。仮にも私を家族として愛して下さった方々には、自らこの事実を告げなければならない、それが私の成すべきことだ、と」


どうやら私は泣いていたらしいのだが、語り続ける。


「今まで育てて頂き、本当に感謝しております。しかし、私がこのような得体の知れぬ者であったとなれば、肉親の情も無くなって当然でしょう。私は追い出される覚悟は出来ております。どうか、御判断を」


私がそう言うと、皆は私を見つめ続け、そして、言葉が紡がれた。


「フィリス、お前は我が娘だ。何故追い出す必要がある」


父様。


「フィリス、貴女は私がお腹を痛めて産んだ子です」


母様。


「フィリス、君が私の可愛い妹であることに変わりないのだけれど」


兄様。


「フィリスや。そんな寂しいことを言わないでおくれ。お前は変わった知識はあるが、可愛い孫じゃ」


お祖父様。


「……皆様、こんな子供ですが……これからも宜しくお願いします!」


私は思わず席を立って、父様達に抱き付いてしまった。




暫くして、落ち着いたところで再び話し合いをする。先ほどの深刻な雰囲気ではなく、もう、これまで同様、いや、それ以上に仲の良い家族だ。


「フィリス、前世の話、もっと聞かせてくれないかな」


「ええ兄様。私に話せることならなんなりと」


「フィリス、前世の話は、我々家族だけに話すように。話す必要がある場合は、これまで同様、精霊に聞いたということにするなど、ごまかして話すように」


「はい、父様。……これまで父様達にも嘘をついて申し訳ございませんでした」


流石父様、これまで私が精霊に聞いた話ということにしてごまかしていたことも理解されている。


「ねえフィリス、貴女の前世での文化で、こちらの世界でも広められそうなものなどないかしら」


「実は幾つか考えていることがあるのです。例えば食事などです。こちらの世界の食事も美味しいのですが、前世の国は食文化が非常に発展した国でしたので、食材などが見つかれば、ある程度は」


「ああ、だからハトークでも、私ですら知らないものでも平然と口にしていたのね」


「フィリス、先ほどは魔法の無い世界、と言っておったが、どのような所じゃったのかのう」


お祖父様、それは少し面倒になるので、少しずつ話していきたいのですが……。


ということで、少しだけ、科学技術やその基礎となる自然科学の話をした。元々、合気道の理を理解したくて理系、特に物理は熱心に勉強していたため、高校程度であれば、教えられる程度には理解している。また、イメージしやすい様に、フィアースでも同様にみられる現象を挙げて、科学の視点から解説した。しかし、私が話していくと、父様、母様、お祖父様の顔色が青ざめていく。


「あ、あの……何かまずいことでも……」


「転生云々より、今の話の方がよほど世界の在りように関わる事ではないか!何ということだ……」


「これまでの常識が根底から覆されてしまうわ!フィリス、貴女の知識は、多くの者に狙われかねないわ」


「……フィリスや。前世の知識は、他所ではそのまま口にしてはならん。特に魔法研究所や教会ではな」




きつく口止めされてしまった。まあ、あの反応を見る限り、皆にバレたら普通に危険人物扱いだろうしね……。心配をかけてすみません。


……でも、家族にバレることを恐れ、家族だけでなく「私」にも嘘を吐き続けて生きていくより、ずっといい。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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