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第317話 カカオ豆などの農場を作った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

ロイドステアに戻って普通に休日を過ごし、第4週となった。とりあえず、ワターライカ島にサウスエッド国からの移住者を送り、現地でカカオ豆や各種フルーツの栽培のための農場を作ることになっている。


転移門で移動した後、まずはカカオ豆の栽培を行う人達と一緒に、空動車でグアリスタ山北西の山麓部に移動した。


「栽培予定地はこの付近なのですが……適地はどの辺りになるでしょうか」


「そ、そうだすな……もうすこす上がった所の方が、良さそうだす」


正直私も、前世でのカカオが育つ条件をきちんと覚えているわけではないが、生産地が限られるため、カカオベルトという言葉があったということくらいは覚えている。後はこの人達と、地精霊頼りかな。


『そうだな……この実だと……あの辺りなら何とか育ちそうだと思うけど、もう少し乾燥に強くした方がいいと思うよ。温度は大体高めで安定しているから、今のままでも大丈夫だと思う』


意見を聞きながら、概ね海抜300m弱の所までやって来た。


「おお、このあだりなら良さそうだす。土も良い具合に刺激があるだよ。この付近、均して下さるだか」


少し樹が植えてあったが、地精霊と両手を同化させ、樹は一旦格納して、辺り一帯を均した。


「ひゃあーっ、あっという間に出来ただよ! 精霊導師さまは、ものすごい方なんだな!」


「……確か、影を作る樹を植えるのでしたか? その樹の種などはございますか?」


「あ、ええ、こぢらにありますだ!」


シェイドツリーの種を貰い、今度は右手を地精霊、左手を水精霊と同化させ、ある程度成長させる。


「は、はぇー、まさかすぐに樹がこごまで大ぎぐなるんかね」


概ね均等にシェイドツリーを植え、持って来たカカオの種を右手で握りながら、比較的乾燥に強くなるよう願った上でカカオ農家となる人達に渡し、この付近に家を建てた所で初日の作業を終えて、仮行政舎まで戻って来て、宿泊した。




次の日、カカオ農家予定者を、一度家を建てた所まで空動車で送り、家を使えるように準備して貰っている間に、近傍の主要道路までの道を作った。


こちらは午前中で終わったので、一旦仮行政舎に戻り、今度はフルーツ農家予定者達に、島に1台配備されているバス型の重空動車に乗って貰い、各フルーツの農場に適した場所を探しながら移動した。


マンゴー、パパイヤ、バナナ、パイナップル、グァバ、マンゴスチンが今回の対象果物だ。前日に、あらかじめ地図上で予定地を見積もって貰っていたので、場所自体は選定することが出来、それぞれの場所に家を作って、カカオ農家予定者も回収して仮行政舎に戻り、宿泊した。




次の日は、それぞれの予定地の家まで、農家予定者達をバス型重空動車で送って貰った後、道路の整備を行った。こちらは1日掛かりで馬車による移動も可能な程度に道を整備した。


後は、フルーツ農場をある程度整備すれば、私の仕事は終わりだ。


そこから2日かけてフルーツ農場を整備して、ついでにそれぞれのフルーツの種に、丈夫になって貰ったり美味しくなって貰うようお願いをした上で、苗木又は株になるまで成長させた。これで、栽培に成功すれば更に食生活が豊かになるかな。


王都に戻り、レイナルクリア様や農業課などに状況を報告して、その日は終了した。




次の日は、政府の全体定例会議があったので参加した。


今月は収穫祭があったため、それ以外で国内に大きな動きは無く、再来月頭に行われる国軍総合演習の話題が大きかった。精霊課も魔法兵団と一緒に参加する予定なので、9月に協同訓練を行って、準備するらしい。


まあそれはそれとして、個人的には外務省から報告された内容で、帝国の大使が交代するという話が気になった。ということは、第2皇子は帝国に帰るのか。何だかんだとこちらに顔を出していたし、武術大会でも存分に戦うことが出来たので、少々寂しく思うところはあるが、仕方ない。




