第315話 収穫祭の宴で近況などを確認した
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家族との祝勝会の後はそのまま休んで、翌朝にお父様と2人で王都に戻った。収穫祭の宴に参加しないといけないからね……。疲れは残っているものの、行動に支障をきたすものではなく、予定通り参加した。
今年の宴も、国王陛下以下、王家、宰相閣下、各大臣、各省の課長級以上、その他学校や軍、各研究所などの要職の方々、各国大使、その他参加可能な領主達が参加している。
央公は財務大臣だから当然いるし、西公であるフェルドミナーク様は普通にいるが……東公であるクリフノルド様も、去年はいなかったのだけれど来ているね。家を継いだわけだから、それなりに成長した筈なのだろうけれど……あまり近寄らない方が良さそうだな。
例年通り、陛下の開催のお言葉で宴が始まった。流石に見知った人ばかりなので、挨拶回りは簡単に済んだ。昨日の武術大会出場に気付いている人もそれなりにいたようだが、家名を隠している場合、公式の場では言及しないのがマナーなので、誰もあからさまに私の優勝を祝ったりはしなかった。
ちなみに第2皇子は宴には不参加で、代理の人が参加していた。あちらは素性を明かしていたから、話題にされるのを嫌ったのだろうね……。他の大使達は、普通に参加していて、結構話し掛けて来たけれども。
ということで今は、パットテルルロース様と、その同伴者らしいイリナピピラーデと話をしている。
「先日は魔法兵団と精霊課の協同訓練の場を拝見させて頂き、有難うございました」
「こちらこそ、イリナピピラーデさんには度々精霊課にお越し頂いて、精霊に関するお話を伺っておりますから……精霊術士達も喜んでおりますのよ」
「そんな……私は遊びに行っているだけですから……美味しい甘味も頂けますし」
「では、今度は蜂蜜を使った甘味を用意させましょう」
「本当ですか! 是非遊びに行かせて頂きます!」
「イリナピピラーデ……少しは弁えなさい」
といった感じで楽しく話していた。
最近は、ウォールレフテ国大使館の方達との交流が進んでいる。特に、イリナピピラーデが大使館に来てからは、精霊課にも遊び……ではなく精霊に関する意見交換を行うようになった。王都の市街地にも世論調査を行うため、頻繁に出かけているそうだし、妖精族には珍しい、かなり積極的な子だ。こういった交流が増えれば、妖精族への偏見も少なくなるだろうね……。
パットテルルロース様達と別れ、休憩がてら何かつまもうと食べ物を置いている所に行くと、例のごとくご婦人達が沢山集まっている場所があった。今年のお菓子は何だろう……と見に行ってみると、皆小さい板状のチョコレートを食べていた。私も頂いたが、いい感じの出来だった。
その他、幾つかつまんだ後、知り合いがいないか周りを見てみると、レイテアが数名のご婦人達に囲まれて話をしていた。なかなか盛り上がっているようなので邪魔かと思い、立ち去ろうとしたところ、目が合って挨拶をされた……のだが、その様子を見た周りのご婦人達が、私を見た途端に恐れ慄いたように道を開けた。何事かと思いながらもレイテアの所に行った。
「ごきげんよう。ご歓談中の所のようでしたが宜しかったのかしら」
「ご機嫌麗しゅうございます。本日も頂きの花が舞い降りたかのような美しさですね。実は昨日の武術大会の話をしておりまして、私の判る範囲で解説をしていたのですよ」
「貴女こそ、荒野において凛と咲く花のような気高さを感じるわ。こちらのご婦人達も、武術大会に興味がございますのね」
「最近は希望する女性にも剣の手ほどきをすることがございまして……」
なるほど、レイテアは最近、自宅において定期的に希望するご婦人達に剣術を教えていると聞いていたが、その教え子達ということか。女性が剣に興味を持っても良い雰囲気になって来たのは私としても歓迎すべきことだ。
「昨日の、一子様のご活躍は、誠に素晴らしいものを見せて頂いたと話していたのですよ」
周りのご婦人達も、その言葉に頷いている。
「一子様も、殿堂入りされた方からそのように評価され、光栄に思われる事でしょうね」
