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第309話 武術大会の参加手続きを行った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

ワターライカ島の入植者からの要望があり、植樹を行うことになった。というのは、今後ワターライカ島は、遠洋航海の船舶も利用することになるため、私が以前品種改良したレモンなどを栽培させて欲しいという要望が、ペンタデウス領出身者から出ていたのだ。


レモンについては、既にペンタデウス領などで栽培されており、壊血病に有効であることがステア政府内でも周知されていたため、早期に実施すべき案件として今回私の所に話が回って来たわけだ。


ペンタデウス領からレモンの苗木や種を政府が買い取り、私が比較的レモンの栽培に適した土地に苗木を植えたり種を播き、ある程度レモン畑の形を作って、レモン栽培を希望していたペンタデウス領出身者に引き継いだ。これで船乗り達も安心するでしょう、と言っていた人達を見て、こういう人達がいればこの島は栄えてくれるだろう、と内心思ったものだった。




一方、ワターライカ島への入植についてはある程度落ち着いたらしいが、イストルカレン領からの入植者はまだ多いらしく、島内でも主要な勢力になっているようだ。と言っても、領での生活が苦しくて入植を希望した人が殆どのようなので島を乗っ取ろうなどと考えているわけではなさそうだが……かなり領政が悪化しているようだ。


それと、商取引が増えて来たことに伴い、外国からの移民が少しずつ来ているらしい。レイナルクリア様がサウスエッド国から南国フルーツやカカオ豆、それと香辛料の栽培が出来そうな人材を招聘する調整をしているそうだし、そちらにも期待かな。


ちなみに、先日ワターライカ島の仮行政舎に遠隔談具、つまり通信機が設置され、ステア政府との通話が可能になった。逐次領の中心都市などに設置されるとともに、通信網を構成しているらしいが、ワターライカ島はその特殊性から早めに設置された。軽易な調整であれば人の往来が無くても出来るから、各段に便利になった。そのうち電話に似た魔道具なども作られていくのだろうね……。




そういった業務を行っている間に、今年の米の収穫がテトラーデ領などで始まった。テトラーデ領の状況を知ってセントラカレン領、ウェルスカレン領、サウルトーデ領やペンタデウス領でも稲作を行ってみることになり、去年私が田んぼを作りに行ったのだ。


これまでにも、大麦を炊いて食べることがあったからか、米に対してあまり忌避感を持つことは無く、新しい穀物として受け入れられつつある状況だ。それに加えて、王都では現在カレーライスなども人気が出て来ているので需要が高まっており、今後は他の領にも広まっていくだろう。


私はシーラ村に行って、今年の新米を貰って来た。これで今年も王都邸でも美味しいご飯を食べられるよ。それと、もち米を別の村で作っていて、もち米を使ったお菓子などの研究をアルカドール領の甘味研究所で進めて貰っている。


前世のレシピを元に色々な案を出しているが、シンプルな大福などは当然のことながら、水あめなどと混ぜて作る餅菓子も幾つか作ることが出来、領に帰った時に食べさせて貰った。今後はお菓子の幅も、更に広がることだろう。




月末には恒例の政府全体の定例会議があったが、特に変わった話題は無く、休日には来月の武術大会に向けて、気合を入れて鍛錬を行った。


これでも一応優勝を目指しているが、その先には合気道を極めるという大目標がある。近頃は、精霊導師としての活動を通じて何かが見えるような感じがあるのだが、まだ形にはなっていない。強者との試合を通じて、少しでも形にしたいものだ……。




8月になった。まずは恒例の合同洗礼式に伴う精霊術士候補の確認だが……今回は精霊視を持つ少女はいなかった。その後は暫く通常の業務が続いた。


そして、とうとう収穫祭の週となった。収穫祭に近くなると、王都中が騒がしくなって来るのが通例だが、今年は私も高揚感を抑えるのに苦労した。逸っても良いことは無いのだが、武術大会への参加は非常に楽しみだったからね……気を抜くと思わず稽古を始めてしまいそうな感じだ。通常よりも意識して呼吸を行おう……。




収穫祭前日、受付日がやって来た。午後には休暇を貰って王都邸に戻り、制服から私服に着替えて参加受付に向かった。通常馬車には紋章を付けるが、今回はお忍び扱いということで取り外した状態で移動した。


いつもの様にテルフィも護衛に就いているが、何故か私よりテルフィの方が緊張しているようで、緊張を解くため話し掛けたりしているうちに、受付会場に到着した。


「では、一応これを付けて受付に行きますわよ」


準備していたのは、深く被ることが出来るフードの付いたマントだ。素性を隠しておかないと意味が無いからね……。


テルフィと二人でマントを付けてフードを被り、受付窓口に向かった。受付窓口では、何人か手続きをしていたので並んで順番を待ち、暫くして私の番になったので、受付の女性に話し掛けた。