そして週末に、書類を確認していたところ、第2皇子が執務室に顔を出した。


「大使交代に伴い帰国することになった。貴女には世話になったのでな、挨拶に来た」


「伺っておりますわ。大使として両国の関係強化にご尽力され、任を全うして帰国されるとのことですわね。お疲れ様でした」


「本当はもっと長くこちらにいることも出来たのだがな、武術大会で負けてしまったので修行し直すことにした。次は負けんよ」


「まあ。一子様に会いましたら、お伝えしておきますわ」


「そうだな。出来れば今度は我が国で……と行きたい所だが、流石に無理か」


「もっと気軽に往来が出来れば宜しいのですが……」


「今後は更に貴国との関係を強化出来るよう尽力したい。貴女にも協力して頂けるとこちらも助かる」


「外務省経由ではございますが、微力を尽くさせて頂きましょう」


「それは有難い。だが、本音を言えば、貴女には我が国での活躍を望んでいるのだがな」


「その件は……難しい所ですわね」


「そうか……やはり、貴女を手に入れる為にも、雪辱を晴らさなければならんようだ」


「ふふ。素晴らしい戦いを、期待しておりますわ」


「ああ。では、失礼する」


「お気をつけて、お帰り下さいませ」


第2皇子……カルロベイナス殿下は大使館に戻って行った。またどこかで試合してみたいものだな……。




9月はワターライカ島で、カカオや各種フルーツなどの生育を支援したり、その他開発業務を支援したりしているうちに過ぎ、10月になった。


第1週は、国軍総合演習が行われる。例年同様、赤方面軍と青方面軍を編成して、ステアシード訓練場などを使って戦闘行動を模擬するようだ。期間は7日、1日目は両方面軍の配置と事前の準備、2日目から6日目が状況、7日目が撤収という流れになっている。


今回の演習の目的は、空動車の普及などに伴う移動・情報収集等の高速化から、最近兵站線の維持が難しくなっているそうで、ある程度第一線が離隔して牽制している状態で状況を開始し、どれだけ兵站線を維持できるかという検証を行うらしい。


なので、どちらかというと小部隊で後方を攪乱する戦法が主体になるそうだ。また、この際、糧食や水の効果的な運搬要領なども検証するらしく、水魔法を使った浄水部隊を編成したり、以前お兄様が開発したフリーズドライ魔法も試行して食事を準備したりして、輜重部隊の労力の軽減を図るそうだ。色々考えられているね……。




ということで実際に状況が開始されてから、風精霊と感覚共有して、演習を観に行ってみた。


今回は、訓練場だけでは敷地が足りず、訓練場付近の野原なども一時的に使用していて、杭を打って行動可能地域を標示している。なかなか準備も撤収も大変そうだ。


へー、あれが輜重部隊か。確かに重そうな荷物を積んだ馬車が沢山連なっている。警護部隊も周りにいるが、あれだと奇襲されると大変だよね……。


おや? 警護部隊に風の精霊術士が付いているね。見た感じでは、適宜風精霊に頼んで周囲を警戒して貰っているようだ。おおっ、こちらは青軍だけど、赤軍の小部隊を風精霊が発見したようだ。その情報に基づき、警護部隊の一部が向かった……赤軍が逃げて行ったね。なるほど。


暫く経ってから再び見たところ、輜重部隊は無事第一線部隊まで糧食を運ぶことが出来たようだ。実際に熱湯魔法などを使って食事を準備している。まあ、腹が減っては戦は出来ないからね……。




その他にも幾つか見て回ったが、こういった小部隊で撹乱するような動きをする場合は、情報の運用や指揮統制が特に難しそうだ。精霊術士同士で部隊間の情報のやり取りを行っているところもあったが、こういう運用が可能になったのは、精霊術士が増えたこともあるのだろう。


あと、面白かったのは、演習の統裁に、何と遠隔談具を幾つか使用していたことだ。確かにあれを使えば、かなり離隔していても会話が出来るから便利だよね。気になったので魔道具課に聞いてみたところ、演習を計画する段階で、国防省から支援の依頼があったそうだ。あれがもし軍に普及したら、部隊運用は間違いなく変わるだろうね……。


派手さは無いものの、様々な興味深い所が見られた演習は5日間の状況を終了した。


結果自体は、飛行兵団の一部をもって、高速機動を活かして輜重部隊の襲撃に成功した青軍の勝利に終わったが、多くの教訓が得られたのではないかと思う。


精霊術士も、様々なニーズに対応出来るよう、能力を高める必要があるだろう。さて、お菓子を準備して皆を労おうかな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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