第319話 ウィサワーゴ国の火山対応 2
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神域に転移して、そこからウィサワーゴ国に向かおうとしたところ、案内をしてくれていた神官から説明があった。
「ウィサワーゴ国は、生活様式が独特ですので、ご注意下さい」
詳しく話を聞くと、どうやら地人族は、基本的に洞穴に住む種族らしく、大聖堂についても巨大な空洞を利用して建てられているそうだ。王城についても同様であり、光源が少ない事や空間が狭い事から、行くだけで怪我をすることも少なくないそうだ。それは確かに気を付けないとね。
それからウィサワーゴ国の大聖堂に転移したが……確かにこれは、変わった風景だわ……。まあ、大聖堂で暫く待機していると、王城から案内の人がやって来て、案内をしてくれた。
地人族は、背は低くがっしりした体格の人が多いと聞いていたが、周囲を見る限り、その事前情報は正しい様だ。何とか空動車で移動出来るくらいの通路を通って王城まで向かったが……光魔法があって良かったよ。
案内者は、空動車に非常に驚いていたが、技術的な面に非常に興味を持ったようで、外務省の職員に対し、色々質問していた。ちなみにこの国は、地精霊と火精霊が多い様だ。そして、かなり蒸し暑い。私は導師服を着ているから大丈夫だが、私以外の人達は、結構な汗をかいていた。
王城に到着し、宰相補佐官や外務省の職員と一緒に城内を案内された。謁見の間らしきものは無いそうで、会議室のような場所に、国王らしき人や、その他数人が待っていた。席の手前で跪いて礼をする。
「……お主が精霊導師か。儂はウィサワーゴ国王だ」
「国王陛下、お目通りが叶い、恐悦至極に存じます。ロイドステア国の精霊導師、フィリストリア・アルカドールと申します」
「お主、精霊の姿を儂達にも見せることが出来るそうだな」
「恐れながら、その通りに御座います。火の大精霊殿から依頼を受け、参りました。もし宜しければ、今から火の大精霊殿をお呼び致しましょう」
「うむ、頼む」
私は、背後にいた火精霊を通じ、火の大精霊を呼び出し、魔力を与えて姿を見せて貰った。
『ウィサワーゴ国王よ、漸く直接話をすることが出来る。愛し子よ、願いを聞き届けてくれて感謝します』
「お安い御用ですわ。では、現状と今後に関する話をお願いします」
それから火の大精霊を交え、火山の噴火について話し合った。
やはりと言うか、火の大精霊が話した内容は、これまで誤解していた部分や、初めて聞く内容もあったため、かなりウィサワーゴ国側も驚いていたようだ。
あと、この場には場違いに見える、地人族の少女が一人いたが、その子が精霊術士だったようで、見た感じ、かなり内気な子のようだったので、確かにこの子ではいかつい感じの国王達の通訳には向かないかもしれない。その件は国王達も分かっていたようだった。
「確かに、直に話してみると、今までいかに意思の疎通が出来ていなかったかが良く分かるな」
「恐れながら、そちらの方は経験が浅いようですし、陛下の補佐を行うには荷が重かったのでしょう。ご寛恕をお願い致しますわ」
「まあ、貴重な人材だからな。今回はお主に来て貰えただけで十分だ」
「そう仰って頂けて、誠に光栄に存じます」
情報の共有が出来たところで、どの地域でマグマ抜きを行うかの検討が始まった。当然ウィサワーゴ側としては、国土への影響が少ない地域を選びたい所だ。特に、地人族の集落が国中に点在しているため、どの地域を選んでも、幾つかの集落がマグマに飲み込まれてしまうことになるようだ。また、どの集落が無くなっても、他の集落に受け入れさせるのは、地積や働き口の観点から現実的では無いということだった。
そして、隣接国であるサットパータ国、タワノーク国や、国交のあるサウスエッド国にそういった集落の民を移民させて貰えないか調整していたようだが、基本的にそれらの国は、鉱山付近に地人族の集落があり、利権的な問題があるため、新顔がなかなか入り辛い状況にあるらしい。