「準決勝までは危なげなく勝ち進まれましたが、やはり決勝戦は、一進一退の攻防でしたので、見ごたえがございました。ただ、あそこまで高度な試合ですと、内容が判る方もそれほどおりませんから、僭越ながら、解説させて頂いていた次第です」
「例えば、どのようなことを仰っていたのかしら?」
「第2皇子殿下の剣技についてですが、終盤見せた動きは魔力を見ることが出来なければ対応出来なかったでしょう。剣に纏わせた魔力を、鋭い斬撃によって放出させることで、遠方から魔力の塊として放ったり、剣身に大量に纏わせることで周囲を巻き込む強烈な打撃になるようですね」
「ええ。一子様は視界を絶って、魔力を見ることによって戦っていらっしゃったようですから、初見であっても対応出来たのでしょうが、通常は対応が難しいかもしれませんわね」
「あと、最後に一子様が第2皇子殿下の剣をどう止めたのか、良く見えなかった方が多いようでしたので、このように……両手で刃を挟んだ、と話しておりました。まあ、私には、あのような妙技は不可能ですが」
元々は合気道の剣取りをやろうと考えていたのだが……そもそも試合の中での話であり、恐らく第2皇子は寸止めをするつもりだったのだろうか、剣取りの間合いより遠かった上に、私自身も体勢が崩れていたから、結果的に白刃取りをやってしまったのだ。ああいった場面でも剣取りが出来るように更に励まなければならないな。
「あれは、再現は難しいでしょうね。試合の上だからこそ成立したところがございますし、対戦相手があのような達人であったからこそ、逆に剣筋が把握出来たのではないでしょうか」
実際、第2皇子は剣の動きと魔力がぴったり一致していたし、私は魔力以外を見ていなかったからこそ余計な情報が入らず、対応出来たという面もある。素の状態だと、私自身、白刃取りは出来なかったような気がするので、そういった意味では目隠ししたからこそ勝てた、とも言える。
その後も幾つか試合に関して話をしたが……周りのご婦人方は、どうやら一子が私であると、判っていたかのような反応だった。察するところ、最初の雰囲気は、昨日の武術大会の話をしていたところ、当の本人がやって来たから驚いた、しかしながら実際の話も聞きたかった、という状態だったのだろう。
レイテア達と別れ、他の人と話そうかと周りを見たところ、ヴェルドレイク様がいたので、挨拶の後、最近の状況を聞いてみた。
「最近は遠隔談具関連の業務が多いですね。各領の中心都市などと連絡を取れるように設置しておりまして、現在は3割程度の進捗ですね」
「今度アルカドール領のセイクル市にも設置されるそうですわね」
「久々にセイクル市に行く事になります。産業振興により、街並みが変わったと伺っておりますので、楽しみですよ」
「昨年は、人口増加に合わせて街壁を更に外側に作りましたので、新区画を建設中ですわ」
昨年帰省した際に、整地などを手伝ったからね……元々牧場や氷室を作っていた所を居住区にして、更にその外側に新しい牧場や畑を作ったりしているのだ。ちなみに氷室は、食料品の一時的な保存の為に、冬の間に雪を貯めていたのだけれど、氷魔法が普及したことにより、今回無くなった。
「そういえば近々、魔道具研究所を設立するという話があるとか。セントラーク男爵は、如何されるのでしょうか?」
「当面は研究員となる予定ですが、長期的な話は何とも言えないところですね」
確かに、ヴェルドレイク様なら、そのうち爵位も上がるだろうし、先のことは判らないだろうな。
その後、ヴェルドレイク様のお兄さんであるエルムハイド様と夫人のレナ様がやって来たので、話をした。昨年生まれたお子さんは1才になり、すくすくと育っているそうだ。男の子なので、セントラカレン家も安泰、といったところか。今度セントラカレン家に行く機会があれば、会わせて貰おうかな。
意外と子煩悩なところがあるようで、エルムハイド様が息子さんの話を嬉々として話しているうちに宴が終わりを迎え、お父様と一緒に王都邸に戻った。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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