「武術大会に参加させて頂きますわ。ただし、一個人としての参加のため、家名は伏せさせて頂きます。こちらを確認してくださいませ」


受付の女性に、以前誕生日の際に貰った、紋章が刻まれた短剣を見せたところ


「こ、これは……確かに、さる貴族令嬢が大会に参加するという噂は流れておりましたが……まさか、貴女様だとは……」


と驚かれはしたものの、普通に手続きを行ってくれた。出場に関して、大会運営の指示に従うことが記載された書類などへのサインは、レイテアも行っていたので知っていたが、家名を隠すにあたっての注意事項を説明されたり、仮面を装着して試合に出ることを了承する書類にサインしたのは、当然初めてだった。


こうして手続きも終わり、王都邸に戻った。馬車の中で


「お嬢様が流させた噂、あの受付も知っていましたね……」


「そうでなくては流した意味がありませんわ。先日話した限りでは、脈ありといった所でしょうか」


などと話していた。


実は、今回の参加にあたって、家令のカールダラスに頼んで、とある貴族令嬢が腕試しに武術大会に参加する、という噂を流して貰ったのだ。狙いはあの第2皇子にも参加して貰う事だ。だって、折角の大会だからね。実力者と試合した方が、為になる筈だ。


ただ……噂が独り歩きしたところもあって、その令嬢の容姿に関して実像と離れた内容になったり、勝った相手と結婚するとか全く言ってない内容が追加されたりはしたようだが、仮にも大使としてやって来ている方だから、噂の出どころや真偽なども調べるだろうからね……。まあ、他にも実力者が来てくれると面白いのだけれどね……。




そしてとうとう収穫祭がやって来た。私の場合、初日は大体魔法学校に行っていたのだが、今年は武術大会の調整のためにパスすることにした。ただ、レイナルクリア様が主催している甘味品評会の方は、感覚共有をして様子を見させて貰おうかな。


朝から軽く体を動かしていると、クラリアが呼びに来た。お兄様がこちらにやって来たそうだ。武術大会の件かもしれないし、会いに行こう。


「お兄様、久しぶりですわね。今日はどうされたのでしょうか?」


「フィリス、久しぶりだね。勿論、明日の君の試合を観に来たんだよ」


特に言っていたわけではなかったが、やはりお兄様はご存じの様だ。特に見られて困るような試合をするつもりもないので問題は無いが、一応言っておこう。


「一個人として家名を出さずに参加致しますので、口外しないよう、お願い致しますわ」


「そうなんだけどね……君の場合、見る人が見れば判るから、本当は隠す必要も無いのだけど……」


確かに、私の場合、魔力量が異常なので、魔導師クラスの人が見れば、誰なのかはすぐに判ってしまうらしいのだが……何事にも建前というものはある。貴族社会は、建前もかなり重要だからね。




その後暫く、お兄様と話をした後、調整に戻った。お兄様は魔法学校に行くそうだ。婚約者のチェルシーもいるしね。


休憩がてら、風精霊と感覚共有して、甘味品評会の会場に行ってみた。最初の品評会では出品は10点程で、さほど多くなかったが、今年は30点程出品され、盛況となっている。


特に、一般客が試食を行って良かったものに票を入れ、集計結果によって順位を決める方式と、審査員10名の審査により順位を決める方式の2通りを採用しており、味はもとより見た目や目新しさなども審査の対象となっていて、中々面白い。


品評会にはアルカドール風甘味店からも出品しているが、今年はりんごとヨーグルトのタルトを作ったようだ。試食者が美味しそうに食べているし、りんごを薄切りにしてバラの花のような形を作っており、見た目も面白い。そのうち食べに行こうと思いつつ他の作品も見て回り、リラックスした状態で調整を再開した。




その日の夕食時は、お兄様が魔法学校の展示内容や、品評会の結果などについて話してくれた。


チェルシーとネリスは同じ火魔法研究会らしく、光魔法について発表していたそうだ。ただし、チェルシーは学生会長なので、そちらの方が忙しかったようだけれど。


それと、甘味品評会については優秀賞だったようだ。去年は最優秀賞だったが、あれはチョコレートが衝撃的だったそうだからね……まあ、王都の各甘味店で切磋琢磨している様子なので、今後も頑張ってくれるだろう。


皆が頑張っているし、私も頑張らないと……と思いつつ、その日は早めに就寝した。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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