個人的には同族なのだしもっと助け合えばいいと思うのだが……彼らにとって鉱山の利権は、命と同等に大事なのだろう。そのようなことを考えながら、話を聞いていた。
「ううむ、やはりこの『火龍の決戦場』付近に岩漿を湧出させるのが、一番効果的だな。周囲に拡散する可能性も薄く、また、元々荒れ地となっていたのだから、自然への影響も比較的少ない筈だ」
「では、こことここ、2つの集落に話を進めてみましょう。ですが陛下、受け入れ先が見つかっていない状況で話しても、集落の者達が納得しないかもしれません」
「その件ですが、数年前誕生した、我が国が領有するワターライカ島には、まだ手付かずの鉱脈が眠っているのですが……こちらの集落の方々に来て頂く用意が、我が国に御座います」
「何? それは誠か!」
「誠に御座います。島の環境を整える際に、島に存在する重金属を1箇所に集める様、地精霊達に頼みましたので、それなりの鉱脈となっている筈ですわ」
「それは有難い。移住先が見つからず、困っていたのだ。地人族は、その腕を振るえる場所が無ければ死んでいるも同然。貴国の申し出に、感謝する」
こうして話はまとまり、その2つの集落の代表者をこちらに呼んで話をすることになった。今から緊急連絡によって呼び出せば、4日で王城において話が可能らしく、それまでの間は王城に滞在することになった。
空いた時間は、折角の他国なので、王城や他の地域を見せて貰うことにした。とは言っても、私がそのまま回ると面倒なことになりそうなので、いつものように地精霊と感覚共有して、王城や、王都内を見回ってみた。
王城や王都は、立地上ステアシードなどと比べて非常に狭く、所々で上に穴があって日の光は入っているものの、基本的には明かりが各所にある。また、地人族はかなり夜目が効く種族らしく、それほど光を必要としないようだ。
食事は肉と根菜が多く、また、酒が好きな種族のようで、国王も毎食浴びる様に酒を飲んでいた。街には鍛冶屋や酒場が多く、細工なども多く売っていた。少し郊外に移動すると、採掘場があり、何らかの鉱石を採掘して精錬所に運んでいた。
なお、精錬所は、鉱毒対策をそれなりに行っているようで、排水が遊水池で貯められ、そこから地熱などを使って濃縮され、金属成分の分離を行っているようだった。
それと、この国の火の精霊術士とも話をした。
「精霊導師のフィリストリア・アルカドールですわ。宜しくお願いします」
「ら、ラプハラ・く、クアールと、申します。この、度は、私の、至らなさから、ご、ご迷惑を、おかけして、申し訳、ございません」
「ラプハラさん、と仰るのね。精霊術士と言っても、精霊と話せる以外は普通の女の子なのですもの。王様と話をするなんて、それだけで難しいと思いますわよ? これから経験を積めば、そういったこともうまく出来るようになりますわ」
「で、でも、精霊導師、様は、年もあまり変わらないですのに、あんなに堂々として……」
「私は生まれなどもございますから、偉い人達ともそれなりに話せるだけですわ。それに、貴女も精霊ともっとうまく話せるようになれば、自信もつきますわよ?」
それから私は、ロイドステア国での精霊術士の暮らしや、精霊術士の能力向上のための方法などを教えた。
「そ、そのようなことを行えば、わ、私でも、能力が、向上するのですか?」
「ええ。既に100名以上の精霊術士達が行っておりますし、全員、精霊との意思疎通が良好になりましたから、貴女にも可能ですわ」
「わ、分かり、ました。頑張ってみます」
ラプハラは鍛錬にやる気になってくれた。まあ、この国には立地上、火の精霊術士は必要だから、頑張って欲しいものだ……。
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